===== Page 299 ===== 実際に採択された申請書② 挑戦的研究(萌芽)の例 この見本は令和5(2023)年度に採択された挑戦的研究(芽)の申請書を 令和7(2025)年度公募のフォーマットに変更したものである。といっても、申 請書上の注意書きの更新や、「研究費の応募・受入等の状況」がPDF化されな くなったことに合わせて電子申請システム上の入力イメージを見本にしただけ で、内容についてはいっさい変更していない。これは私にとって異分野の「中 区分53:器官システム内科学およびその関連分野」への応募だった.以前採択 された研究テーマでまだ未解決だったものを、最新の手法を用いてチャレンジ するものに書き換え、また最新の研究業績を大いにアピールした。挑戦的研究 は採択率が低いが、きちんと評価してもらえれば、なんとかなるのではないか と思っていたところ、無事に採択された。 なお、各種目の申請書に対して、どのようなことをどのような割合で書いて いくとよいのか、その目安を羊土社ホームページ(https://www.yodo kakenhi/)のなかの「研究種目別「申請書の構成案」」で紹介している。 実際に採択された申請書②項目一覧 1) Web入力項目(前半)※電子申請時に入力 ・申請者と研究課題の情報 ・研究組織 2) 申請書(研究計画調書) ・研究計画調書の概要・・ ・研究目的及び研究方法,応募者の研究遂行能力 ・挑戦的研究としての意義(本研究種目に応募する理由) ・人権の保護及び法令等の守への対応 3)Web入力項目(後半)※電子申請時に入力 ・研究経費とその必要性 ・「研究費の応募・受入等の状況」のWeb入力イメージ p.300 p.301 p.302 p.304 p.306 p.307 p.308 p.310 299 ===== Page 300 ===== 1) Web入力項目(前半)※電子申請時に入力 機関番号研究種目番号 応募区分番号 00000 00 令和5(2023)年度挑戦的研究(萌芽)研究計画調書 <申請者と研究課題の情報> 中区分 53 整理番号 0000 令和 4年 9月22日 0版 新規 研究種目 中区分 研究代表者 氏名 所属研究機関 部局 職 研究課題名 研究の要約 研究経費 「千円未満の 端数は切り [捨てる 開示希望の有無 挑戦的研究(萌芽) 器官システム内科学およびその関連分野 (フリガナ)コジママサヤス (漢字等) 児島 将康 久留米大学 付置研究所 教授 腸管上皮幹細胞マーカーLGR5の内因性リガンドの探索 LGR5は消化管上皮の幹細胞マーカーとして知られており、内因性リガンドが不 なオーファンGPCRである。LGR5は(および、その内因性リガンドは)幹細胞の維 持や増殖分化に関与すると考えられている。本研究の目的は、LGR5の内因性リカン ドのペプチドホルモンを発見し、腸管上皮幹細胞の維持や増殖分化における作用を明 らかにして、消化管粘膜の再生医療への応用を展開することである。今回、LGR5に 類似したショウジョウバエの受容体とその内因性リガンドの情報や、タンパク質テ タベースの検索方法の工夫、また申請者がこれまでに使ってきたオーファンGPCRの アッセイ方法などを組み合わせて、LGR5の内因性リガンドの新しい探索方法を着想 した。LGR5の内因性リガンドが発見されれば、構造が類似し、やはり幹細胞マー カーであるLGR4とLGR6の内因性リガンドについても大きな情報が得られ、結合す るペプチドホルモンの正体が明らかになると思われる。そして、LGR4~6の内因性り ガンドが発見されれば、発生・再生の研究分野へ大きな貢献ができると期待される。 年度 研究経費 (千円) 令和5年度 3,000 令和6年度 1.000 令和7年度 1.000 総計 5,000 審査結果の開示を希望する 使用内訳(千円) 設備備品賚消耗品費旅費 0 2.650 50 0 850 50 0 700 100 0 4,200200 人件費・謝金 300 100 100 500 その他 0 100 100 (300 ※この申請者の例は、令和5年度の挑戦的研究(萌芽)に採択されたものを令和7年度の様式に変更したものだが、申請書中の年度 や西暦は基本的に当時のままとしてある。 科研費獲得の方法とコツ第9版 ===== Page 301 ===== <研究組織> 研究組織(研究代表者及び研究分担者) 氏名(年齢) 20202062(00) 久留米大学 夢コシマ マサヤス 所属研穵機関 部局 職 付置研究所 教授 金和5年度 エフォ 医学(博士) 研究全般 3,000 20 実 合計1名 研究経費合計 3,000 00000-000-00-0000 (301 ===== Page 302 ===== 2) 申請書(研究計画調書) <研究計画調書の概要> 302) 挑戦的研究(萌芽)概要1 研究計画調書の概要 研究計画調杏に記載した「1研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力」「2挑戦的研究としての意義(本研究種日に 応募する理由)」について、その概要を2頁以内で簡潔にまとめて記述すること。 ※本研究種目では本欄に研究計画調(eb入力項目)の前半部分を加えた「研究計画調香(概要版)」のみによる事前の適 考を行う(応募件数が少ない審査区分では、事前の選考は行わない)。本様式は面審査では参照できないため注意する 【本研究の目的】 LGR5 (Leucine-rich repeat-containing G-protein-coupl 胞マーカーとして知られており、内因性リガンドが不明なオーファンGPCRである。本研究の目 的は、LGR5の内因性リガンドのペプチドホルモンを発見し、腸管上皮幹細胞の維持や増殖分化 における作用を明らかにして、消化管粘膜の再生医療への応用を展開することである。 【研究の背景】 (LGR5は内因性リガンドが不明のGPCRである) LGR5は消化管において陰底部のPaneth 細胞の間に散 LGR5の内因性リガンドを探索する ショウジョウバエのバーシコンに類似したペプチド 在するcrypt base columnar(CBC) 細胞に特異的に発現 しており、このCBC細胞は腸管上皮の様々な細胞に分化増 殖していくことから、腸管上皮幹細胞であることが明らか になっている。LGR5は腸管上皮の幹細胞マーカーである が、分子としての実態は内因性リガンドが不明な(つまり オーファン=孤児) GPCRである。LGR5のノックアウト マウスは発生段階で致死性となることから、LGR5は(およ び、その内因性リガンドは)幹細胞の維持や増殖分化に関 与すると考えられている。 LGR5は構造の似通ったLGR4およびLGR6と3つの受容体 でファミリーを形成している。その構造はLH(黄体化ホル モン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)やTSH(甲状腺刺激ホ ルモン)の受容体であるLGR1~3や、リラキシンの受容体 であるLGR7~8に類似していることから、LGR5の未同定 JUUU の内因性リガンドもペプチドホルモンと考えられている。 (LGR5はショウジョウバエのdLGR2に類似) ヒトとショウジョウバエでは生存に必須なタンパク質は 共通であることが多く、ショウジョウバエの研究から、ヒ 内因性リガンドの同定 トの研究に結びつく例も多い。申請者の経験からも、ヒト とショウジョウバエの間で、リガンドの構造的特徴や機能 が保持されている例が多い。 そして、ヒトとショウジョウバエのLGRファミリー は相同性が高く、そのリガンドも相同性が高い 例えばヒトLGR1~3とそのリガンド 腸管上皮幹細胞への作用 腸管粘膜再生への応用 研究計画の櫻略 ショウジョウバエ 受容体リガンド エのdLGR1とGPA2/GPB5の関係に等しく、LGR7~8 とそのリカンドのリラキシンとの関係は、dLGR3と インスリン様ペプチド8との関係に等しい。ヒトの LGR4~6だけは内因性リガンドが不明であるが、 LGR5 (LGR4とGR6も含めて) に対応するショウジ ョウバエのdLGR2のリガンドは、バーシコン (bursicon) というヘテロタイマー(bursとpbursのへ テロダイマー)のペプチドホルモンである。バーショ ンはショウジョウバエ表皮の硬化や色素沈着を起こす ホルモンである。 このようにLGR5にアミノ酸配列が似たショウジョ ウバエdLGR2の内因性リガンドがburs とpbursのヘテ ロダイマーのバーシコンであることから、LGR5の内 因性リガンドも、burs/pbursに類似したペプチドのへ テロダイマーである可能性が考えられた。 ヒト 受容体リガンド LGR1LH/CG LGR2FSH → dLGR1 GPA2/ GPB LGR3TSH LGR4 ? LGR5? ▶dLGR2 バーシコン LGR6 ? LGR7リラキシン dLGR3llp8 LGR8リラキシン ヒトとショウジョウバエのLGR受容体とリガンドのアミ ノ酸配列は相同性が高い。ヒトのLGR4,5.6 の内因性 リガンドは、パーシコンに類似したペプチドホルモンと 想定されているが、現在はまだ不明である。 ※上記の項目は「概要版」という別ファイルにまとめることになっており、応募数が多いときだけ、事前選考(プレスクリ に使用される。 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 303 ===== <研究計画調書の概要(つづき)> 挑戦的研究(萌芽)概要2 【研究計画調書の概要(つづき)】 そこでアミノ酸配列や構造的特徴がバーシコンに類似したヒトのペプチドを、タンパク質デー タベースから選び出し、2種類の組み合わせで培養細胞にヘテロダイマーとして発現させる。そ して発現させたヘテロダイマーのペプチドをLGR5に作用させるアッセイ系を使って、目的とす るLGR5の内因性リカンドを見つけ出す計画を着想した。 (タンパク質データベースには bursicon に類似したヒトのペプチドが14種類存在する) バーシコンを形成するbursおよびpbursに類似したヒトのペプチドには、gremlin. (PRDC), Cerberus, Coco, DAN, USAG1, SOST、およびvon Will ムチン(4種)のC末端部分や、norrin,nogginの合計14種類のペプチドがあった。 (培養細胞を使ってヘテロタイマーとしてタンパク質を発現させ、アッセイに用いる) 14種類の候補ペプチドの発現ベクターを作成する。そこから2種類ずつの組み合わせを選び、 それぞれ同量の発現ベクターをHEK293細胞にトランスフェクションして、ヘテロダイマーとし て発現させる。予備的な検討では、発現量は14g/4mL培養液程度あり、アッセイを行うのに 十分な量であった。現在、合成したリガンド候補へテロダイマーは、LGR5安定発現株へ作用さ せてCAMP活性を確認し、内因性リガンドの候補を絞り込みつつある。 申請者らの現時点の予備実験の結果から、LGR5の内因性リガンドは、哺乳類のバーシコン類 似ペプチドのヘテロダイマーよりも、さらに複雑なコンプレックスを形成したタンパク質分子で はないかと考え、現在、さらに検討を進めている。 【応募者の研究遂行能力】 申請者は、リガンド不明のオーファ ンGPCRをターゲットにして未知のペプ チドホルモンの探索を行い、これまで にグレリンをはじめとして、いくつか の新しいペプチドホルモンを発見して きた。グレリンは胃から分泌される成 Biochem Biophys 長ホルモン分泌刺激活性および摂食亢 進作用を示すペプチドホルモンであ る。申請者らによるグレリン発見論文 は被引用回数が7,128件、グレリンに関 する発表論文は12,003編と(2022年9 月現在)活発な研究が行われている。 【挑戦的研究としての意義】 (申請者はこれまでLGR5の内因性リガンド探索に取り組んできた) 申請者はこれまでLGR5の内因性リガンド探索に取り組んできており、消化管組織の抽出物か ら探索を行ってきたが(2011~2012年度の挑戦的萌芽研究:消化管幹細胞に作用する新しい ペプチド・ホルモンの探索と腸管粘膜再生への応用)、その同定までには至らなかった。その理 由として、従来の方法ではリガンドが変性して効率よく抽出されていないこと、内因性リガンド が幹細胞のある一定の時期にしか発現されないこと、幹細胞自体の数が少ないためリガンドの存 在量が極めて少ないこと、などが推測されている。 そこで申請者らは、哺乳類のLGR 5がショウジョウバエのdLGR2にホモロジーが高いのなら ば、その内因性リガンドもショウジョウバエのバーシコンにホモロジーが高いと考え、本研究計 画を構想した。 (未知のリガンドを発見する意義) 生体内には内因性リガンドが不明な(オーファン) GPCR (Gタンパク質共役型受容体)が数多く存在し、そのリガンドの同定は未知の生理作用の解明や、 治療薬の開発などにつながる。実際に申請者が発見したグレリンについては、グレリン様作用を 持つ低分子アゴニスト(アナモレリン)が「がん悪液質」の治療薬として2021年より臨床応用 されている。このようにオーファンGPCRの研究から発見された内因性リガンドは、その生理作 用の解明から治療薬への応用につながることが多く、未知の内因性リガンドを発見する意義は非 常に大きい。 LGR5は消化管上皮や毛包の幹細胞マーカーとして知られていることから、その内因性リガン ドは幹細胞の維持や増殖分化に対する作用が想定されている。本研究によってLGR5の内因性リ ガンドが発見されれば、再生医学分野へ大きな貢献ができると期待される。 303 ===== Page 304 ===== <研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力> 挑戦的研究(萌芽)1 1研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力 本研究種目は審査区分表の「中区分」で審査される。記述に当たっては広い分野構成で多角的視点から審査が行われること に注意すること。 ① 本研究の目的 ② その研究目的を達成するための研究方法(研究体制(「研究組織」にある研究者及び研究協力者のそれぞれの役割)を 含む) ③ 応募者の研究遂行能力(これまでの研究活動(主要な研究業績を含む)の具体的な内容等必要に応じて今回の研究構想 に直接関係しないものを含めてもよい。また、国際共同研究の実施歴や海外機関での研究歴等がある場合には必要に応 じてその内容を含めること。) について、2頁以内で焦点を絞って具体的かつ明確に記述すること。 本研究の目的 LGR5 (Leucine-rich repeat-containing G-protein-coup 細胞マーカーとして知られており、内因性リガンドが不明なオーファンGPCRである。本研究の目的 は、LGR5の内因性リガンドのペプチドホルモンを発見し、腸管上皮幹細胞の維持や増殖分化におけ る作用を明らかにして、消化管粘膜の再生医療への応用を展開することである。 (腸管上皮幹細胞マーカーLGR5は内因性リガンドが見 つかっていないGタンパク質共役型受容体である) 幹細胞マーカー LGR5 の内因性リガンドを発見する ショウジョウバエのバーシコンに類似したペプチド LGR5は消化管において陰底部のPaneth 細胞の間に 散在する crypt base columnar (CBC) 細胞に特異的に 発現しており、このCBC細胞は腸管上皮の様々な細胞に 分化増殖していくことから、腸管上皮幹細胞であること が明らかになっている。この結果から、LGR5は腸管上 皮の幹細胞マーカーとして研究に使われているが、 LGR5の分子としての実態は内因性リカンドが不明な (つまりオーファン=孤児)GPCRである。LGR5のノ ックアウトマウスは発生段階で致死性となることから、 LGR5は(および、その内因性リガンドは)幹細胞の維腸管上皮幹細胞マーカーの 持や増殖分化に関与すると考えられている。 このLGR5はロイシンリッチな繰り返し配列を細胞外 ドメインに有するGPCRで(Barker et al. Nature 2007)、構造の似通ったLGR4およびLGR6と3つの受容 体でファミリーを形成している。その構造はLH(黄体 化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)やTSH(甲状 腺刺激ホルモン)の受容体であるLGR1~3や、リラキ シンの受容体であるLGR7~8に類似していることか ら、LGR5の未同定の内因性リガンドもペプチドホルモ 腸管上皮幹細への作用、開管粘再生への応用 ンと考えられている。 2011年に R-spondinがLGR5の内因性リガンドとし て報告された。しかし、R-spondinはセカンドメッセンジャーのCAMP 上昇を刺激しないこと、ま たR-spondinの結合部位から、R-spondin は受容体を活性型に変換することはできないため、現 在ではR-spondinがLGR5の内因性リカンドであることに対しては否定的な意見が多い。 申請者は食欲を刺激するホルモンのグレリンを発見した後から、このLGR5の内因性リガンド を発見したいと考えてきた。そして腸管の組織抽出物からの探索を継続して行ってきたが、残念 ながら内因性リガンドの発見には至っていない。 そこで今回、LGR5に類似したショウジョウバエの受容体とその内因性リガンドの情報や、タ ンパク質データベースの検索方法の進歩、また申請者がこれまでに使ってきたオーファンGPCR のアッセイ方法などを組み合わせて、LGR5の内因性リガンドの新しい探索方法を着想した。 ② その研究目的を達成するための研究方法 (LGR5はショウジョウバエのdLGR2に類似している) ヒトとショウジョウバエでは生存に必須なタンパク質は共通であることが多く、ショウジョウ バエの研究から、ヒトの研究に結びつく例も多い。申請者はこれまで哺乳類だけでなく、ショウ ジョウバエからも新しいペプチドホルモンを発見してきた。その経験から、ヒトとショウジョウ バエで、リガンドの構造的特徴や機能が保持されている例が多いことに気づいた。 (304 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 305 ===== <研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力(つづき) 挑戦的研究(萌芽) 2 【1 研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力(つづき)】 ヒトとショウジョウバエのLGRファミリーは相同性 が高く、そのリガンドも相同性が高い(表)。例えば ショウジョウバエ ヒトLGR1~3とそのリガンド(LH/CG, FSH. TSH) との関係は、ショウジョウバエのdLGR1とGPA2/ GPB5の関係に等しく、LGR7~8とそのリガンドのリ ラキシンとの関係は、dLGR3とインスリン様ペプチド 8との関係に等しい。ヒトのLGR4~6だけは内因性リ ガンドが不明であるが、LGR5 (LGR4とLGR6も含 めて)に対応するショウジョウバエのdLGR2のリガ dLGR2 バーシコン ンドは、バーシコン(bursicon)というヘテロタイマー (bursと pbursのヘテロダイマー)のペプチドホルモ ンである。バーシコンはショウジョウバエ表皮の硬化 や色素沈着を起こすホルモンである。 このようにLGR5にアミノ酸配列が似たショウジョ ウバエ dLGR2の内因性リガンドがbursとpbursのヘテ ヒトとショウジョウバエのLGR受容体とリガンドのアミ ロダイマーのバーシコンであることから、LGR5の内 ノ酸配列は相同性が高い。ヒトのLGR4,5.6 の内因性 因性リガンドも、burs/pbursに類似したペプチドの リガンドは、バーシコンに類似したペプチドホルモンと 想定されているが、現在はまだ不明である。 ヘテロダイマーである可能性が考えられた。 そこでバーシコンにアミノ酸配列のホモロジーの高いヒトのペプチドを、タンパク質データベ ースから選び出し、2種類の組み合わせで培養細胞にヘテロダイマーとして発現させる。そして 発現させたヘテロダイマーのペプチドをLGR5に作用させるアッセイ系を使って、目的とする LGR5の内因性リガンドを見つけ出す計画を着想した。 (タンパク質データベースには bursicon に類似したヒトのペプチドが14種類存在する)ヘテ ロダイマーのバーシコンを形成するbursおよびpbursは、ヒトのbone morphogenic pr (BMP) アンタゴニストである7種のペプチドホルモン(gremlin, PRDC, Cerberus, DAN, USAG1. SOST)と系統発生的に近似している。これら7種のBMP アンタゴニストとbur およびpbursはアミノ酸配列上のシステイン結合の位置が類似しており、AIによる立体構造予測 プログラムの AlphaFoldで予測された立体構造も類似している。さらにこれら7つのペプチドホ ルモンに加えて、von Willebrand factor(VWF)と分泌型ムチン(4種)のC末端部分や、norri および nogginと呼ばれるペプチドホルモンのシステイン結合の位置もbursやpbursに類似してい る。現時点ではこれら14種類のペプチドがburs/pburs類似の哺乳類ペプチドである。 (培養細胞を使ってヘテロダイマーとしてタンパク質を発現させ、アッセイに用いる) 目的のペプチドの全長をコードするCDNAをPCRによって増幅し、14種類の発現ベクターを作 成する。そこから2種類ずつの組み合わせを選び、それぞれ同量の発現ベクターをHEK293細胞 にトランスフェクションして、ヘテロタイマーとして発現させる。予備的な検討では、発現量は 14g/4mL 培養液程度あり、アッセイを行うのに十分な量であった。現在、合成したリガンド 候補タンパク質は、LGR5安定発現株へ作用させて CAMP活性を確認し、内因性リガンドの候補 を絞り込みつつある。現時点の予備実験の結果から、LGR5の内因性リガンドは、哺乳類のバー シコン類似ペプチドのヘテロダイマーよりもさらに複雑なコンプレックスを形成したタンパク質 分子ではないかと考えている。確証には至っていないが、現在、さらに検討を進めている。 ③ 応募者の研究遂行能力 申請者は、リカンド不明のオーファン GPCR をターゲットにして未知のペプチドホルモンの 錦文載の雑誌と発行年 Nature (1999) 探索を行い、これまでにグレリンをはじめとし て、いくつかの新しいペプチドホルモンを発見 し、その機能を解明してきた。グレリンは胃か ら分泌される成長ホルモン分泌刺激活性および 摂食亢進作用を示すペプチドホルモンである。 申請者らによるグレリン発見論文は被引用回数 が7.128件、グレリンに関する発表論文は 12,003編と(2022年9月現在)活発な研究が 行われている。このように申請者は未知のペプ チドホルモンを発見し、その機能解析を行って きた十分な経験を有している。 305 ===== Page 306 ===== <挑戦的研究としての意義(本研究種目に応募する理由)> 挑戦的研究(萌芽) 3 2挑戦的研究としての意義(本研究種目に応募する理由) 本研究種目は、これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させる潜在性を有する挑戦的研究を募集するものであ る。 ① これまでの研究活動を踏まえ、この研究構想に至った背景と経 ② 学術の現状を踏まえ、本研究構想が挑戦的研究としてどのような意義を有するか、探索的性質の強い、あるいは芽生え 期の研究計画である場合には挑戦的研究としての可能性を有するか について1頁以内で記述すること これまでの研究活動を踏まえ、この研究構想に至った背景と経緯 申請者はこれまでに、当時オーファンGPCRであったGHSRの内因性リガンドとして、食欲を 刺激するペプチドホルモンのグレリンを発見した。申請者はその後、久留米大学で研究室を主催 し、次のリガンド探索のターゲットとするオーファンGPCRを探していたときに、消化管幹細胞 マーカーのLGR5の論文を読んだ (Barker et al. INature 2007)。そ のマーカーであるのに、その分子の実態はリガンド不明なオーファンGPCRであることを知って、 LGR5にとても興味を持ち、その内因性リガンドを発見したいと考えた。そして消化管組織の抽 出物から内因性リガンドの探索を行ってきたが(2011~2012年度の挑戦的萌芽研究:消化管 幹細胞に作用する新しいペプチド・ホルモンの探索と腸管粘膜再生への応用)、、その同定までには 至らなかった。その理由として、従来の方法ではリガンドが変性して効率よく抽出されていない こと、内因性リカンドが幹細胞のある一定の時期にしか発現されないこと、幹細胞自体の数が少 ないためリガンドの存在量が極めて少ないこと、などが推測されている。 ヒトとショウジョウバエではリガンドの構造的特徴や機能が保持されている例が多い。このこ とから申請者は、哺乳類のLGR 5がショウジョウバエのdLGR2にホモロジーが高いのならば、 その内因性リガンドはショウジョウバエのバーシコンに構造的特徴が類似している可能性が高い と考え、本研究計画を構想した。 ② 本研究構想が挑戦的研究としてどのような意義を有するか、探索的性質の強い、あるいは芽 生え期の研究計画である場合には挑戦的研究としての可能性を有するか (未知のリガンドを発見する意義) 生体内には内因性リガンドが不明なオーファンGPCRが数多く存在し、そのリガンドの同定は 未知の生理作用の解明や、治療薬の開発などにつながる。これまでにオーファンGPCRをターゲ ットとして発見された内因性リガンドのうち、治療薬として臨床応用されている代表的なものに ペプチドホルモンのグレリン(申請者が発見)やオレキシンなどがある。グレリンについては、 グレリン様作用を持つ低分子アゴニスト(アナモレリン)が「がん悪液質」の治療薬として 2021年より臨床応用されており、オレキシンのアンタゴニストは不眠症の治療薬となっている。 このようにオーファンGPCRの研究から発見された内因性リカンドは、その生理作用の解明から 治療薬へと応用されることが多く、未知の内因性リガンドを発見する意義は非常に大きい。 (LGR5の内因性リガンド同定によって、LGR4とLGR6のリガンドも明らかになる) LGR5は、LGR4およびLGR6とアミノ酸配列の ホモロジーが高く、受容体ファミリーを形成して いる。この3つの受容体はいずれも幹細胞のマー カーとして知られているが、全て内因性リガンドが 不明なオーファンGPCRである。 右の表にLGR4~6を発現している幹細胞や、欠 損させたときの表現型をまとめてある。これらの 腸、大腸)、毛包、 欠損マウスの解析から、LGR4~6は発生や分化に 関連していることが示唆されているが、その機能 の詳細はまだまだ不十分である。それはリガンド が未同定であるために、リガンドがどのような刺 激で、どこの組織・細胞から分泌されるのか、リ ガンドが受容体に結合してシグナル伝達を行ったときに幹細胞にどのような変化があるのか、な どが不明なことによる。 LGR5の内因性リカンドが発見されれば、LGR4とLGR6の内因性リガンドについても大きな情 報が得られ、結合するペプチドホルモンの正体が明らかになると思われる。そして、LGR4~6 の内因性リガンドが発見されれば、発生・再生の研究分野へ大きな貢献ができると期待される。 本研究は探索的性質の強い挑戦的な研究である。そのため研究期間内に目的のリガンドを発見 できない可能性も大いにある。これまでのペプチドホルモン探索の経験を活かして、ぜひとも新 しいペプチドホルモンを発見したいと考えている。 (306 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 307 ===== <人権の保護及び法令等の遵守への対応> 挑戦的研究(萌芽) 4 3 人権の保護及び法令等の遵守への対応(公募要領参照) 本研究を遂行するに当たって、相手方の同意・協力を必要とする研究、四人情報の取扱いの感を必要とする研究、生命倫 理・安全対策に対する取組を必要とする研究など指針・法令等(国際共同研究を行う国・地城の指針・法令等を含む)に基づ く手続が必要な研究が含まれている場合、講じる対策と措置を、1頁以内で記述すること。 個人情報を伴うアンケート調査・インタビュー調査・行動調査(個人履歴・映像を含む)、提供を受けた試料の使用、ヒト 遺伝子解析研究、遺伝子組換え実験、動物実験など、研究機関内外の倫理委員会等における承認手続が必要となる調査・研 究・実験などが対象となる。 該当しない場合には、その旨記述すること。 本研究には遺伝子組換え実験が含まれるため、遺伝子組換え生物の使用等の規制による生物の 多様性の確保に関する法律、研究開発等に係わる遺伝子組換え生物等の第二種使用等にあたって 執るべき拡散防止措置等を定める省令、またその他の関連法令に基づき、十分な安全性を確保し た上で実施する。実施を予定している研究内容については、すでに久留米大学遺伝子組換え実験 安全委員会の承認を得ている。 動物実験については、動物福祉の観点から適切な配慮をおこなうため、動物の愛護および管理 に関する法律(昭和48年法律第105号)、実験動物の飼育および保管ならびに苦痛の軽減に関す る基準(平成18年環境省告示 88号)、動物の殺処分方法に関する指針(平成19年環境省告示 105号)、研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年度文部科学省告示 第71号)等に基づいて実施する。実施する研究内容については久留米大学動物実験委員会による 承認を受け、「久留米大学動物実験規定」を遵守したうえで実施する。 ヒト試料を対象とする実験は含まれないため、個人情報や人権の保護等を必要とする研究には 該当しない。 307 ===== Page 308 ===== 3) Web入力項目(後半)※電子申請時に入力 <研究経費とその必要性> 研究経費とその必要性 設備備品費の明細 品名・仕様 年度 R5 R5 R5 R5 R5 設置機関 数量単価 計 計 計 挑戦的研究(萌芽) 5ー() (金額単位:千円) 消耗品費の明細 金額 事項 生化学・分子生物 学実験用の試薬 生化学・分子生物 学実験用の器具 細胞培養の器具 細胞培養の培地・ 試薬 CAMP測定用キット 0 計 生化学・分子生物 学実験用の試染 生化学・分子生物 学実験用の器具 細胞培養の器具 細胞培養の培地・ 試薬 CAMP測定用キット 0 計 生化学・分子生物 学実験用の試薬 生化学・分子生物 学実験用の具 細胞培養の器具 細胞培養の培地・ 試薬 CAMP測定用キット 動靿実験関連 0 計 金額 600 600 580 570 300 2,650 200 150 200 200 100 850 100 100 100 100 100 200 700 設備備品費、消耗品費の必要性 1. 生化学・分子生物学の実験のために一般試薬や器具が必要である。また発現したタンパク質を濃縮するスピンカ ラムや、トランスフェクショングレードのプラスミド精製のためのキットが必要である。2、タンパク質発現のた めに細胞培養は必須であり、器具や培地・試薬などを多めに計上した。3.cAMP測定キットはアッセイのために必 要であり、ELISAキットとαスクリーンCAMP測定試薬を計上した。最終年度には動物実験を行う必要があるので、動 物実験関連の費用を計上した。 308 ※この申請書の例は、令和5年度の挑戦的研究(萌芽)に採択されたものを和7年度の様式に変更したものだが、申請書中 度や西暦は基本的に当時のままとしてある。 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 309 ===== <研究経費とその必要性(つづき)> 年度 R5 R5 R6 R6 R7 R7 R7 国内旅費の明細 事項 研究打ち合わせのた めの旅費(1回分) 計 研究打ち合わせのた めの旅費(1回分) 計 研究打ち合わせのた めの旅費(1回分) 研究成果発表のため の学会参加費用(1 回分) 計 外国旅費の明細 事項 金額 50 50 50 50 50 50 100 金額 計 計 人件費・謝金の明細 事項 実験補助者への 謝金 挑戦的研究(萌芽) 6ー() (金額単位:千円) その他の明細 事項 金額 0 計 実験補助者への 謝金 0 計 実験補助者への 謝金 金額 300 300 計 100 100 計 100 成果発表のための 論文投稿料 0 0 100 計 計 100 100 旅費、人件費・謝金、その他の必要性 1. 共同研究者との打ち合わせのための旅費を各年度に計上した。2.また最終年度には成果発表のための学会参 加費用と論文投稿料を計上した。3.研究遂行のために実験補助者への金を計上した。 (309 ===== Page 310 ===== <「研究費の応募・受入等の状況」のWeb入力イメージ) 【研究費の応募・受入等の状況】 研究者氏名 (1) 応募中の研究費 役割 代表 1.資金制度・研究費名(配分機関名) 2.研究期間 3.研究踝題名 4. 研究代表者氏名 1.【本応募研究課題】挑戦的研究(芽) 2.2023年度~2025年度 3.原音上皮幹細胞マーカーLGR5の内因性リガンドの採 2023年度 研究経費 (期間全体額) (千円) 2023年度 エフォート (%) 研究内容の相違点及び 他の研究費に加えて本応募研究課題に応募する理由等 (左記の研究課題を応募するに当たっての所属組織・役職) (科研費の研究代表者の場合は、研究期間全体の受入額を記入すること) 3,000 20% (5,000) 代表 4. 児島将康 1. 基盤研究(B)(一般)(日本学術振興会) 2.2023年度~2025年度 3..表皮幹細に作用するペプチドホルモンの探索 5,000 総額5,000千円 本研究は表皮および毛包の幹細胞に作用するペプチドホルモンを探索し、皮 膚や毛製の再生に応用する計画で、本研究課題とはターゲットが異なる。 60% (13,000) 左記の研究課題を応募するに当たっての所同組機・役職 分担 4. 児島将束 1.基盤研究(C)(一般)(日本学術振興会) 2.2023年度~2025年度 3.皮膚におけるCD44バリアントのタイプと役割、お よび治療ターゲットとしての意義 100 総額20,000千円 本研究は皮膚におけるCD44バリアントの役割を解明する研究で、申請者は 生化学・分子生物学実験の一部を担当する予定である。本研究課題とは内容 5%もまったく異なる。 (300) 左記の研究課題を応募するに当たっての所風組織・役職 4.0000 総類-千円 (2)受入予定の研究費 役割 1.資金制度・研究費名(配分機関名) 2.研究期間 3.研究課題名 4.研究代表者氏名 2023年度 研究経費 (期間全体額) (千円) 2023年度 エフォート (%) 研究内容の相違点及び 他の研究費に加えて本応募研究課題に応募する理由等 (左記の研究課題を受入れるに当たっての所属組織・役職) (科研費の研究代表者の場合は、研究期間全体の受入額を記入すること) 2 年度~ 年度 % 左記の研究課題を応事するに当たっての所隔組織・役職 総額千円 2. 年度~ 年度 % 左記の研究護題を応事するに当たっての所組織・役職 総額 千円 (3)e-Rad外の研究費 契約の種類 1.相手機関(相手機関の国名) 2.制度名 3.研究期間 研究課題名 予算額 エフォ ート (% 相手機関の国名 2. 3. 通袋コード % 年度~ 年度 (4)兼葉や、外国の人材登用ブログラムへの参加、雇用契約のない名誉教授等を含む現在のすべての所属機関・役職 (兼業や、外国の人材登用プログラムへの参加、雇用契約のない名営教授等を含む)現在のすべての所展機関・ 相手機関の所在地 (4)、(5)その他の活動のエフォートの合計 (1)、(2)、(3)のエフォートの合計 15% 85% 310) ※現在の申請では、この項目はPDFファイルとして出力されないため、例として電子申請時の画面イメージを作った。電子申請時 の画面は4章の図4-19を参照、なお、この申請書の例は、和5年度の挑戦的研究(萌芽)に採択されたものを和7年 式に変更したものだが、申請書中の年度や西暦は、基本的に当時のままとしている。 科研費獲得の方法とコツ第9版