===== Page 72 ===== ●農林水産省→農林水産技術会議 https://www.affrc.maff.go.jp/docs/pro 農林水産省の農林水産技術会議では「みどりの食料システム戦略実現技術 発・社会実装促進事業(委託プロジェクト研究)」(令和6年度までは「農林水 産研究の推進」という名前だった)を実施している. これは「農林水産業・食品産業の競争力強化に向け、国主導で実施すべき重 要な研究分野」を公募するものである。大きくは「新品種開発研究」「環境負荷 低減対策研究」「気候変動適応研究」「競争力強化研究」「革新的技術創出研究」 という5つの柱から構成される。令和7年度に新規公募されたのはこのうちの 2つで、「環境負荷低減対策研究」「気候変動適応研究」であった。「環境負荷 減対策研究」には1つの研究課題があり、「気候変動適応研究」には3つの研究 課題があった。 Column 各国の研究費事情:科研費と比べてどうなのか? いうまでもないことだが科研費に採択される BBSRC)や医学研究会議(Medical Research ことは難しい。令和6年度の新規採択率の平均 Council: MRC)のはその1つである。2023~ は27.5%と、比較的高い数字だが、それでも 2024のUKRIの採択率は21.1%であり、科研 計算上は3人に1人しか採択されない.この科 費に比べてかなり低い。 研費の採択率は、他の国の科研費に相当する研 さて近年、学術論文における質的・量的レベ 究費と比較した場合、その採択率は低いのだろ ルが世界最高水準になっている中国はどうだろ うか高いのだろうか? うか?科研費の「基盤研究」に相当すると考え まず米国.相変わらず研究のレベルは質・量 られるのは General Programで、「若手研 ともに圧倒的だが、近年、グラント採択が非常 に相当すると考えられるのがYoung Scientists に困難だとよくいわれる。実際に難しいのは医Fundである。その医学分野(Health Sci- 学系のNIH グラントで、最も標準的(だと思い ences) での2023年採択率は、前者が ます)なR01では2023年の採択率は約22%と 13.79%,後者が12.53%と科研費に比べるとか 科研費に比べて低い。医学系以外のアメリカ国なり低い.また近年AIなどで話題の情報科学分 立科学財団(National Science Foundation : 野(Information Sciences)では、Gene NSF)のグラントの場合、分野別の採択率は、Programでは18.15%, Young Scienti 人文社会学系約20%、工学系約22%、数学・ Fund では24.0%と医学分野より採択率は高い。 物理系約29%,生物系約28%と分野によって 中国は研究費が潤沢にあると思いがちだが、研 採択率は大きく異なる。 究費獲得は非常に厳しいと思われる。 次にイギリスの状況だが、イギリスの基礎研このように国によって研究費の採択率の差は 究を統括しているのが、英国研究・イノベー あるが、ほぼ20%前後の採択率である(中国 ション機構(UK Research and Innovation : の医学分野の採択率は低いが).そのため日本 UKRI)であり、そのなかで助成機関は分野ごと の科研費において「若手研究」の採択率が40% の7つの研究会議に分かれている。バイオテク というのは、他国の研究者にとっては羨ましい ノロジー生物科学研究会議(Biotechnology ことに違いない。 and Biological Sciences Research Council: (72 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 73 ===== ⑨他の省庁・民間組織が公募する研究費 応募資格などの詳細は、応募要項を参照してほしい。 令和7年度の公募期間は、令和7年1月17日から2月28日17時までであった。 ●農林水産省→農研機構のイノベーション創出強化研究推進事業 https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/op 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の生物系特 定産業技術研究支援センター(以下「生研支援センター」という)では「オー プンイノベーション研究・実用化推進事業」の公募を行っている(令和7年度 の公募の詳細はhttps://www.naro.go.jp/laboratory/brain offering/koubo/2025.html). この「オープンイノベーション研究・実用化推進事業」は「我が国の農林水 産・食品分野の競争力を強化し飛躍的に成長させていくため」に「従来の常識 を覆す革新的な技術・商品・サービスを生み出す研究開発」を行うことが目的 である。基礎・応用段階の研究開発から実用化段階までの研究開発を対象とし ており、「研究機関等の独創的なアイデアや基礎科学など萌芽段階の研究を基 に、将来、農林水産・食品分野での社会実装を目的とした革新的な研究シーズ を創出する基礎研究を対象とする「基礎研究ステージ」」と、『農林水産省の研 究資金や他の研究資金による基礎研究等で創出された成果(研究シーズ)を基 にした、農林水産・食品分野における生産現場の技術的な課題等を解決するた めの実用化段階の研究開発を対象とする「開発研究ステージ」」からなる(ホー ムページより). 令和7年度の公募期間は、和7年1月31日~3月4日昼12時までであっ ●経済産業省→国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) https://www.nedo.go.jp/koubo/ NEDOは「エネルギー・地球環境問題の解決」と「産業技術力の強化」「イ ノベーション・アクセラレーターとしてのNEDOの役割」を3つのミッション とする、日本最大の技術開発推進機関である。NEDOはエネルギー、環境、電 子・情報通、バイオテクノロジー、機械システム、材料・ナノテクノロジー など、さまざまな分野での研究開発の公募を行っている。特に工学系の研究課 題が多いのが特徴である。 1 章 ===== Page 74 ===== 民間の研究費 民間の研究助成は数多くあり、採択されるチャンスも大きいので、ぜひいろ いろと応募してみることをお勧めする。民間の研究助成の情報は雑誌の広告, 学内での連絡・掲示によって募集情報を得ることができるが、次のホームペー ジに詳しく情報が掲載されている。 ●公益財団法人 助成財団センター https://www.jfc.or このホームページには個々の助成団体の情報だけでなく、助成金募集ニュー スが常に更新されてあって便利だ.またセンターからは『研究者のための助成 金応募ガイド」、「助成団体要覧」という本(電子書籍)が毎年のように頻繁に 改訂されている. ●研究助成.com https://kakenhi.com/g このサイトには862財団の情報が掲載されており(和7年3月現在),現在 募集中の助成金を探す際に、締め切り順、募集開始順、2週間以内に締め切り と選択できるようになっている。また絞り込み条件として、分野別、年齢制限、 募集期日、地域などから検索可能で、とても便利だ。 民間財団の研究助成は、特にラボを立ち上げたばかりの新米PIの時期に、申 請書に「新設ラボで研究費が必要」と一筆書いておくと非常に効き目があって 採択される率が高い.私自身もラボを立ち上げた年には、民間の研究助成にた くさん応募して、結構採択され、非常にありがたかった。民間の研究助成は助 成期間が1年間で助成額が100~200万円くらいと科研費より少ないのが相場だ が、セットアップ時には本当に助かる。 以上の、科研費以外の研究募集はまめにチェックしておかないと、見逃して しまうことが多いのでご注意を〔参照 5章4:科研費以外の研究費への応募の可能性). 科研費獲得の方法とコツ 第9版