===== Page 51 ===== 6科研費の現状について一令和6年度のデータより 6 科研費の現状について一和6年度のデータより ここ10年の科研費の状況で目立つのは、令和3年度から実施された若手研究 の受給回数の制限による新規応募件数の減少傾向である(図1-7).その一方、 予算額はほぼ一定なので、採択率や1課題あたりの配分額が影響を受けている。 審査方法や申請書のフォーマットなどは大きな改革がなされているが、今後予算 規模の拡大がなければ科研費の状況はますます厳しくなると予想される。 章 科研費の予算額 令和6(2024)年度の科研費の予算額は2,429億円である。令和5年度には基 盤研究(B)の基金化などのため補正予算が多く、補正予算も含めると総額で 3,000億円を超えたが、補正予算を除くと和になってからはほぼ同じ予算額で ある、1課題あたりの配分額を増額するためにも、今後もさらに予算規模の増 額を期待したい。 新規応募件数の変化 令和3(2021)年度から若手研究の応募資格が変更になった影響で、新規採 択分について、令和5年度まで応募件数が減少傾向にあったが、令和6(2024) 年度には応募件数は前年度よりも大幅に増加した。とくに応募件数の増加が目 件数 110,000 105,000 100,000- 95,000- 90,000 85,000 新規の応募件数 件数 30,000 28,000- 26,000 24,000- 22,000 20,000 新規の採択件数 28 29 30 R1 R2 R3 R4 R5 R6 年度 28 29 30 R1 R2 R3 R4 R5 R6 年度 図1-7●平成28~令和6年度の科研費の新規応募件数と採択件数の推移 〔日本学術振興会(2024年12月25日更新)のデータより) 新規応募数は令和2年度まで増加傾向が続いていたが、令和3年度の若手研究の申請資格の変更によって激減した。新規の 元年度には「科研費若手支援プラン(CIO)」によって若手研究や研究活動スタート支援の採択件数が大幅に増加し、その結果、全 数が3,000件あまり増加した。その後は、応募数の減少のため、採択件数も減少傾向にある。 (51 ===== Page 52 ===== 科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(令和6年度 研究課題数 研究種目 採択率(%)配分額(千円) 応募(件)採択(件) 科学研究費(全体合計) 87,899〕 [24,219] 〔 91,198 25,046 27.6〕 27.5 大幅な増加 (55,600,430〕 57.132,970 【17,087,040】 新規採択分) 1課題あたりの配分額 平均(千円)最高(千円) 〔 2,296〕 [251,600〕 2,281 243,600 特別推進研究 89〕 72 〔 10 〕 10 〔 11.2 〕 13.9 1,355,500] 1,194,000 358,200】 135,550〕 119,400 [251,600] 243,600 基盤研究(S) 571〕 547 [ 70 〕 65 〔 12.3 〕 11.9 〔2,809,500] 3,143,900 【 943,170】 40.136〕 48,368 [142,100] 115,500 基盤研究(A) 1,802〕 2,320 491〕 632 〔 27.2 〕 27.2 〔5,956,700〕 7,482,700 【 2,244,810】 12,132] 11,840 [ 34,900〕 32,800 基盤研究(B) 大幅な増加 11,555〕 11,875 3,234 〕 3,327 〔 28.0〕 28.0 [ 17,275,400〕 16,619,000 【 4,985,700】 5,342〕 4,995 〔 14,100〕 12,900 基盤研究(C) 43,689) 45,713 〔11,991〕 12,551 27.4 27.5 〔15,447,400〕 15,845,100 【 4,753,530】 1,288〕 1,262 〔 3,500] 3,400 挑戦的研究(開拓) やや増加 1,502〕 1,564 177 〕 170 〔 11.8 10.9 挑戦的研究(萌芽) [ 〔1,250,700〕 1,161,400 【 348,420】 〔 7,066〕 6,832 [ 16,100〕 18,100 9,036〕 9,083 1,115 ] 1,073 12.3 11.8 【 2,534,700] 2,431,100 729,330】 2,273] 2,266 〔 4,700] 4,600 若手研究 13,060〕 13,207 5,274 〕 5,290 40.4 40.1 〔 7,334,100〕 7,465,800 ! 2,239,740】 1,391 1,411 〔3,400〕 3,500 研究活動スタート支援 3,856〕 4,179 1,435 1,521 37.2 〕 36.4 〔 1,451,700〕 1,613,800 484,140】 1012][ 1,061 1,100] 2,000 奨励研究 [2,739) 2,638 422〕 407 15.4 〕 15.4 184,730」 176,170 438] 433 〔 480」 470 採択率40%をキープ採択率30%を切る 図1-8●令和6年度科研費審査結果(新規採択) 文部科学省公表資料「科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(令和6年度新規採択分)」(令和7年3月現在)をもとに作成、【 前年度の数値。配分額の列の【 】は間接経費を示す。個人で応募できる主な種目についてまとめた。新学術領域研究、学術変革領域 研究成果公開促進費、特別研究員奨励費は除いてある。 立つのは、基盤研究(A),基盤研究(C),および研究活動スタート支援である (図1-8). 基盤研究(A)では応募件数が約30%増加したことになる。また基 盤研究(C)では約5%の増加だが、2.000件あまりの応募件数増加である 一方で応募件数が減少したのが、特別推進研究と基盤研究(S)の2種目であ 52) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 53 ===== 6科研費の現状について一令和6年度のデータより る.基盤研究(A)の応募件数が大幅に増加したのは、競争がとくに厳しい特 別推進研究と基盤研究(S)を避けて、採択率が高くなった基盤研究(A)に応 募先を変更したことが理由だろう。 2回という受給制限のある若手研究は、制度が導入された和3(2021)年度 には前年度より約5,000件と大幅に減少したが、それ以降は応募件数が13,000件 前後とほぼ同じ水準で推移している。また基盤研究(C)は和3年度以降、毎 年45,496件→45,434件→43,689件→45,713件と、令和5年度 れ以外はほぼ45,000件前後で推移している。それでは若手研究の受給制限で減 少した約5,000件分の申請者はどこに応募種目を変更したのだろう。詳しい内容 は不明だが、これまで若手研究に応募していた若手研究者の一部が科研費への 応募を止めてしまったのだろうか. 研究機関別にみると、令和6年度はすべての研究機関で前年度に比べて応募 件数が増加した。応募件数全体における研究機関別の割合を調べると、この10 年間で国立大学が応募件数に占める割合は、49.9%から46.6%(2014年度 →2024年度、以下同じ)と低下傾向は続いている(20年前の2004年には57.7% だった).それに対して公立大学は7.7%から8.4%、私立大学は30.4%から 33.3%と上昇している。 この数年、各地の大学や研究機関で科研費セミナーを行った経験からいうと、 どの大学や研究機関でも科研費獲得への積極的な取り組みを行っており、今後、 科研費の獲得はますます激しくなっていくと思われる。 ▶ 応募件数の変化 全体の応募件数が和5年度と比べると和6年度では大幅に増加した。基 盤研究(A),基盤研究(C),研究活動スタート支援での応募件数の増加が 目立つ. 新規採択件数,採択率の変化 令和6年度には前年度よりも応募件数が大幅に増えたため、採択件数は前年 度よりも824件増加した(図1-7,図1-8). これは3.4%の増加率である かし採択率は前年度とほぼ同じの27.5%(前年度は27.6%)であり、応募件数 に比例して採択件数も増加したことがわかる。 科研費の新規採択率はこの10年間では平成29~30年度に25%前後と低く なっていたが、和年度の大幅な採択件数増加によって新規採択率が28%と なり、以後、28%前後で推移している(図1-9).もっとも平成22年度以前で 1 章 (53 ===== Page 54 ===== 新規採択率(%) 30 25 20 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 年度 図1-9・平成13~令和6年度の科研費の新規採択率の推移 データは日本学術振興会および文部科学省の発表資料をもとにしている。平成23年度には科研費の大幅な増額によって、新規採択率 度の22.1%から 28.5%に急上昇した。その後は徐々に減少したが、和元年度の大幅な採択件数増加によって新規採択率は2 現在に至っている。 は新規採択率は20~22.5%と低かったことを考えると、現在の採択率は十分に 高い水準にある。 種目別にみていくと、応募件数が大幅に増加した基盤研究(A)において採 択件数も大きく増加し、採択件数は前年度よりも141件増となり、これは約2 もの大きな増加率であった。また基盤研究(B),基盤研究(C),研究活動ス タート支援などで採択件数が増加した。また挑戦的研究や若手研究ではほは積 ばいだった. Column 初めての科研費(K教授の場合) 私が初めて科研費をもらったのは平成7年で、 種目は奨励研究(A)(現在の若手研究に相当)、 課題名「新規ナトリウム利尿ペプチドの精製と 構造解析」、研究期間は1年だけだった。金額 も100万円と少なかったが、初めて科研費に採 択されてすごくうれしかった。当時在籍してい た国立循環器病センター研究所の業務係からの 交付内定通知書は今でも大切に保管してある。 日付は平成7年5月1日で、交付内定の発表は 現在よりも1カ月くらい遅かった。 手元にある、そのときの申請書を見てみると、 書く部分が非常に少ないので驚く、申請書は たったの4ページ!その後、「日本の科研費の 申請書は米国 NIHの申請書に比べてあまりに書 く部分が少なすぎる」とかの意見が出て次第に 分量が多くなっていったのだ。 さて、自分の昔の申請書を読み返してみると、 意外にも、研究目的のところはうまく書いてい るではないか。まんざらでもない。研究計画・ 方法も予備的な実験結果を示しながら、そんな に悪くはない。しかし残念ながら、研究課題の 目的であった新規ナトリウム利尿ペプチドは、 結局みつからなかったという苦い思い出が残っ ている。 54 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 55 ===== 6科研費の現状について一令和6年度のデータより 新規採択率をみていくと、基盤研究(A,B,C)の3種目とも採択率が27~ 28%と比較的高い水準にあるが、基盤研究(C)において平成30(2018)年度 以降は採択率が30%を切っているのが気になる点である。また挑戦的研究(開 拓・萌芽)は、採択率がそれぞれ10.9%と11.8%と各種目のなかで最も低く、 競争が激しいことがうかがえる. 一方で若手研究は40.1%と、令和元年以降は採択率40%と高い水準をキープ している。またやはり若手研究者のための研究活動スタート支援も36.4%と、 こちらも高い水準である。 新規採択件数,採択率の変化 令和5年度と比べて令和6年度で応募件数が増加した種目では、採択件数も 増加した。基盤研究(C)の採択率が30%を切った状況がここ数年続いてい る。挑戦的研究がいまや最も採択率の低い種目になっている。 研究費の配分額の変化 1課題あたりの平均配分額は新規採択分でみると、令和6年度には230万円と 前年度とほは同じだった(図 1-8).和年度以降、過去最低の和年度よ りも徐々に増加しているが、ほとんど最低水準のままだ(図1-10).かつて 1課題あたりの平均配分額は300万円を超えていた。これは最短の研究期間が2 年から3年に延長された影響であるが、研究期間を延ばすのならば、研究費も 増額して欲しかったと今さらながら思う。 種目別では、基盤研究(A,B,C)と挑戦的研究(開拓・萌芽)では1課題 あたりの配分額は前年度よりも減少した。基盤研究(S)は前年度よりも大幅 に配分額が増加した. 挑戦的研究(開拓・萌芽)では「挑戦的な研究計画の実行が担保されるよう、 応募額を最大限尊重した配分を行う予定」とされており、確かに満額の研究費 が配分されている課題が多い。そのため、挑戦的研究(開拓・萌芽)は研究費 の応募総額がほぼ同じ基盤研究(B,C)よりも1課題あたりの平均配分額がか なり多い。 令和6年度の若手研究の1課題あたりの平均配分額は、前年度とほぼ同じで ある. 基盤究や若手研究は科研費の中心となる究費なのだから、1課題あたり の配分額をもっと増額して欲しいところだ。 1 章 (55 ===== Page 56 ===== 千円 5,000 4,000- 3,000- 2,000- 13 14 15 16 17 1819 20 21 22 23 年度 図1-10•平成13~令和6年度の科研費1課題あたりの配分額の推移 データは日本学術振興会および文部科学省の発表資料をもとにしている。新規採択分の配分額は平成14年度をピークに 低い水準が続いている。 ▶研究費の配分額の変化 1課題あたりの配分額はこの数年徐々に増加している。基盤研究(A,B,C) と挑戦的研究(開拓・頭芽)では前年度よりも配分額が減少した。 令和6年度の新規採択+継続分の配分状況 令和6年度の新規採択+継続分の配分状況で目を引くのは、特別推進研究と 挑戦的研究(萌芽)の配分額の減少である(図1-11).その他の種目の配分額 はほぼ前年度と同じである。 そして、応募件数は1,718件増加したが、採択件数は703件減少した。応募件 数の増加は基盤研究(A,B,C)や研究活動スタート支援によるもので、採択 件数の減少は挑戦的研究(芽)と若手研究による。その他の種目では大きな 変化はない。比較的に安定した採択状況にあるといえるだろう。 各種目の応募件数で特徴的なことは、基盤研究(A,C)での大幅な増加であ る.新規採択状況のところでも書いたが、特別推進研究や基盤研究(S)を避 けて、より採択の可能性が高いと予想される基盤研究(A)に応募先を変更し たためだろうか。その他の種目の応募件数では微増または微減で、大きな変化 はない。 採択件数はほとんどの種目でほは同じ水準であるが、挑戦的研究(萌芽)と 56) 科研費獲得の方法とコツ第9版 ===== Page 57 ===== 6科研費の現状について一令和6年度のデータより 増 加 科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(和6年度 新規採択分+継続分) 研究種目 合計 特別推進研究 基盤研究(S) 基監研究(A) 基盤研究(B) 基盤研究(C) 挑戦的研究(開拓) 挑戦的研究(萌芽) 若手研究 減少 研究活動スタート 支援 奨励研究 研究踝題数 応募(件) 採択(件) [142,113〕78,354〕 143,831 77,651 〔 134〕 116 55〕 54 減少 887]〔 851 386] 364 3,436〕 3,851 2,110〕 2,140 20,106〕 20,300 〔 11,721〕 11,752 72,306〕 73,597 〔40,608〕 40,435 1,947〕 2,029 〔 622〕 635 11.308] 10.954 3,387〕 2,944 〔 23,958〕 23,829 16,172〕 15.912 5,288〕 5,660 2,867〕 3,002 2,743〕 2,644 426〕 413 大幅に増加 採択率 (%) 55.1 54.0 配分額(千円) [145,013,170 145,595,541 43,625,210 1課題あたりの配分額 平均(千円)最高(千円) 1,851〔251,600) 1,875 243,600 [ 41.0〕 46.6 5,171,300 4,645,600 1,393,680】 94.024 〕 86,030 〔251,600] 243,600 43.5] 42.8 〔 【 11,308,100] 11,128,000 3,338,400】 [ 29,296 ] 30,571 [142,100〕 115,500 61.4 55.6 〔 17,227,900〕 18,310,900 【 5,493,270】 8,165 8,556 〔 34,900〕 32,800 〔 58.3)[ 43,390,329) 57.9 43,360,567 1 13,008,1701 〔3,702〕〔 14,100) 3,690 12,900 〔 56.2 〕 54.9 [ 38,310,800] 39,221,900 【 11,766,570】 〔 943〕 970 〔 3,500] 3,400 〔 31.9〕〔 31.3 【 30.0 26.9 3,475,900] 3,384,000 1,015,200】 6,391,200 5,610,400 1,683,120】 5,588 5,329 〔 16,400〕 18,100 〔 1,887〕〔 1,906 4,700〕 4,600 〔 67.5〕 66.8 〔 16,716,300) 16,733,300 5,019,990】 〔1,034] 1,052 〔 3,400] 3,500 54.2〕〔 53.0 【 15.5〕〔 15.6 2,835,400〕 〔 3,022,700 906,810】 185,941〕 〔 1178,174 989〕 〔 1,007 1,100〕 2,000 436〕〔 431 480〕 480 大幅に減少 大きく減少 図1-110令和6年度科研費審査結果(新規採択+継続分) 文部科学省公表資料「科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(令和6年度 新規採択分+継続分)」(令和7年3月現在)をもと 内は前年度の数値。配分額の列の!1内は間接経費を示す。個人で応募できる主な目についてまとめた。新学術領域研究 研究,研究成果公開促進費、特別研究員奨励費は除いてある。 若手研究での減少が目立つ. 採択率をみると、基盤研究(A)において大きく低下している。また研究期 間が1年の奨励研究を除くと、挑戦的研究(萌芽)がもっとも採択率の低い種 目となっている。挑戦的研究(開拓)の採択率も低い。挑戦的研究は未来の研 1 (57 ===== Page 58 ===== 発への投資なのだから、採択率をもう少し上げて欲しいと思う。 1課題あたりの配分額では、特別推進研究と挑戦的研究(開拓)以外はほぼ 横ばいで、安定した状態にある. →令和6年度の新規採択+継続分の配分状況 応募件数と採択件数は比較的に安定した状態にある。挑戦的研究(開拓・頭 芽)の採択率が低いことが気になる点である。 令和6年度の科研費の状況のまとめ 令和6年度の科研費新規採択の結果をみて、基盤研究(A,B,C)の新規採 択率が28%前後と比較的高い水準にあることはとても好ましい.若手研究も 40%の高い採択率をキープしているのはとてもよいと思う。ただし基盤研究 (C)は数年間30%をキープしていたのが、令和になって30%を切っているこ とが残念だ。また挑戦的研究(開拓・萌芽)は相変わらず新規採択率が10%前 後と、とても低い状態が続いている。 基盤研究 (A) 基盤研究 (B) 基盤研究 (C) 令和元年度 基盤研究における若手研究者の新規採択分の状況 種目 応募件数 採択件数 39歳以下 全体 39歳以下 全体 39歳以下 全体 84 2,412 1.368 11,396 4.751 45,758 29 605 473 3.327 1,945 12.918 採択率 34.5% 25.1% 34.6% 29.2% 40.9% 28.2% 39歳以下と40歳以上で上の表を改変したもの 採択率 種目 基盤研究(A) 基盤研究(B) 基盤研究 (C) 39歳以下 34.5% 34.6% 40.9% 図1-12●令和元年度の年齢別基盤研究の新規採択分の状況 40歳以上 24.7% 28.5% 26.8% 58 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 59 ===== 6科研費の現状について一令和6年度のデータより しかし一番懸念すべきことは、1課題あたりの配分額が低いことだ。過去10 年以上にわたって300万円を下回って低い状態が続いている。研究に必要なさ まざまなものの値段が上昇していることや円安の影響から、この配分額では十 分ではないと感じる研究者が多いことだろう.実際、危機感をもった研究者は 多く、和6年7月に国内の学会連合の有志が科研費の倍増を求める署名活動 を始め、9月には文部科学大臣に提出された。 望ましいのは採択率は現在の状態を維持して研究費の配分額が増えることで あるが、国の予算が厳しい現状では一度に全種目の増額は難しいだろう.そこ で、いくつかの種目〔基盤研究(B,C)が望ましいが]からでも配分額が増額 されて、基礎的な研究費が充実されることを願っている。 一方、若手研究者以外には大変厳しい現状であることには以前と変わりはな い、令和元年度のデータしかないが、基盤研究(A,B,C)において、若手と それ以外(つまり中堅~ベテラン)の研究者の採択率に、年齢によって10% (あるいはそれ以上)もの違いができている(図1-12).また和6年度の主な 種日の年齢別の採択状況をまとめたデータからは、やはり年齢によって採択率 にかなり差があることがわかる(表1-5).これらのことは、果たして好ましい ことだろうか。もちろん若手研究者の支援を充実させることは、将来の日本の 科学にとって必要なことである、しかし中堅~ベテランにももっと手厚い支援 を進めていかないと、日本の研究を支える土台の研究者層が薄くなるのではな 年齢 29歳以下 30歳~34歳 35歳~39歳 40歳~44歳 45歳~49歳 50歳~54歳 55歳~59歳 60歳~64歳 65歳~69歳 70歳以上 合計 応募件数 2,715 8,655 12,388 14,868 16,146 14,847 12,395 9,179 2,253 834 94,280 採択件数 1,086 3,099 4,062 4,335 4.358 3,576 2,638 1,826 532 187 25.699 採択率 40.0 35.8 32.8 29.2 27.0 24.1 21.3 19.9 23.6 22.4 27.3 表1-5●和6年度年齢別の主な研究種目の採択状況 日本学術振興会のホームページに公開されているデータをもとに作成、対象は、特別 推進研究,新学術領域研究(研究領域提案型)(成果とりまとめ経費を除く)、学術変 革領地研究(A,B)、基盤研究(S,A,B,C)(応募区分「特設分野研究」を除く)、若 手研究、挑戦的研究(開拓・萌芽)(審査区分「特設審査領域」を除く)。研究活動ス タート支援、国際共同研究加速基金(国際先導研究・海外連携研究)である。 1 章 (59