===== Page 26 ===== してみるべきだ、公募要領をよく読んで、どの種目に応募できるのか調べてお こう〔参照2章1:応募種目の選び方、表2-1). 直接経費と間接経費:2つの研究費 科研費を獲得すると、単に採択された研究者に研究費(直接経費)が交付さ れるだけでなく、その研究者が所属する研究機関にも研究費(間接経費)が交 付される。間接経費は、共用施設の整備・維持・管理、研究設備の購入や運用 など、研究者の研究活動支援のために研究機関が使用する研究費である。つま り研究機関は、科研費を獲得している研究者を多く雇用しているほど、研究環 境の整備を行う費用をより多く得ることができる。2025年3月の時点では間接 経費は科研費のほとんどの研究種目に直接経費の30%相当額が措置されている。 2 科研費の種類一科研費にはどのような種目がある? 科研費の種目体系のイメージ 科研費は大きく3つの種目群から構成されている(図1-2)。最も中心となる のが「基盤研究」、そして新しい学問領域を開拓するための「学術変革研究」〔挑 戦的研究(開拓・萌芽)と学術変革領域研究)。および若手研究者を育成する めの「若手研究」(若手研究と研究活動スタート支援)の3つである。さらに国 際共同研究の支援のために「国際共同研究加速基金」(国際先導研究、国際共同 研究強化,海外連携研究,帰国発展研究)がある。これらの種目群が補い合っ て、さまざまな研究計画の提案に対応できるようになっている(なお、このなか の海外連携研究だけは和6年度採択分の公募を最後に募集を停止している). 基盤研究と若手研究 科研費に初めて申請する研究者が応募するのは基盤研究(C)か若手研究が 多いことと思う(表1-1,表1-2).採択件数はこの2つがダントツに多い。令 和6年度の配分状況では、基盤研究(C)が12,551件、若手研究が5,290件 この2つの合計17,841件で科研費の新規採択件数の約7割を占める。若手研究 には博士号取得後8年未満の研究者との制限があるが、基盤研究には一切ない。 そのため、基盤研究(C)では教授クラスの応募も多く、若手研究よりも採択 に必要なレベルが高くなる。そのため若手研究者が若手研究から基盤研究に移っ たときに採択されにくいこともある。 26 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 27 ===== 22 科研費の種類一科研費にはどのような種目がある? 「基盤研究」種目群 これまでの蓄積にもとづいた学問分野の 深化・発展を目指す研究を支援し、学術 研究の足場を固めていく種目群 「特別推進研究」 「学術変革研究」種目群 斬新な発想にもとづく研究を支援し、学 術の体系や方向の変革・転換、新領域の 開拓を先導する潜在性を有する種目群 「学術変革領域研究(A・B) 」 「基盤研究(S・A・B・C)」 「挑戦的研究(開拓・萌芽)」 「若手研究」種目群 「若手研究」 「研究活動スタート支援」 若手研究者に独立して研究す る機会を与え、研究者として の成長を支援し、「基盤研究」 種目群等へ円滑にステップ アップするための種目群 図1-2・科研費の種類と関係性 文部科学省・日本学術振興会公表資料をもとに作成、この他に「国際共同研究加速基金」の種目群がある。 基盤研究(B)は基盤研究(C)よりも、さらに業績が多い研究者が応募す る.また基盤研究(B)ではほぼ全員が研究費の獲得を目指して積極的に応募 するため、しっかりした内容の申請書が多くレベルも非常に高い。実際に審査 してみると、基盤研究(B)と基盤研究(C)とでは業績と研究内容にかなりの 差がある。そのため基盤研究(C)から基盤研究(B)にステップアップすると きには、自分のレベルを十分に考えて応募する必要がある。 また基盤研究(S)と基盤研究(A)は競争が激しい.これらに申請するには 医学・生命科学系の場合はタイムリーにCNS (Cell, Nature, S に掲載されるとか、あるいはこれまでに十分な業績があって、その分野の中心 的な研究者とみなされていることが必要だ。 令和2年度の公募からは「研究の高度化や国際競争の激化が進む中で更なる 研究力向上を図るためには、優秀な若手究者に対して、より大規模な研究へ の挑戦を促すことが必要」とのことで、「若手研究(2回目)」と「基盤研究(S. A,B)」との重複応募制限が緩和された。これは「若手研究(1回目)」を受給 中でその年度が研究計画の最終年度の者、または過去に一度「若手研究」を受 給し終わった者のうち「若手研究」の応募資格を満たす者が、「若手研究(2回 目)」と「基盤研究(S,A,B)」を重複して応募できるようになったということ だ〔参照2章1:応募種目の選び方).ただし「若手研究」と「基盤研究(S, A,B)」 の両方に採択された場合は、「基盤研究(S,A,B)」を優先して、「若手研究(2 回目)」を辞退しなければならない。若手研究者は積極的にチャレンジしてみる といいだろう。 1 章 ===== Page 28 ===== 研究種目 特別推進研究 基盤研究(S) 基盤研究(A) 基盤研究(B) 基盤研究(C) 挑戦的研究 (開拓) 挑戦的研究 (萌芽) 若手研究 研究費の期間 3~5年 (真に必要な 場合は最長 7年も可能) 原則5年 3~5年 3~5年 3~5年 3~6年 2~3年 2~5年 金額 研究種目の目的・内容 2億~5億円 新しい学術を切り拓く真に優れた独自性のある研究であって、 (真に必要な場合は格段に優れた研究成果が期待される1人又は比較的少人数の 5億円以上も可能) 研究者で行う研究 5,000万~2億円 2,000万~5,000万円 500万~2,000万円 500万円以下 500万~2,000万円 1人又は比較的少人数の研究者が行う独創的・先駆的な研究 1人又は複数の研究者が共同して行う独創的・先駆的な研究 500万円以下 500万円以下 研究活動スタート 1~2年以内 300万円以下(研究 支援 期間が1年の場合は 150万円以下) 奨励研究 1年 10万~100万円 特別研究員奨励費 3年以内 応募区分により年間 (DC2は2年 80~150万円以下 以内) 学術変革領域研究 5年間(公募1研究領域単年度当た (A) 研究は2年り5,000万~3億円 (真に必要な場合は3 億円を超える応募も可 学術変革領域研究 3年間 (B) 国際共同研究強化 1年 (渡航期間と して6カ月~ 1年が原則) 3~6年 1人又は複数の研究者で組織する研究計画であって、これまで の学術の体系や方向を大きく変革・転換させることを志向し。 飛躍的に発展する潜在性を有する研究、なお。(萌芽)について は、探索的性質の強い。あるいは芽生え期の研究も対象とする 博士の学位取得後8年未満の研究者が1人で行う研究。 ※公募の次年度の4月1日までに博士の学位を取得見込みの 者及び博士の学位を取得後に産前産後の休暇を取得又は未 就学児を養育していた場合は、当該期間を除くと博士の学 位取得後8年未満となる者を含む。 研究機関に採用されたばかりの研究者や育児休業等の取得又 は未就学児の養育から復帰する研究者等が一人で行う研究 教育・研究機関や企業等に所属する者で、学術の振興に寄与 する研究を行っている者が1人で行う研究 ※他の研究種目に応募できる者は応募できない 優れた若手研究者にその研究生活の初期において、自由な発想 のもとに主体的に研究課題等を選び、研究に専念する機会を与 え、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者を育 成する 多様な研究者の共創と融合により提案された研究領域におい て、これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させる ことを先導するとともに、我が国の学術水準の向上・強化や 若手研究者の育成につながる研究領域の創成を目指し、共同 研究や設備の共用化等の取組を通じて提案研究領域を発展さ 1研究領域単年度当た 次代の学術の担い手となる研究者による少数・小規模の研究 り 5,000万円以下 グループ(3~4グループ程度)が提案する研究領域におい て、より挑戦的かつ萌芽的な研究に取り組むことで、これま での学術の体系や方向を大きく変革・転換させることを先導 するとともに、我が国の学術水準の向上・強化につながる研 究領域の創成を目指し、将来の学術変革領域研究(A)への 展開などが期待される研究 1,200万円以下 科研費に採択された研究者が半年から1年程度海外の大学や 研究機関で行う国際共同研究、基課題の研究計画を格段に発 展させるとともに、国際的に活躍できる。独立した研究者の 養成にも資することを目指す 2,000万円以下 複数の日本側研究者と海外の研究機関に所属する研究者との国 際共同研究、学術研究の発展とともに、国際共同研究の基盤の 構築や更なる強化。国際的に活躍できる研究者の養成も目指す 海外連携研究 (令和6年度まで で募集停止) 表1-1・科研費の主な研究種目 日本学術振興会のホームページをもとに作成。 28 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 29 ===== 2②2 科研費の種類一科研費にはどのような種目がある? 令和6年度 令和5年度 研究種目 応募総数 採択数 採択率 (%)応募総数 採択数 特別推進研究 基盤研究(S) 基盤研究(A) 基盤研究(B) 基盤研究(C) 挑戦的研究(開拓) 挑戦的研究(萌芽) 若手研究 研究活動スタート支援 奨励研究 国際共同研究加速基金 72 547 2.320 11,875 45,713 1.564 9,083 13,207 4,179 2.638 1,278 10 13.9 89 65 11.9 571 632 27.2 1,802 3,327 28.0 11.555 12,551 27.5 43,689 170 10.9 1.502 1,073 11.8 9,036 5,290 40.1 13,060 10 70 491 3.234 11,991 177 1.115 5,274 1,521 36.4 3,856 407 208 (海外連携研究) 学術変革領域研究(A) 2.415 600 24.8 1.871 562 公募研究 合計 94,891 25.854 27.2 90.825 24.987 採択率(%) 11.2 12.3 27.2 一 28.0 27.4 11.8 12.3 40.4 37.2 15.4 19.5 30.0 27.5 表1-2●令和5年度と6年度公募の応募総数・採択数・採択率(新規採択分) 文部科学省公表資料「科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧」の令和5、6年度の新規採択分をもとに作成、採択率 PIとして独立した若手研究者のための種目 『「基盤研究(C)」及び「若手研究」における独立基盤形成支援」 平成29年7月から若手研究者の独立を支援する種目として「「若手研究」にお ける独立基盤形成支援」が創設された。和7年3~5月公募の段階では「「基盤 研究(C)」及び「若手研究」における独立基盤形成支援(試行)」(以下「独立 基盤形成支援」)となっており、制度は今後変更される可能性がある。これは運営 費交付金の削減によって大学の研究環境が悪化していることに対応し、新しくPI (研究室主宰者)になった研究者の研究環境の整備を支援するためのものであ この「独立基盤形成支援」の特徴は、PIとして独立した研究者(支援対象者) と研究機関が協力し、「独立基盤形成支援(試行)計画調書」を作成して応募す ることである。 ただし、支援対象者となる研究者の条件が厳しい。それは「基盤研究(C)」 または「若手研究」の交付内定を受けた研究代表者のうち,「大学または大学共 同利用機関法人に所属し、新たに准教授以上の職位に就いて2年以内で、応募 年度の4月1日現在で博士の学位取得後15年以下の者(産前・産後の休暇、育 児休業の期間を除く)であって、所属する研究機関において研究室を主宰して 1 章 科 研 費 の 概 略 (29 ===== Page 30 ===== いること」である。「研究室を主宰」することの要件は、 ・独立した研究課題を有すること ・研究グループの責任者であること(研究グループを組織している場合) ・大学院生の指導に責任を持っていること ・論文発表の責任者となっていること ・その他研究室を主宰する者としての活動があること 〔令和7(2025)年度科費公募要領より5用〕 となっている。これらをすべて満たしていることが必要である。 応募においては研究機関が所属する支援対象者に優先順位を付け、計画書を 作成して科研費電子申請システムから提出する。また、科研費採択上位機関に 配分が偏らないように、各究機関が応募できる件数の上限は、その研究機関 Column 若手研究の変更 「科研費若手支援プラン」として、科研費の 若手研究が大きく改革された。 まず平成30年度の公募から若手研究(A)が 基盤研究に統合廃止された。直近のデータで若 手研究(A)を獲得している者は、他の種目で も十分に採択されていることから、基盤研究を 充実させることで対応するようにした。ただし 時限的な経過措置として、若手研究(A)を終 了した研究者が基盤研究(B)に応募する際に、 若手研究者による応募課題が優先的に採択され るしくみが導入されていた. この若手研究(A)の統合廃止によって若手 研究は1種目だけになったので、従来の若手研 究(B)の名称が「若手研究」になった。 そして「若手研究」の応募要件が、博士号取 得後8年未満の者と変更された。つまり「若手」 といっても年齢には関係がない.また博士号未 取得者は「若手研究」に応募できないが、応募 時に取得見込みの場合は応募できる。 多くの者は、4年制の学部と大学院修士・博 士課程を修了して27歳、6年制の学部と大学院 ならば29歳となるので、博士号取得後8年は 35~37歳くらいと、これまでの若手研究者の 年齢制限の39歳よりも若干若くなった.つま り応募者の数が少なくなると予想される。さら に若手研究の採択率は平成29年度の30%か ら、平成30年度以降は40%へと大幅にアップ された。 また若手研究に採択された後で、それよりも 基盤研究の金額が大きい種目に応募する者に 限って、最終年度前年度応募の対象が拡大され た、具体的には、平成29年度の公募までは、4 年以上の研究計画だけが最終年度前年度の応募 が可能だったが、3年の研究計画でも応募が可 能となった。 そして平成29年7月から若手研究者の独立 を支援する新種目として『「若手研究」におけ る独立基盤形成支援」が創設された〔参照 1章 2:科研費の種類◆PIとして独立した若手研究者 のための種目「「基盤研究(C)」及び「若手研究」 における独立基盤形成支援」)。 このように若手研究者支援のしくみが大きく 変更された。 30) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 31 ===== 2科研費の種類一科研費にはどのような種目がある? における「基盤研究(C)」と「若手研究」の新規採択合計件数の5%または5 件のいずれか低い件数という上限が設定されている。 採択されると、研究代表者には「基盤研究(C)」または「若手研究」の研究 費に加えて、交付内定を受けた研究費総額の当初応募額から交付内定額を引い た額か。150万円のいずれか低い額が交付される。また研究機関にはその30% 相当の間接経費が交付される. この新しい若手研究者の支援制度だが、条件が厳しく、大学によっては対象 者がいないこともあると思われる。 挑戦的研究 挑戦的研究には小規模で研究期間が2~3年と短い「挑戦的研究(萌芽)」と、 配分額が大きく研究期間が3~6年と長い「挑戦的研究(開拓)」の2種類があ る。挑戦的研究は「斬新な発想に基づき、これまでの学術の体系や方向を大き く変革・転換させることを志向し、飛躍的に発展する潜在性を有する一人又は 複数の研究者で組織する研究計画」のために設定されており、そのなかでも 「(萌芽)については、探素的性質の強い、あるいは芽生え期の研究計画も対象 〔令和7(2025)年度科研費公募要領より〕とされている。 これは「科研費による挑戦的な研究に対する支援強化について(本文)」(平 成28年12月20日)に書かれているように、大学などでの基盤的経費の減少か ら「大学等における研究の自由度や多様性をめぐる環境が悪化して」おり、「挑 戦的な研究が減退している」ことへの危機感から新たに設定された。 申請において重要なのは、挑戦的研究に相応しいアイデアと、実行可能性が あることだ、また審査は中区分(後述)で行われることから、専門外の審査委 員も加わって、より広い分野で審査される。審査方式は「挑戦的研究(開拓)」 が「総合審査」(書面審査と合議審査)で、「挑戦的研究(芽)」が「2段階書 面審査」で行われる. 挑戦的研究(開拓)と挑戦的研究(萌芽)はどちらも基盤研究 (S,A,B)と 同時に応募でき、また重複して受給が可能なので、研究実績と業績のある教授 クラスの研究者が基盤研究と同時に応募することが多く、競争は非常に厳しい 〔参照 2章1:応募種目の選び方)。挑戦的究(開拓)は配分額が500万~2,000 万円で研究期間は3~6年、挑戦的研究(芽)は配分額が500万円以下で研究 期間は2~3年である. 私自身の経験では、自分の得意分野に応募する基盤研究とは異なる分野に応募 したときの方が採択されている。異なる分野からターゲットとなる因子や方法論 1 章 (31 ===== Page 32 ===== をもち込むことで、意外な研究展開が起こる可能性が評価されるからだと思う。 まだ業績はないがよいアイデアをもっているのなら挑戦的研究にトライして みるのもいいだろう. 研究活動スタート支援 研究活動スタート支援は「研究機関に採用されたばかりの研究者又は産前産 後の休暇を終え、若しくは未就学児を養育していた研究者が一人で行う研究計 画」であり、注意すべきは科研費の他の種目とは応募時期が異なることだ、通 常、3月上旬から5月第2週までが応募期間で、7月下旬に審査結果の通知と交 付内定がくる(参照後述の図1-6)、応募できるのは、前年の科研費募集期間に は応募資格がなかった研究者で、①前年度の科研費応募締切後に応募資格を得 たか、②産前産後の休暇を取得または未就学児を養育していたために応募でき なかった研究者が対象だ. なお、科研費のほとんどの種目は2段階での審査方式がとられているが (参照1章4:審査のしくみ)、「研究活動スタート支援」と「奨励研究」では、令 和6(2024)年度から審査方式が2段階書面審査から一度の書面審査で採否を決 定する審査方式に変更された。それまでは「研究活動スタート支援」の審査結 果は8月下旬であり、結果がわかってからだと基盤研究等(9月中旬公募締め切 り)に応募する時間的余裕がなかった。今回の変更によって早期の審査結果の 通知が可能となり、採択されなかった場合でも基盤研究等への応募のために必 要な準備期間を確保することが可能になった。 また研究活動スタート支援に採択されても、その年の科研費応募には基盤研 発や若手研究などに応募できる。そして基盤研究などの他研究種目に採択され た場合、「研究活動スタート支援」と重複して受給が可能である(従来は研究活 動スタート支援を辞退しないといけなかった)・ 夏から秋にかけて行われる基盤研究や若手研究などの科研費応募の締切後に 応募資格を得た研究者は、ぜひ応募してみるべきだ 学術変革領域研究 令和2(2020)年度から創設された「学術変革領域研究」は、「学術変革領域 研究(A)」と「学術変革領域研究(B)」で構成される。 「学術変革領域研究(A)」は、「多様な研究者の共創と融合により提案された 研究領域において、これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させるこ 32) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 33 ===== 科研費の種類一科研費にはどのような種目がある? とを先導するとともに、我が国の学術水準の向上・強化や若手研究者の育成に つながる研究領域の創成を目指し、共同研究や設備の共用化等の取組を通じて 提案研究領域を発展させる研究」〔令和7(2025)年度科研費公募要領より〕の ための種目である(表1-3)。新学術領域研究(研究領域提案型)の後継である。 「学術変革領域研究(B)」は、「次代の学術の担い手となる研究者による少 数・小規模の研究グループ(3~4グループ程度)が提案する研究領域におい て、より挑戦的かつ萌芽的な研究に取り組むことで、これまでの学術の体系や 方向を大きく変革・転換させることを先導するとともに、我が国の学術水準の 向上・強化につながる研究領域の創成を目指し、将来の「学術変革領域研究 (A)」への展開などが期待される研究」〔和7(2025)年度科研費公募要領よ り〕のための種目である。 特徴としては、公募研究は「学術変革領域研究(A)」のみであり、「学術変 革領域研究(B)」には公募研究はないことである、また「次代の学術の担い手 となる研究者」が、(A)と(B)のどちらでも研究代表者として「総括班以外 の計画研究」に2課題以上含まれることや、(B)では領域代表者となることが 必須である。その「次代の学術の担い手となる研究者」の定義は、領域発足の 予定年度の「4月1日現在で45歳以下の研究者」と、明確な年齢制限が行われ ている。 研究期間は「学術変革領域研究(A)」は5年間、「学術変革領域研究(B)」は 3年間である。 学術変革領域(A)における領域申請の審査は、学術変革領域研究区分(I) ~(IV)(それぞれがいくつかの大区分より成り立つ)ごとに,書面審査とヒア リング(質疑応答)による2段階で行われる。他の種目との違いは、ヒアリン グ対象に選定された領域が改めて詳しい研究計画調書を提出することだ、まず 応募のあった領域計画書の書面審査が行われ、そのなかからヒアリング対象の 領域が選定される.ヒアリングに選定された領域については、総括班と個々の 計画班の詳しい研究計画調書の提出が求められ、それをもとにしたヒアリング を経て最終的に採否が決定される. 一方,学術変革領域(B)においては、学術変革領域(A)と同じく学術変革 領域研究区分での審査が行われるが、学術変革領域(A)と異なり、書面審査 と合議審査による総合審査によって採否が決定される。また必要に応じて(応 募多数の場合は)領域計画書(概要版)を用いて、事前選考が行われる。応募 時に領域計画書(概要版),領域計画書(全体版),研究計画調書の3種類の提 出が求められる. 1 章 (33 ===== Page 34 ===== 審査 区分 学術変革領域研究(A)の研究領域名 I II 令和5(2023)年度に発足した領域(令 和5~9年度) クオリア構造学:主観的意識体験を科学 的客観性へと橋渡しする超分野融合領域 の創成 日本列島域における先史人類史の統合生 物考古学的研究一令和の考古学改新一 尊厳学の確立:尊厳概念に基づく社会続 合の学際的パラダイムの構築に向けて 1000テスラ超強磁場による化学的カタ ストロフィー:非摂動磁場による化学結 合の科学 アシンメトリが彩る重子物質の可視化・ 設計・創出 メゾヒエラルキーの物質科学 天然物が織り成す化合物潜在空間が拓く 生物活性分子デザイン マルチメッセンジャー宇宙物理学:静的 な宇宙から躍動する宇宙へ 炭素資源変換を革新するグリーン触媒科 学 ロジー タンパク質寿命が制御するシン・バイオ 細胞外情報を統御するマルチモーダル ECM 冬眠生物学2.0:能動的低代謝の制御・ 適応機構の理解 動的な生殖ライフスパン:変動する生殖 細胞の機能と次世代へのリスク 光合成ユビキティ:あらゆる地球環境で 光合成を可能とする超分子構造制御 領域略称 名 応募額と採択件数(程度) 次回は令和7年度に公募予定 クオリア 構造学 A01. A02. A03. B01. C01. C02.D01にお 500万円以内:10件 300万円以内:10件 統合生多 考古学 A01, A02, A03. A04, B01. B02, B03, B04 C01において 200万円以内:10件 500万円以内:6件 尊厳学の 確立 A01, A02. A03. B01, B02, B03, B04, CO2. C03において 100万円以内:16件 1000 B01 実験 250万円以内:8件、理論 150万円以内:4件 テスラ科 学 B02 実験 250万円以内:3件、理論 150万円以内:3件 B03 実験 250万円以内:3件、理論 150万円以内:3件 アシンメ A01. A02. B01. D01において トリ重子理論 100万円以内:6件。実験 250万円以内:13件 メゾヒエC01 350万円以内:12件 ラルキー C02 300万円以内:6件 C03 200万円以内:5件 潜在空間A01 300万円以内:7件 分子設計B01 300万円以内:7件 C01 300万円以内:7件 全粒子宇 E01 500万円以内:2件 宙 E02 300万円以内:8件 E03 100万円以内:8件 グリーンA01. A02. A03において 触媒科学300万円以内:20件 タンパク A01 400万円以内:7件 質寿命 A02 400万円以内:6件 A03 400万円以内:4件 マルチモA01. A02. A03において ダル 実験系 400万円以内:12件 ECN 理論系 300万円以内:4件 冬眠生物A01 430万円以内:7件 学2.0 A02 430万円以内:7件 A03 430万円以内:2件 生殖ライ A01. A02. A03において フスパン 400万円以内:15件 光合成ユB01. B02において ビキティカテゴリー】 500万円以内:10件 カテゴリーロ 300万円以内:10件 (次ページへつづく) 表1-30令和5~6年度に発足した学術変革領域研究(A)の研究領域名 公券に関する情報はあくまで予定であるので、公家要領を確認のこと、A01,B01などは当該領域の計画究の研究項目を示す。 34) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 35 ===== 2科研費の種類一科研費にはどのような種目がある? (前ページからのつづき) 審査三 学術変革領域研究(A)の研究領域名 区分 W I II 目 植物気候フィードバック 予測と行動の統一理論の開拓と検証 領域略称 名 BVOC A01 400万円以内:7件 気候誷節B01 400万円以内:6件 C01 200万円以内:5件 統一理論C01. C02において 1,000万円以内:4件 500万円以内:7件 300万円以内:5件 次回は令和8年度に公募予定 応募額と採択件数(程度) 令和6(2024)年度に発足した領域(令 和6~10年度) 『寒れる気候』と人類の過去・現在・未来れる気A02. B01 250万円以内:2件 候と人類B02 発掘など 300万円以内:1件 その他 200万円:2件 C02 500万円以内:2件 C02 700万円以内:2件 マテリアマインド:物心共創人類史学のマテリアA01. A02. B01. B02. C01. CO2において 構築 マインド150万円以内:4件 200万円以内:8件 300万円以内:2件 430万円以内:3件 イオン流の非平衡性と集団運動の理解にイオン渋 A01 300万円以内:5件 よる材料デザイン変革 滞学 A02 400万円以内:5件 A03 400万円以内:5件 化学構造リプログラミングによる統合的化学構造 A01 250万円以内:11件 物質合成科学の創成 リプロ A02 250万円以内:8件 A03 250万円以内:5件 A04 250万円以内:4件 ハビタブル日本:島嶼国日本の生存基盤 ハビタブA01. AO2. A03において をなす大気・海洋環境の持続可能性 ル日本 900万円以内:3件 300万円以内:9件 キメラ準粒子が切り拓く新物性科学 キメラ準A01. B01. B02. B03, C01において 粒子 300万円以内:11件 200万円以内:11件 極稀事象で探る宇宙物質の起源と進化: 地下稀事 新たな宇宙物質観創成のフロンティア象 A01. A02. B01. B02. B03. C01. D01. において 大規模な実験的・理論的研究 450万円以内:2件 実験的研究.比較的規模の大きな理論的研究 370万円以 内:4件 理論的研究、小規模な実験的研究 150万円以内:10件 プラズマ駆動種子記憶操作:プラズマが 駆動する種子内分子動態の学理創成 タンパク質機能のポテンシャルを解放す る生成的デザイン学 プラズマA01. AO2. A03において 種子科学300万円以内:18 蛋白質新A01. A02. A03 300万円以内:7件 機能生成B01. B02.B03 300万円以内:6件 C01. C02. C03. C04, C05 300万円以 細胞内共生オルガネラのゲノム制御:技細胞質ゲ A01 350万円以内:3件 術革新から生命現象の理解と応用へ ノム制御B01. B02 350万円以内:12件 バイオロジカルクラスター:細胞内におクラス A01, A02. A03において ける超分子複合体の形成機構と機能特性ター細胞 実験系の研究 500万円以内:10件 学 萌芽的な実験系の研究及び理論系の研究 300万円以内:7件 (次ページへつづく) 1 章 (35 ===== Page 36 ===== (前ページからのつづき) 審査 学術変革領域研究(A)の研究領域名 区分 II 共進化表現型創発:延長された表現型の 分子機構解明 時間タンパク質学:多様な「時」を生み 出すタンパク質マシーナリー 動的コネクトームに基づく脳機能創発機 構の解明 領域略称 名 応募額と採択件数(程度) 共進化表A01. A02. A03. A04. A05において 現型創発 450万円以内:12件 時間タン A01 400万円以内:6件 パク質学A02 400万円以内:4件 B01 400万円以内:6件 動的脳機A01, A02. A03において 能創発 500万円以内:7件 300万円以内:14件 A01 380万円以内:15件 個体の細胞運命決定を担うクロマチンの 細胞運命 エピコードの解読 コード 脳神経マルチセルラバイオ計算の理解とバイオ超 A01 250万円以内:5件 バイオ超越への挑戦 越 A02. A03.A04 500万円以内:14件 グローバル南極学:大変化する氷床と地グローバ A01. A02. A03. B01. B02.B03において 球環境の連鎖をつなぐ ル南極学300万円以内:4件 140万円以内:12件 1研究領域の応募金額は、「学術変革領域研究(A)」は単年度当たり5,000万~ 3億円であり、真に必要な場合は3億円の上限を超える応募も可能である。一方、 「学術変革領域研究(B)」では単年度当たり5,000万円以下である。 「学術変革領域研究(A)」における公募研究は領域設定の1年日と3年目に、 研究期間を2年間として公募が行われる(つまり研究期間は研究領域の2年~3 年目と4年~5年目になる)。採択目安件数は15件を上回ることとされている。 審査は計画調書をもとにした2段階書面審査で行われる.「学術変革領域研究 (A)」にも自身の研究テーマに適した領域があれば、公募研究に積極的に応募 してみるのがいいだろう. 国際共同研究加速基金 国際的な共同研究を強化するための国際共同研究加速基金には、令和7年1月 現在,国際先導研究, 国際共同研究強化,海外連携研究,帰国発展研究の4つ のプログラム(研究種目)がある。このうち多くの方に関係するのは、国際共 同研究強化と海外連携研究である。しかし、残念ながら令和7(2025)年度公 募から海外連携究は新規の公募が停止となった。 国際共同研究強化は「科研費に採択された研究者が半年から1年程度海外の 大学や研究機関で行う国際共同研究.基課題(採択された科研費のテーマ)の 研究計画を格段に発展させるとともに、国際的に活躍できる、独立した研究者 の養成にも資することを目指す」もので、令和6年度の公募は通常の科研費公 36 科研費獲得の方法とコツ第9版