--- title: "2. 不採択のとき――採択されなかったら、どうする?" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 第5章 採択と不採択 pages: 256-261 images: page_0256.png ~ page_0261.png --- # 2. 不採択のとき――採択されなかったら、どうする? ## 不採択の通知 これまでは科研費電子申請システムにログインして、申請した課題が表示されていないときは不採択だったが、令和4年度からは「審査結果通知メニュー」画面の応募した研究種目に「不採択」ときちんと表示されるようになった。 また、不採択の研究課題について、審査結果はオンライン上で開示される。応募時に「審査結果の開示」を希望した場合、「審査結果通知メニュー」画面には「審査結果開示状況」があり、不採択の応募課題の評価結果が開示される。令和6年度の審査結果の開示は基盤研究(A, B, C)と若手研究では4月11日に行われており、挑戦的研究(開拓・萌芽)では8月1日に行われた。不採択課題について、基盤研究(B, C)と若手研究では1段階目の書面審査のおおよその順位などが、基盤研究(A)では審査結果の所見と書面審査のおおよその順位などが公開される。 審査結果開示のページでは、応募した研究種目名・区分・研究課題名に続いて、研究種目名と区分における応募件数、採択件数、採択率の結果が示されている(図5-6)。 次に応募した研究課題について「**1. 審査区分における採択されなかった研究課題全体の中での、書面審査の総合評点に基づくおおよその順位**」がA・B・Cの3段階で示されている。ちなみにA(上位20%)、B(上位21~50%)、C(50%以下)である(図5-7)。 それに続いて「**2. 書面審査における評定要素ごとの評価結果**」が記入されている。令和5(2023)年度公募における基盤研究と若手研究では「(1)【評定要素ごとの結果】」は、以下の3項目について4段階で点数が付いている。 | 評定要素 | あなたの平均点 | 採択課題の平均点 | |---|---|---| | (1) 研究課題の学術的重要性 | 2.83 | 3.39 | | (2) 研究方法の妥当性 | 3.00 | 3.22 | | (3) 研究遂行能力及び研究環境の適切性 | 3.00 | 3.43 | 応募者の平均点(複数の審査委員による採点の平均点)と採択課題の平均点が表示されている。評定区分は、4:優れている、3:良好である、2:やや不十分である、1:不十分である、となっている。 なお、令和7年度公募からは、基盤研究(A, B, C)において「研究課題の国際性に関する評定要素」が加わり、これも4段階の評定区分で評価されることになっている(この評定要素は充足率に影響を与える。参照3章9:本研究がどのような国際性を有するか)。 さらに「**(2)【審査の際「2(やや不十分である)」又は「1(不十分である)」と判断した項目(所見)】**」には、何人の審査委員が2または1と採点したのか表示してある(図5-8)。そして、「**3. その他の評価項目の評定結果**」では「研究経費の妥当性について」の審査委員の評価が記載されている(図5-9)。「研究経費の妥当性について」については、例えば外部委託費が多すぎないかとか、パソコンやソフトなど通常は準備されているべきものに多額の研究費が計上されていないか、などがチェックされる(参照3章13:研究経費とその必要性)。 最後に「**4. 留意事項**」では「人権の保護及び法令等の遵守を必要とする研究課題の適切性について」の審査委員の評価が記載されている(図5-9)。ここは申請書のこの項目で、学内の倫理委員会や遺伝子組換え実験安全委員会などに研究計画を申請して承認を受けていること、あるいはこれから受けることが書かれていれば問題ない(参照3章11:人権の保護及び法令等の遵守への対応)。 このような通知書の内容からは、第1段審査評点のおおよその順位がA~Cの段階で書かれているだけで、具体的な順位や、あとどのくらいで採択圏内に入るのかなどはまったくわからない。また評定要素における採択課題との平均点の差や、評点が2か1が付いた項目を指摘されても、残念ながら個々の申請書の内容についてのコメントではないので、具体的にどこが悪いのかわからず、次年度の申請書を改良するのに、あまり役に立つとは思えない。 このように審査結果の開示内容は少しずつ改善されているのだが、まだまだ不十分だ。現在、すべての申請書に対してすべての審査委員がコメントを書くことになっているので、将来的には、申請内容のどこが悪いのか審査委員の直接な意見と、また応募件数のなかで何番目だったのか、などの詳細な情報が開示されるようになるのかもしれない。 > --- > **Column:初めての科研費(Gくんの場合)** > > 何年も前に初めて若手研究が採択されたとき、単純な嬉しさと同時に、心底ほっとした。なぜかというと、この研究所のスタッフは全員が科研費を獲得していた。危うく自分ひとりが科研費をもらえず、周りに頼って研究をするという非常に肩身の狭い思いをするところであった。そのため単純に研究費がもらえる以上に、自分にとって精神的にとても大きな意味をもった採択であった。 > > これまで地方国立大学を出た私にとって、科研費はあまり身近なものに感じられなかった。理学部の学生時代からそれほど多くの研究費を獲得した人は周りにいなかった。どちらかというと科研費や特別研究員(学振)はある程度もらえる人は決まっており、書類作成に時間と労力を傾けても仕方ないという声さえ聞こえてきていた。また、ポスドクとして採用された研究所には潤沢な研究費があり、ポスドクはとにかく研究費よりもデータを出すことを第一に求められた(それでもたいした結果は出せなかったが......)。こういった経緯で、それまで、まともに研究費の申請書を書いたことがなかった。 > > そのため、この分子生命研に来て初めて真剣に科研費申請に取り組んだ。しかし、まず初めに申請書の書き方がよくわからない。これまでも、格好だけをまねて書いていたものの、誰に教わるでもなく本当に自己流であった。できあがった申請書を提出前に教授に見せたところ、「まったく読めたものではない!」と書き直しを命じられ、それから周りの研究者の採択された申請書をみて、申請書の書き方を初めて知った。わかりやすく端的な言葉で書かれており、それに比べて自分の申請書は自己満足で、読み手の読みやすさを考えていないものであると感じた。書き直して申請したが採択されず、その後もチャレンジを続けたが、評価Aをもらうことはあっても、毎年連続不採択であった。この原因の1つとして、目立った実績がないことを理由に挑戦的萌芽研究に出していたのがよくなかったと思われる。 > > そしてついに採択。内容もさることながら、学内の講習会などで学んだ書き方のコツをもとに、図を使い、わかりやすく書いたことと、実績はないが駄目でもともとという気持ちで、採択数の多い若手研究に出したのがよかったのだろう。これでようやく研究者としてのステップを一歩上れたような気にはなったが、今回の採択は研究室の先生方の威光や、研究室より出た素晴らしい論文の恩恵を少なからず受けていると思われる。それを考えると、これからの研究の成果と次の研究費獲得が、自分の真価を問う意味で重要だと考えている。 > --- ## もし、採択されなかったら...... 申請書を出す前から「採択されなかったら......」とは縁起が悪いが、その場合は次のことを忘れずに行おう。 ### (1) 採択されなかった原因を考えよう 何が悪かったのか分析しよう。日本学術振興会のホームページから、審査区分の状況を調べよう。応募したのは競争の激しい分野だっただろうか? また「KAKEN(科学研究費助成事業データベース)」から採択課題を調べて、同じ分野では誰がどのような課題で採択されているのか、よく研究しよう。同じ申請分野で採択された人は間違いなくこの先もライバルになる。また、採択された人、あるいはラボのメンバーにもう一度申請書を見てもらって、意見を聞くのは非常に有効だ。 ### (2) 審査結果から自分の申請が採択圏内までどのくらいなのか知ろう 採択に準ずるレベルなのか、それ以下なのか? 通知される審査結果からは、あなたの申請は採択圏内までどのくらいなのか、ごく簡単にしかわからない。同じ分野で採択された課題を調べて、自分が採択圏内までどのくらいなのか判断しよう。 > --- > **Column:科研費がなくても生き延びる方法** > > 科研費に採択されなかったときには、どうやって研究を続けていったらいいのだろうか? ほとんどの国立大学の場合は、大学から各教室へ支給される研究費は微々たるもので、光熱水費や電話代だけで消えていってしまう。科研費が獲得できなかった場合、冗談抜きに「今年は研究費がゼロ」状態になってしまう。すると、「研究費がない」→「試薬・器具が買えない」→「実験ができない」→「業績が出ない」→「採択されない」→「研究費がない」と悪循環に陥ってしまう。こんなときにはどうやって研究活動を続けていったらいいのだろうか? > > これに関して、私のラボのメンバーで知恵を出し合ったアイデアが次のものだ(なぜ、こんな話し合いをしたのかはさておいて)。 > > 1. まず簡単なのは、自分の出身ラボの教授にお願いして、研究費を分けてもらうこと。知り合いの研究者でも可。そのために次年度に向けて研究分担者に加えてもらって、研究費を分配してもらう。 > 2. 科研費以外の国の研究費や民間財団の研究助成に応募する。科研費同様、採択のハードルは高い(参照5章4:科研費以外の研究費への応募の可能性)。 > 3. 自腹を切る。自分の給料から研究費を捻出する。 > 4. 研究を止める(悲しすぎる......)。 > > そして現実的によいと思うアイデアは、 > > 5. 仲間を募って互いに協力して研究を続ける。1人で研究を続けていくのは大変だが、自分と同世代の近くにいる研究者と協力体制を作っていけばなんとかなる。機器類はもちろんのこと、試薬・器具などを融通しあうというものだ。何人かの研究者が集まれば、各人のネットワークからさらに人脈が広がっていく。こうやってなんとか研究を続けて業績をあげ、科研費に採択されるのをじっと待つのだ。 > > 独立したばかりの若い研究者諸君、くれぐれも仲間を大切に。 > ---