--- title: "3. 次回の応募に向けての準備" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 第5章 採択と不採択 pages: 262-264 images: page_0262.png ~ page_0264.png --- # 3. 次回の応募に向けての準備 ### (3) それでも来年度も必ず出そう 業績のない人はできるだけ論文発表をしよう。なにも筆頭著者でなくてもかまわない。共著論文でも十分なのだから。 私個人の経験からいうと、不採択になった理由はずばり、業績がないか、申請書の内容を十分に理解されなかったか、のどちらかだ。業績もあって、申請書の内容もよく書けている自信があるなら、一度、審査区分を再検討してみてはどうだろう? 採択件数は審査区分の応募件数に比例するので、いくらよい研究課題でも、その分野にレベルの高い課題が多ければ不採択になる可能性がある。応募した分野のレベルはどうだっただろうか? 最適な審査区分だったのだろうか? --- 不採択の痛手から立ち直って、さあ次年度に向けての準備を(今年こそは)早くからはじめよう! といっても、まだ3月や4月の段階では来年度の申請など実感はないだろうが、7月には次年度の公募開始となることをお忘れなく。また、採択された人も次回の応募で再び採択されるよう準備をしておこう。 普段から準備として行うべきことは、いくつもある。 ## (1) なんといっても日々の研究活動、特に論文発表 研究者にとって当たり前のようだけれども、日々の研究活動を行い、論文を発表すること、これに優る準備はない。来年度、あるいは2~3年先の採択を見据えて積極的に論文発表などをしておこう。もちろん若手研究者にとっては筆頭著者の論文が一番望ましいが、著者順は2番目以降でも、何番目でもいい。ともかく自分の名前が入った最新の発表論文がほしい。 ## (2) 申請内容のアイデア 申請内容に関するアイデアを常日頃から書き留めておこう。これはなにも科研費申請のためだけではなく、研究に関しても常日頃からアイデアを蓄えておくことは非常によい。どのようなアイデアでもよいから、思いついたらメモしておこう。文字や絵として、目に見える形で記録しておくことが非常に大切だ。私はA4判ノートに日付と場所を含めて記録している。 2章6:科研費申請のアイデアのまとめ方にも書いたが、アイデアを記録しておくのにパソコンやスマートフォンはまだノートなどの紙媒体におよばない。ノートだと起動やファイルを開く手間がいらず、また視覚的にも手書きの文書や図は自分だけの形なので、決まったフォントや様式のパソコンのファイルよりも、現実感がある。でもこういった考えは、そのうちに古くさくなっていく(すでになっている?)かもしれない。 ## (3) 資料の収集 普段から科研費申請に関する資料を集めておこう。日本学術振興会や文部科学省から発表されるその年度の科研費採択が決定した後のデータには目を通しておこう。採択率はどうだったか、審査区分の状況はどうか、どのような研究課題が採択されているか、できるだけデータを集めて対策を練ろう。 周囲に採択された人がいたら、お願いして申請書をコピーさせてもらっておこう。また研究機関内の申請書も可能なら見せてもらおう。実物の申請書は、採択・不採択にかかわらず非常に参考になる。 > --- > **Column:科研費に採択されるための最良の方法** > > この本には科研費獲得のための申請書の作成方法を長々と書いてきたが、この本はあくまでも申請書作成のための参考書でしかないことを忘れずにいてほしい。そして、これまでの経験から、科研費に採択されるための最良の方法は、「**書き上げた申請書を誰かに見せて添削してもらうこと**」だと思う。見てもらう人が採択経験豊富な人ならなおよい。そういった人に申請書を見てもらって何度も何度も直すのが一番よい方法だ。適当な経験豊富な人がいないときには、親しい友人でも結構。隣のラボの先輩でもよい。とにかく他の人に見てもらって意見を聞いて、書き直す。その繰り返しが最も有効な方法だと思う。 > > さらに、科研費に採択されるためには申請への心構えが重要だと強調しておきたい。「心構え」とは大げさなと思うかもしれない。しかし、科研費によく採択されている研究者ほど、しっかりしたポリシーをもって応募している。科研費を申請するときに、なぜ科研費申請を出すのか、何のためにこの研究を行うのか、なぜ今自分がやっている研究が重要なのか、などを考えてみるのは非常に重要だ。科研費を絶対に取るという強いモチベーションがあってこそ、初めていい申請書ができるのだ。 > > ここで私が考える科研費申請のための心構えをあげておこう。 > > 1. 科研費は応募する人の研究に対する夢を語るものである。張り切って大きな夢を語ろう! > 2. とにかく申請書を出すこと。まず出さないことには、なにもはじまらない。科研費を確実に獲得できる方法はない。逆に、科研費に絶対採択されない方法がある。申請しないことだ。だから、いつか(まぐれでも)採択されるときまで、必ず出し続けよう。採択されなくても次の年にもまた出す。だめでも次の次の年にも出す。出し続けていると、いつか必ず採択される。「科研費は通ることにこそ意義がある。金額はいくらでもいい」と私はラボメンバーによく言う。「科研費は研究者のプライドを懸けた戦いだ」とも言う。ともかく科研費を獲得して晴れて一人前の研究者になれる。だから、何度不採択になろうが強い意志をもって、科研費に応募し続けることが大切だ。 > 3. そして科研費に採択されたら、今度は積極的に他の人の申請書を手伝ってあげよう。そうするとその人は、次の自分の申請のときに申請書をチェックして意見を述べてくれる頼もしい仲間になる。 > > こういった心構えをもって、わかりやすく読みやすい申請書を作成し、業績(論文発表)をあげることで、必ず科研費に採択されることと思う。皆さんの喜びの報告を期待している。 > --- ## (4) 申請内容のチェック 不採択に終わった申請書について、もう一度じっくりと読み、またいろんな人の意見を聞こう。申請書を後でもう一度見直してみると、まずい点がいろいろとわかるものだ。また、採択された申請書のよかった点も分析しておこう。その際に図5-10のような表を自分なりに作って記録しておくと時間が経ってからふり返るのに便利だ。 | 応募年度 | 研究種目 | 審査区分 | 研究課題名 | メモ(応募時の感想や印象、反省点、今後の課題など) | 採択の可否 | 申請日 | |---|---|---|---|---|---|---| ## (5) 仲間作り ラボ内やあるいは隣のラボ、または知り合いの研究者に同じく不採択に終わった人がいたら、来年度の申請のときにはお互いの申請書をチェックできるようなグループを築いておこう。特に若手研究者の間でこのようなグループを作ることは非常によい。遠慮なく意見を言いあって、お互いにチェックしあうと必ずよいものができるはずだ。 ## (6) そしてもちろん、次年度も必ず応募すること 諦めずに頑張っていれば、いつか必ず科研費に採択される。ともかく準備を怠りなく、時間をかければかけるほどよいものができる。申請がはじまってからアイデアを練っても、所詮内容は薄く、常日頃から温めていたアイデアにはおよばないものだ。