--- title: "5. 「本研究の目的および学術的独自性と創造性」の書き方" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 第3章 申請書の書き方 pages: 147-152 images: page_0147.png ~ page_0152.png --- # 5. 「本研究の目的および学術的独自性と創造性」の書き方 ## この欄では何を書くのか? 研究テーマの中心となる研究目的を簡潔に書く。この研究では何をしようとしているのかをまとめる。そして、この研究を行うことがなぜ重要なのか、この研究によって将来的にどのような展開や応用が考えられるのかを書く。 ## この欄では何を評価する? この研究テーマにおいて、申請者が何を行おうとしているのか、設定している研究目的が的確なものかどうかを評価する。そして研究のオリジナリティや重要性、研究の展開・応用の可能性を評価する。 ここも「本研究の目的」と「学術的独自性と創造性」に分けると書きやすい。また「学術的独自性と創造性」は学術的「独自性」と「創造性」とに分けて書いてもよい。 ## 「本研究の目的」 「本研究の目的」は申請書のテーマであり、もっとも重要な部分である。この研究で、何を明らかにしようとしているのか、どのようなことを行うのか、どのような手段で問題点を解明していくのかなどを書く。しかし、ここは意外に書きにくい。これから行う予定の研究の内容を書いているのだが、いまひとつピントが絞れていないというか、要点がわからない書き方になっていることが多い(図3-37A、図3-38A)。 その理由の1つは、研究目的の簡潔なまとめを書いていないからだ。まずは研究目的として、どのような研究を行って何を明らかにするのかを2~3行で簡潔にまとめておくこと。ただし「~を明らかにする」「~を調べる」だけではだめで、明らかにしてどうするのか、何がわかるのか、どのような応用ができるのか、などまで書くこと(図3-37B、図3-38B、図3-39)。この研究目的をまとめたものは申請書のなかで繰り返して印象づけるとよい。 とにかく、研究目的をわかりやすく書くこと、これに尽きる。審査委員はこの申請内容については予備知識もなにもなく、まったく知らないと思うこと。3章1:申請書を書く前の注意点の繰り返しになるが「わかりやすく」とは抽象的でわかりにくいが、私が考える「わかりやすく」のレベルはというと、 - 申請しようとしている分野と異なる分野の人にもわかる - ポスドクはいうまでもなく、大学院生でも読んでわかる - 恥ずかしいくらいにわかりやすい文章でもよい - 自分でやさしく書きすぎた、というくらいがちょうどよい > **図3-37の説明:** A)改良前のものは、1つの文章が非常に長く、複数の研究内容を続けて書いているため、読んでいても研究目的がはっきりわからない。B)改良したものでは、研究テーマに関する問題点をまず書いて、次に研究目的を2行で簡潔にまとめてある。そして取り組むべき研究内容を3つに整理して箇条書きで書いてある。この2行でまとめた研究目的は、申請書の他の箇所で繰り返し書いておくことで審査委員に印象づけるとよい。 > **図3-38の説明:** A)改良前のものは、必要なことが書かれておらず研究目的の意義がよくわからない。B)改良したものでは、研究によって、どのようなことがわかるのか、展開・応用が期待できるのかを付け加えて、研究目的の意義を深めている。 > **図3-39の説明:** 平成23年度に採択された挑戦的萌芽研究の申請書の実例をもとに改変。「研究の目的」→「この研究によって明らかになること」の流れで書いている。 ## 「学術的独自性と創造性」 次の「学術的独自性と創造性」だが、この部分は特に書きにくい。「独自性」や「創造性」といわれても、何を書いたらいいのかわかりにくいかと思う。しかし間違っても「この研究は世界中で私しかやっていないので独自性・創造性がある」とか書かないことだ。このように書かれているものは、意外に多い。もちろん競合している場合もあるが、研究とはすべてがその人しかやっていないオリジナルなものだからだ。 ここにはこの研究の特色(オリジナリティ=独自性)は何か、そしてこの研究がなぜ重要なのか、その重要性や研究の意義をしっかりと書いておけばいい。実際に書くときには「独自性」と「創造性」とに分けて書くのもよい。 **「学術的独自性」** は難しく考える必要はない。どの研究も独自性をもっているはず。この研究の特色は? 一番の売りは? 他の研究者の研究とどのように違う? そういうことを書けばいい。そして、得意としているテクニックやメソッド、あるいは申請者が現在もっている大切な試料やデータなど、申請者にしかできないことを書けばよい。研究室に保有している最新の機器を駆使するのでもいい。どのような特色があるのか、目新しい点は何かなどを書いておけばよい。 **「創造性」** も難しく考える必要はない。この研究によって、何が明らかになるのか、どのようなことができるようになるのか、どのような研究の展開や応用が考えられるのかなどを書けばいい。以前の申請書では「独創的な点はどこか」となっていたのが、「独創性」ではちょっと大げさすぎるのか平成30年度以降の申請書では「創造性」となった。 ## 独自性、創造性とは何か 「独自性」「創造性」を示せとあるので、「このような点で本研究はきわめて独自性があり創造性があるといえる」と書く人が意外に多いのだが、「独自性」「創造性」という言葉があまりに陳腐になるので避けた方がよいと思う。 古い文献だが、『実験医学 Vol.16 8~12月号』(羊土社、1998)武部 啓 先生の「科研費申請の正攻法とコツ」にはすごく参考になることが満載だ。ぜひ読むことをお勧めする。そのなかで「独創性」(独自性・創造性と言い換えてもいいと思う)に関して述べていることにすべてが書かれている。 いわく、「自分しか行っていない研究」は独創性を示すことにはならない。 > **図3-40の説明:** 「独自性がある」「創造性がある」などと自分から書くのではなく、研究の重要性をアピールすること。 武部先生のあげる「独創性」のポイントは、次の5つである。 1. 世界あるいは日本国内で、第一人者あるいはそれに並ぶ高い評価を受けている研究であること。これは国際会議へ招かれていることや、国際的に厳しく、かつ広く読まれている雑誌にいくつも論文が載っていたり、特別のコメントがその雑誌で述べられたりすることなどからわかる。そのような「経過」は誇りをもって書いてよい。 2. 自分が樹立した系統(株)、あるいは自分が見つけた疾患(患者)などを有し、それを多くの人が使ったり、引用したりされている場合。 3. 自分が開発した研究技術、解析手法などを駆使する研究。 4. 多くの研究者が注目している分野で、自分の研究の位置づけと意義を明確に示すことができ、しかも具体的な研究計画が示されている場合。 5. 全く新しい技術、方法を強い説得力で提案する研究。 (1)~(3)は申請者がこれまでに独創的な研究を行ってきたことを示しているので、大いにアピールすべきポイントである。また(4)(5)こそが申請する研究計画の「真の独創性」であると述べており、私もこの考え方に賛成である。これらのことを十分に理解して、自分のオリジナルな研究をアピールしよう。 ## 「独自性・創造性」(独創性)の実際の書き方 若手研究者に多くあるのは、図3-40のような文章だ。このようにストレートに(!)「独自性・創造性」(独創性)と書くのは、若い研究者に多い。まだ十分な実績がないことはわかっているのだから、背伸びせずに、自分の研究の何が新しいことなのか、しっかりと書いておこう。なお、あまりよくない例と見本となる例を図3-41~図3-44に示しておく。 > **図3-41の説明:** 具体性に乏しい。「過去に行われていない」から独自性・創造性があるのではない。あまりに決まりきった表現になっている。 > **図3-42の説明:** 平成19年度基盤研究(B)の申請書の実例をもとに改変。自分たちの強みを強調し、応用面の可能性を示し、準備が整っていることをアピールし、最後にもう一度意義を強調している。 > **図3-43の説明:** 平成21年度若手研究(B)の申請書の実例をもとに改変。箇条書きで読みやすい。重要な点を説明するのに、最初に要点を書いて、そのあとで詳しく解説している点が素晴らしい。応用の可能性に触れている。 > **図3-44の説明:** 平成21年度若手研究(B)の申請書の実例をもとに改変。応用の可能性を具体的に書いている。予備的な検討を示す。「創造的な」などと言わず、これくらいがいい。全体に力強く、研究に対する意欲が感じられて好ましい。 ## 「本研究の目的および学術的独自性と創造性」の書き方のポイント - 研究目的を2~3行で最初にしっかりと書く。 - どのような研究を行って、何を明らかにするのか?をはっきり書く。 - 自分がこれまでやってきた研究やデータを説明して独自な研究の流れを書く。 - 本研究によって明らかになること(もちろんよい結果のことだけ)を予想して書く。 - この研究の特色、一番の売り、目新しい点は何かを書く。 - 研究の重要性や意義をしっかり書く。