--- title: "1. 採択されたとき" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 第5章 採択と不採択 pages: 250-256 images: page_0250.png ~ page_0256.png --- # 1. 採択されたとき 科研費を獲得することは、あくまでも研究を行うための一手段であって、それが目的ではない。獲得した研究費で、よりよい研究を行うことこそが科研費の目的である。 > *Even a mistake may turn out to be the one thing necessary to a worthwhile achievement.* > 失敗とは、よりよい方法で再挑戦する素晴らしい機会である。 > ――ヘンリー・フォード 今年、科研費に採択されなくても、翌年以降も何度でも挑戦してほしい。科研費はすべての研究者にチャレンジの機会を与えてくれているのだ。 --- まずは「おめでとう!」。高い競争率を勝ち抜いて採択されたのだから、大いに喜んでほしい。そしていただいた研究費で思いっきり研究をやってもらいたい。 ## 採択の通知(交付内定) 科研費に採択されたかどうかは、ネット経由でいち早くわかるようになっている。 採否の結果を調べるには日本学術振興会から審査結果の通知が発表されたあとに、科研費電子申請システムに直接アクセスして、科学研究費助成事業のトップページで「研究者ログイン」→「応募者ログイン」→「応募者向けメニュー」と進む。そして「審査結果閲覧」から「審査結果を閲覧する」をクリックすると「審査結果通知メニュー」画面が表示される。そこに応募した研究種目が採択なのか不採択なのかが表示されている。審査結果は、基盤研究(A, B, C)、若手研究では2月下旬に発表され、基盤研究(S)は2月中旬、奨励研究は1月下旬に発表される(参照1章5:申請から採択まで、図1-6)。また挑戦的研究は、2月下旬に「事前の選考結果」(いわゆる足切り)が発表され、「審査結果通知・交付内定」は6月下旬になる。 このように基盤研究(S, A, B, C)、若手研究では2月中に審査結果が通知されるが(今後もおそらくは同じ時期と思われる)、これはあくまでも「審査結果」の発表であり、「交付内定」はこれまで通り4月1日以降である。単純に「審査結果発表=交付内定」とならないのは、「交付内定」はあくまでも新年度のものであるという制度上の理由によるのだろう。 また「審査結果」の発表の段階で「交付予定額等」を確認することができるため、次年度の研究計画を修正することができる。 基盤研究(B, C)と若手研究では、「審査結果」は不採択の課題しか表示されないが、基盤研究(A)では不採択の課題だけでなく、採択された課題についても開示され、申請者が「審査結果の所見の概要」をチェックして誤字や公開に不適切な内容がないかの確認をすることになっている。 なお、従来通り4月には、研究機関の事務を経由して、内定の連絡がある。各研究機関には図5-1のような通知と、交付が内定された研究種目と内定者の一覧表が送られてくるだけであり、日本学術振興会や文部科学省から個人宛に連絡は一切ない。所属している研究機関からは個人宛に通知がくる(図5-2)。 実はこの段階ではまだ交付の内定であって、いくつかの書類を提出しなければ正式な採択とはならない。 ## 採択後の手続き 交付内定の後に交付申請書(図5-3)と支払請求書(図5-4)の書類を提出して、例年6月ごろ交付決定となる。交付申請書と支払請求書は、応募申請書をもとに作成していけばよい。科研費の研究種目によっては交付決定の時期が異なることがある。 以前は、これらの書類と同時に「研究において不正行為を行わない」ことを誓った確認書を提出しなければならなかった。現在は研究不正に関するガイドラインが定まったことにより、各機関において最低限の研究不正防止等にかかわる取り組みを行うこととなっている。例えば私の所属する大学では、公的研究費の応募や執行にあたって、倫理教育を受講することや、研究不正等に関する誓約書の提出が求められる。そして、補助金では毎年度交付申請時に、基金では初年度の交付申請時と翌年度以降は支払請求書作成時に、研究倫理教育の受講等について受講済みである旨を電子申請システム上でチェックを入れてから作成する(チェックしないと作成できない)ようになっている。 その後6月になって、ようやく交付決定通知書がくる(図5-5)。2月の「審査結果」の発表で採択となった場合、研究開始の事前準備はできるが、経費を執行できるのはこれまで通り4月以降の交付内定のあとになる。 ただし注意しなければならないのは、すでに受給している科研費の「研究成果報告書」または「研究経過報告書」が提出期限までに未提出である場合、採択されていても研究費は配分されないという点である。年度末あるいは研究期間終了後の報告書は、研究費をもらっている者の義務なので、必ず提出しよう。 ## 論文を発表したときには謝辞を忘れずに もう1つ重要なことは、科研費を受けてその成果を論文発表するときには必ず謝辞を入れることだ。謝辞の表示は詳しくは日本学術振興会の科研費のページのサイドバーにある(ウインドウが小さいときは右上の「MENU」に隠れている)「使用ルール・様式集」→「使用ルール」のページからダウンロードできる「研究者使用ルール」というPDFファイルのなかに書いてある。このPDFは年度ごとに更新されるので、謝辞を記載する前に必ず確認すること。 令和6(2024)年度の例を以下に示す。 - **日本学術振興会(JSPS)の科研費:** This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Number JP12345678(8桁の課題番号). - **文部科学省の科研費:** This work was supported by MEXT KAKENHI Grant Number JP12345678(8桁の課題番号). 謝辞を忘れないようにしよう。 ## 研究データマネジメントプラン(DMP)について 科研費に採択された後のことだが、令和6(2024)年度から、原則すべての研究種目において研究データマネジメントプラン(DMP)の作成が求められるようになった。DMPとは研究データの管理計画書のことである。 最近の論文投稿においても、もとになった研究データの提出が求められることが多く、世界的に研究データの公開や共有を通して研究成果のオープン化が進んでいる。日本においても公的資金により得られた研究データの管理や活用について機関リポジトリが整備されてきたが、研究データの収載が進んでいないことや、研究データポリシーが未整備であるといった課題がある。このため科研費においてもDMPの提出が求められるようになった。 DMPの様式例は交付内定時に示される(学術振興会ホームページにも参考様式として「DMP様式例・記入例」がある:https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/10_datamanagement/index.html)。科研費に採択されたら、この内容に沿って研究課題における研究成果や研究データの保存や管理を行うことが必要だ。 研究データマネジメントの具体的な進め方は以下の通りである。 ### (1) 研究開始前 DMPの様式例を参考にして、研究開始にあたり研究データの管理計画を策定する。この段階ではDMPの提出は不要である。 ### (2) 研究実施中 DMPにもとづき研究データを適切に管理しつつ研究を進める。研究の進捗に応じてDMPを適宜更新する。 ### (3) 各年度の研究終了後 科研費によって得られた研究データは、機関リポジトリや分野別リポジトリに研究者が収納することで、研究終了後も適切に管理される。また研究者が研究データの情報であるメタデータを提出すると、KAKEN(科学研究費助成事業データベース)において登録・公開されることが予定されている。そして将来的には国立情報学研究所データベースのCiNii Researchに連携されて、研究データの利活用が広く行われる予定である。