--- title: "4. 科研費以外の研究費への応募の可能性" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 第5章 採択と不採択 pages: 265-270 images: page_0265.png ~ page_0270.png --- # 4. 科研費以外の研究費への応募の可能性 科研費申請の結果が採択・不採択にかかわらず、チャンスがあれば別の研究助成にも積極的に応募すべきだ。ここでは募集時期の異なる科研費や科研費以外の代表的な研究助成について、その応募時期をまとめておこう。 ## 通常の募集期間以外に公募される科研費 科研費の大部分は7~9月の応募だが、それ以外の時期に応募が開始される科研費がある。 ### 研究活動スタート支援 - **公募期間:** 令和7年3月1日~5月8日午後4時30分(令和7年度分の例) 前年秋の時点で科研費応募資格がないために次年度の科研費に応募できなかった者が、研究活動をスタート(あるいは再スタート)するために応募する科研費(参照1章2:科研費の種類)。研究期間は2年以内で、研究費は単年度あたり150万円以下。応募資格は文部科学省および日本学術振興会が公募を行った研究種目の応募締切日の「翌日以降に科学研究費助成事業の応募資格を得た者」と、「産前産後の休暇又は未就学児の養育(育児休業を取得している期間も含む)をしていたため」次年度の科研費に応募できなかった者。5~7月に審査され、7月下旬に交付内定がある。 ### 種目の新設時に臨時に応募されるもの 科研費の新種目がスタートしたときには、通常の科研費申請の時期以外に応募が開始されることがある。例えば、平成20年度から令和元年度まで設定された新学術領域研究がある。 平成20年度に設定された新学術領域研究において、初年度の公募研究の応募開始は平成21年1月20日で、締め切りが3月6日だった(翌年以降は当時の通常の応募スケジュールと同じになり、公募開始は9月上旬で締め切りは11月上旬だった)。ちなみにその後の審査を経て、交付内定が7月中旬で、交付決定が9月上旬だった。また以前にも基盤研究(S)の初年度は通常の科研費応募時期とは別の時期だった。 このように新種目が開始されるときは、科研費とは別の時期の応募になることもあるので、募集案内に気をつけていなければならない。 ## 他省庁の研究費 1章9:他の省庁・民間組織が公募する研究費で書いた各省庁からの研究費について、その応募時期は科研費の時期とは異なる。これらの応募情報は、研究組織内での回覧や独立行政法人/国立研究開発法人のホームページなど、こまめにチェックしておく必要がある。 主なものの公募時期(令和7年度の公募)を以下に示す。 - **科学技術振興機構(JST)の「CREST」「さきがけ」「ACT-X」** - CREST:2025年4月8日~6月3日正午 - さきがけ・ACT-X:2025年4月8日~5月27日正午 - **農林水産省・農林水産技術会議の「みどりの食料システム戦略実現技術開発・社会実装促進事業(委託プロジェクト研究)」** - 令和7年1月17日~2月28日17時00分 - **農林水産省・国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の生物系特定産業技術研究支援センター(生研支援センター)の「オープンイノベーション研究・実用化推進事業」** - 令和7年1月31日~3月4日12時(正午) - **国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)** - 年間を通してほぼ毎週のように医療に関するさまざまなテーマの研究公募を行っている。 - **国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)** - こちらも年間を通してさまざまなテーマの研究公募を行っている。 ## 民間の研究助成の応募時期 民間の助成財団に関する情報は、公益財団法人助成財団センターのホームページ(https://www.jfc.or.jp/)、あるいは同財団の出版物『研究のための助成金応募ガイド』、『助成団体要覧』(毎年のように改訂版が出る)から検索できる。その他にも、e-GRANT(https://www.e-grant.jp/)や研究助成.com(https://kakenhi.com/grant/)などのサイトがある。 ここでは医学系のものを中心に主な民間助成財団の応募スケジュールを表5-1に示してあるが、この他にも助成財団は数多いので、情報を集めてぜひトライしてほしい。 **表5-1 民間財団の研究助成募集** | 月 | 研究費の名称 | 応募期間(2025年度) | 助成額 | |---|---|---|---| | 1月 | 三菱財団・自然科学研究助成 | 令和7年1月6日~2月3日 | 一般助成:2,000万円 50件、若手助成:400万円 20件を目途 | | 2月 | 武田科学振興財団(研究助成の種目が多いので、詳しくはホームページを参照のこと) | 令和7年1月7日~3月10日(医学系研究助成)、3月3日(生命科学研究助成) | 例えば、200万円 240件(医学系研究助成)。1,000万円 35件(生命科学研究助成) | | 3月 | 持田記念医学薬学振興財団 | 令和7年2月28日~5月7日 | 300万円 100件 | | 4月 | アステラス病態代謝研究会 | 令和7年4月1日~5月30日 | 200万円 100件 | | 4月 | 内藤記念科学振興財団・内藤記念科学奨励金・研究助成 | 令和7年4月~5月30日 | 300万円 75件以上 | | 4月 | 内藤記念次世代育成支援研究助成金 | 令和7年4月~9月30日 | 年間200万円を3年間(総額600万円)10件以上 | | 5月 | 中外創薬科学財団 | 令和7年5月1日~6月30日 | 400万円 10件程度(研究助成金I)。150万円 18件程度(研究助成金II)。150万円 4件程度(特別研究助成金) | | 6月 | 金原一郎記念医学医療振興財団・基礎医学医療研究助成金 | 令和7年6月1日~7月6日 | 10~100万円(令和6年度は32件) | | 6月 | 小野医学研究財団 | 令和7年6月1日~7月31日 | 300万円 15件程度(研究助成金)。150万円 15件程度(研究奨励助成金) | | 6月 | 上原記念生命科学財団・研究助成 | 令和7年6月10日~9月3日 | 500万円 80件(研究助成金)。400万円 10件(研究推進特別奨励金)。200万円 100件(研究奨励金) | | 7月 | 鈴木謙三記念医科学応用研究財団・調査研究助成 | 令和6年7月1日~7月31日 | 500万円以下(課題1)、300万円以下(課題2と3)(令和6年度は合計92件) | | 7月 | ブレインサイエンス振興財団 | 令和6年7月~10月11日 | 80~100万円 17件以下 | | 8月 | 薬学研究奨励財団 | 令和6年8月1日~9月30日 | 80万円以内 10件程度(グループA)、70万円以内 8件程度(グループB) | | 11月 | 豊田理研スカラー制度 | 令和6年11月1日~12月15日 | 100万円 50件程度 | | 12月 | 三菱財団・人文科学研究助成 | 令和6年12月13日~令和7年1月10日 | 一般助成は500万円以内 30~35件程度、大型連携研究助成は1,000万円以内 1~2件程度 | ※おおよその時期の目安。実際の応募期間は年度によって少し異なるので注意。この他に株式会社リバネスが運営しているリバネス研究費という助成がある。学部生、大学院生から40歳以下の若手研究者が応募可能で、応募時期は決まっていないので時折チェックしよう。 ## クラウドファンディング 科研費や民間財団の研究助成の獲得がますます困難になっていくなか、これまでとは違った形での研究者への研究費支援の新しい動きが出てきている。ここではクラウドファンディングを紹介しよう。研究費調達のための代表的なクラウドファンディングサイトには、以下の3つのものがある。 1. **Otsucle**(https://otsucle.jp) 2. **academist**(https://academist-cf.com) 3. **READYFOR**(https://readyfor.jp/tags/research) 最近では「クラウドファンディング」とよく聞くことと思う。Crowd(クラウド:群衆)+ Funding(ファンディング:お金を集める)が語源で、「アイデアを実現するための資金をインターネットを通じて多数の支援者から集めること」(academistのホームページより)である。 その流れは、 1. 研究のいいアイデアはあるのに資金が足りない研究者が支援金を募る。 2. その研究に興味をもち支援したいと思った人が支援金を提供する。 3. 研究がうまくいった暁には、研究者側から支援者に何らかの対価が還される。 クラウドファンディングでは、たとえ1人の支援者からの支援金の額が少なくても、大勢の支援者を集めることができれば、研究テーマをスタートさせるのに十分な研究資金の確保が可能だ。前述のクラウドファンディングのホームページを見れば、いろんなプロジェクトへの支援状況が掲載されており、とてもおもしろい。新しい研究者支援の方法として今後も注目していきたい。 ## その他:オープンイノベーション たとえ採択に至らなかったとしても申請書は新しい研究アイデアの宝庫である。研究者が持つ未活用のアイデアを企業に結びつけるオープンイノベーションのシステムがある。 例えばL-RAD(https://l-rad.net/)は各種の競争的資金に採択されなかった申請書を研究者がデータベース上に登録し、企業が閲覧できる仕組みである。興味をもつ企業が現れれば、研究資金を得て研究を進めることも可能となる。その他にもオープンイノベーションとして共同研究を募集している企業がいくつかある〔例えば第一三共のTaNeDS(タネデス)など〕ので、応募してみるとよいだろう。 > --- > **Column:C村くんの三度の学振特別研究員への挑戦** > > 不採択に不採択を重ねた2年間という日々は無駄ではなかった。そう思える日がくるとは、あのときの私には想像がつかなかった。 > > 初めて申請したのは2年前。忘れもしない沖縄旅行と並行しての申請書作成、右も左もわからないまま、思ったことをただ書き連ね、結果、予想通り不採択。沖縄の広い空と青い海が思い出された。まあ仕方ない、来年こそは! > > 時間さえかければと、リベンジを誓った翌年。過去の採択者にお願いして「いい(採択された)申請書」を勉強し、さらに文章も校正に校正を重ね、もうこれ以上のものは書けないと満を持して申請。結果、不採択。しかもC判定のおまけつき。情けないやら悔しいやらいろいろな気持ちが混ざってしばらく放浪の旅に出た(沖縄、アメリカ)。 > > 正直なところ、3度目となる今年はもう申請しないでおこうと思っていた。前年度以上の申請書は書けないと思ったし、何より傷心、いまだ消えやらぬ状態。業績もほとんど更新されていない。申請書を書かない"言い訳"はいくらでも思いついた。加えてこの年は、共同研究先でまったく新しい研究をはじめなければならないという状況で、異動の準備や手続き、新しい実験手法を習ったりしている間に時は過ぎ、気がつけば学内締め切りまで残り10日となっていた。もう無理。そんなときに聞こえてきたのは、某漫画の名ゼリフ「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」の声。しかし現実問題、残り時間はわずか10日、本当に間に合うのだろうか? とにかく残されたすべての時間を申請書の作成に費やすことにした。 > > 限られた時間で申請書の"ツボ"を的確に押さえるためにはじめたこととして、公募要領の読み込みと、どのような目的でどのような人材を求めているのか、採択される申請書とはどのようなものか、そのイメージを膨らませる作業にかなりの時間を費やした。結論、自分の研究がいかに面白い研究であるかを素直に審査委員に伝えること。とにかくそのことに専念する。そう考えると申請書の項目が非常に単純に思えてきた。いや、そうやって単純に考えなければ期間内に書き上げるのは無理だっただろう。各項目に沿って素直に記入する。とにかくわかりやすく、同じ文章でも文の並びを変えるだけでずいぶんと印象が違ってくる。文章で理解できないと思われるところは図で補う。とにかくわかりやすく、図のレイアウトを変えるだけでもずいぶんと見栄えが違ってくる。後でファイルの更新記録を見返してみると、少なくとも3回は大きく書き直しているようだった。そうして仕上がったのが期限前日。時間的に難しいときは教授のチェックなしで申請する許可だけははじめにもらっていた。申請書を書き上げるとそのままプリントアウトし、事務に提出した。期限ギリギリ。この年は沖縄には行かなかった。 > > 採択の結果は例年よりも早く公表された。ふと、学振が取れなければ研究をやめた方がいいかもしれない。そんな考えが脳裏をよぎった。今後も研究を続けていくなら、研究費の獲得は研究者にとって必要不可欠な能力だからだ。そう考えると、ネットで審査結果を見るために、電子申請システムにIDを打ち込む手が震えた。そこまでの覚悟をもって、後悔のないよう最後の一文まで書けただろうか。......ページが開く。そこには『内定』の文字が。頭の中が真っ白になった。獲った。獲れたんだ!! 驚きと安堵が交錯してなんとも不思議な気持ちだった。教授に報告すると本当に心から喜んでくれた。もしかするとそれが一番嬉しかったかもしれない。 > > 今、学振特別研究員として日々、研究に打ち込んでいる。それまでの生活と大きく違うところはないが、自分は学振特別研究員なのだという自負と採択課題に沿って主体的に研究しなければならないという覚悟をもって研究できるのは非常にありがたい経験だと考えている。もしこれから学振に応募される方がいるのならば、ぜひ最後の最後まで後悔のないよう手直ししてほしい。なぜならば、「あきらめたら、そこで試合終了」なのだから。 > --- > --- > **Column:大物研究者はどのように科研費をもらってきたのか?** > > 有名な研究者は、過去にどのような科研費をもらってきたのだろうか? ここでは超有名な研究者3名について2010年までのケーススタディを行った。研究者名は伏せてあるが、誰もが知っている研究者だ。ただし、この世代の研究者は大学院を終えるとまず留学するのが常で、しかも3名とも留学先ですごい業績をあげて帰国したのちに、初めて科研費に応募できる常勤研究職のポジションに就いたことに注意していただきたい。なお、重複や継続期間があるため、下記の採択回数と年数にはずれがある。また、特定領域研究は、現在の新学術領域研究や学術変革領域研究に相当するものである。 > > **ケース1 A教授** > 2010年までに基盤研究に6回、特定領域研究に17回、採択されている。 > > | 年 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 86 | 87 | 88 | 89 | 90 | 91 | 92 | 93 | 94 | 95 | 96 | 97 | 98 | 99 | 00 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | > |---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---| > | 基盤 | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | > | 特定領域 | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | > > **ケース2 B教授** > 2010年までに基盤研究に12回、特定領域研究に16回、その他に3回、採択されている。 > > | 年 | 83 | 84 | 85 | 86 | 87 | 88 | 89 | 90 | 91 | 92 | 93 | 94 | 95 | 96 | 97 | 98 | 99 | 00 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | > |---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---| > | 基盤 | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | > | 特定領域 | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | > | その他 | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | > > **ケース3 C教授** > 2010年までに基盤研究に7回、特定領域研究に11回、その他に2回、採択されている。 > > | 年 | 83 | 84 | 85 | 86 | 87 | 88 | 89 | 90 | 91 | 92 | 93 | 94 | 95 | 96 | 97 | 98 | 99 | 00 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | > |---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---| > | 基盤 | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | > | 特定領域 | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | > | その他 | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | > > > > これを見て、どのような感想をもっただろうか? ともかく、「よく科研費をもらっているなあ」と思う。採択された回数が半端じゃない。次には、このクラスの研究者になると、基盤研究はあまり重要でなく、特定領域研究やその他の研究費に大きくウエイトがシフトしている。有名な研究室なのでラボには人が多く、基盤研究だけでは研究費が足りないと推察される。 > > あくせくと基盤研究や若手研究に応募するのがいやになった? いいえ、こんなに有名な研究者の方々でも、研究費の獲得には苦労していて、研究期間が終了する年度には、必死に次の研究費獲得に挑んでいることをお忘れなく。 > ---