--- title: "1. 申請書の見栄え" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 第4章 申請書の仕上げと電子申請 pages: 216-223 images: page_0216.png ~ page_0223.png --- # 1. 申請書の見栄え 科研費の申請書において第一印象は重要である。決められた様式の申請用紙に文章を流し込むだけではなく、フォントの種類と大きさ、余白の有無、小見出しや箇条書き、図を入れるなど、審査委員に読みやすいように工夫することが大切だ。完成した申請書は電子申請で提出するが、締め切りには余裕をもって送信しよう。 申請書を書き上げて、「さあ、終わった、提出だ!」とほっとしている人も多いだろうが、ちょっと待ってほしい。研究機関内の締め切りまでまだ時間があれば、最後の仕上げをお忘れなく。それは、「きれいな読みやすい申請書にする」ということ。現在では申請書の提出はすべて電子申請になったけれども、審査委員の手元に送られてくる大量の申請書はまだ多くの種目では紙媒体だ。いずれはすべての種目でPDFファイルによって審査することになるのだろうが、紙媒体であろうが、PDFファイルであろうが、審査委員によい印象を与える読みやすい申請書にしよう。そのために、いくつかの点に注意する必要がある。 ## フォントの種類と大きさ フォントの種類によって申請書の感じはがらりと変わる。フォントは明朝体を使う人の方が多いと思うが、ゴシック体も悪くない。ゴシック体の方が、文字がはっきりして見やすく、また力強い印象を与えるからだ(図4-1)。もちろん規定はないため自分の好きなフォントにするのが一番満足感が得られる。重要なことは印刷したときに文字がかすれてしまうくらいの細すぎるフォントや、申請書が黒く感じられるような太すぎるフォントは使わないことだ。 また、基本的なこととして、フォントの大きさをあまり小さくしないように。研究計画調書(添付ファイル項目)には「本文は11ポイント以上の大きさの文字等を使用すること」と指示されている。しかしこれはMicrosoft Wordファイルに標準搭載されているフォントであるMS明朝とMSゴシックが想定されている。MSフォントはやや小さめのフォントで、11ポイントは他のフォント(例えばヒラギノ、游明朝、メイリオなど)の10.5ポイントに相当する(図4-2)。 なお、「それでもスペースがいっぱいで全文が入らない」というときには、フォントを小さくするのではなく、文章を削る方がよい。もう一度申請書をよく読んで、不必要な部分を削除すると、必ず内容がよくなる。 なお、申請書のWordファイルではデフォルトのフォントはMS明朝かMSゴシックになるが、正直これらのフォントは美しくない。これらのMSフォントは、まだ性能が十分ではなかった昔のPC環境において、表示のしやすさや読みやすさを確保するためにつくられたフォントである。そのためMSフォントと他のデザイン系のフォントでそれぞれ申請書を印刷して比較すると、デザイン系のフォントの方が好ましいことがわかるだろう。 フォントとしてお勧めできるのは、明朝体ならば游明朝やヒラギノ明朝、ゴシック体ならばメイリオ、游ゴシック、ヒラギノ角ゴシックなどである。 ## 余白を生かす 文章の周囲に適度な余白を設けること。枠内にぎっしりと書いていると、審査委員はそれだけで、げんなりしてしまう。また行間にも注意しよう。行と行の間が詰まっているときは、行間を少し広げよう。またところどころ、空白の行を入れると見やすくなる。図4-3に示した例を見ると、少しの工夫で、いかに違ってくるかがわかると思う。図4-3Aは一番見やすい形の図4-3Cから、空白の行をカットしただけのもので、これだけでも印象がずいぶんと異なる。余白がなく、ぎっしりと書いた申請書は意外に多く、これらは非常に読みにくい。 ## 箇条書きや小見出しを使う 箇条書きにすることで要点がまとまって、ぐっと読みやすくなる。研究目的などを箇条書きにすると非常によい(図4-3B, C)。 また、小見出しをつけて読みやすくする工夫もある(図4-4)。小見出しはその部分の要約になるからだ。1つの段落でページの半分以上の長いものになるときには、小見出しをつけて文章を半分に分ける方がよい。その方が審査委員は読みやすい。 ## 文字を強調する 強調文字として太字や下線などを利用することも見栄えをよくする1つの手段だ。ただし、これらの強調文字を混在させることは避けた方がよい。太字や下線などを使う目的は、その単語や文章を目立たせるためであろうから、使うならどれか1つにすべきだ。 強調文字を使った申請書によくみられるのは、これらを使いすぎること。以前、1ページのほとんどに下線を引いている申請書を見たことがある。いったい何を強調しようとしているのか、これではわからない。原則として強調文字や強調する文章は1ページに多くても2〜3カ所以内だ。 また、ここぞという本当に強調するべき要点の部分のみに使うべきだ。なぜこのような部分を強調しているのかわからないものが多すぎる。くれぐれも大事な点のみを強調するようにしよう(図4-5)。 > --- > **Column:審査委員がうんざりする申請書** > > 科研費の審査委員をやってみると、「これは、あまりに...」と言いたくなる申請書も多々ある。思いつくままに書いていく。 > > 1. ぎっしりと隙間なくたくさん書いてある申請書。見ただけでげっそりして、読む意欲がなくなってしまう。それでも勇気を奮い起こして読み進めるが、点数は辛いものになりがちだ。 > 2. 太字、下線、二重下線、その組合わせなど、強調文字が多すぎて、何が大切なのかわからない申請書。ディスカウントストアの広告みたいで、見るだけでくらくらする。 > 3. 図が複雑すぎる申請書。図の意味を探るだけでも大変。そんなにいっぱいシグナル伝達経路を書いてもわからない! > 4. 内容が乏しい申請書。あまりに余白が多いと計画が練られていないのでは、と印象はよくない。(1)とも関係するがバランスが重要である。 > 5. 内容が難しい申請書。理解するのに、何度も何度も読まなくてはならず、根気が必要。たいていは内容が高度なのではなく、書いてある目的や意義が明確でないだけ。「理解できないのは、書いた方が悪い!」と開き直りたくもなる。 > 6. 自分の苦手な分野の申請書。でも審査委員はちゃんとみています。 > --- ## 難しい単語を避ける また難しい単語は、やさしい単語に置き換えよう。難しい単語の例として、例えば手元の資料から主観的に選ぶと、「識別」「乖離」「破砕」「算出」「洞察」などがあり、それぞれ、「見分ける」「離れる」「細かく砕く」「値を出す」「考える」などといいかえるとよい。また誤字・脱字にも十分に気をつけよう。ワープロ変換に頼っていると、ときには思いもかけない変換ミスがある。 ## 漢字、英語、カタカナを適切な割合に 文章全体に漢字が多すぎないように、その割合を考えること。漢字があまり多いと、申請書全体が堅い印象になり、審査委員は一気に読む気が失せてしまう。同様に文章中に英語、カタカナが多すぎると、読みにくくなる。ひらがな、カタカナ、漢字、英語の割合を適切にすること。もっともこれは、ある程度の経験を積んでいかないと難しいとは思う。 とにかく、審査委員が好印象をもつような、きれいで読みやすい申請書を作ることを心がけよう。 > --- > **申請書の見栄えのポイント** > > フォント(種類と大きさ)、レイアウト(余白、箇条書き、小見出し)、強調文字(太字、下線)などに細かく気を配って、読みやすい申請書を作成すること。 > --- > --- > **Column:初めての科研費(Fさんの場合)** > > 日本学術振興会特別研究員(PD)の期間が終了し、いよいよ科研費申請ができる立場になった(もちろん、PDの間は特別研究員奨励費の申請はできるが、他の採択率とは雲泥の差である)。まずは、どんな項目を書くのか?ページ数は?と公募要領と計画調書をぱらぱらめくる。記載項目は学振研究員応募と大きく変わらない。そこで、3年前に書いた自分の学振申請書を読み返してみた。よく「夜書いたラブレターは、朝読んではならない」といわれるが、そんな気分になった。感想は、「こんな文章でよく愛が実ったね(申請書通ったね)」だった。これはなんの役にも立たないので、我が研究室の百戦錬磨の方々の申請書を参考にさせてもらうことにした。 > > 夜な夜な先生方の申請書を読むうちに、申請書の書き方と研究スタイルが一致することに気がついた。ならば、自分の研究スタイルに合った申請書を書けばよいのではないだろうか?まず、自分はどのような研究スタイルなのか?どのような研究者になりたいのか?を考えてみた。「派手さはないが、生命現象に対して真摯に向き合いたい」が私の回答であった。ならば、「派手ではないが、自分の興味対象をマニアックに追究する」申請書に決め、自分の思い描く研究ストーリーを綴っていった。一通り書き終え、K先生にみていただくことにした。K先生からいただいたコメントをもとに書き直していると、申請締め切り日になってしまった。急いで最終版原稿を秘書さんに手渡して、初めての科研費申請は完了となった。 > > 結果が出るまでは、神頼みをするぐらいで特に何もできない。とりあえず、研究者の皆さんに顔を覚えてもらおうと、いろいろな学会に参加した。あまりデータがなくても、親父ギャグを織り交ぜつつ発表した。しかし、知り合いの先生から「あのギャグつまらない」と言われてへこんでいるところに、他の先生からは「あなたよくお見かけしますが、どこの方?」とたずねられ、もう立ち上がることもできなくなった。そう、学会での努力は実を結んでいないのである。ギャグが寒いのか?小柄だから目に入らないのか?そもそも根本的に間違っているのか?研究同様、暗中模索だった。 > > そんななか、申請課題の採択通知がきた。よかった、「愛が通じた」。 > ---