--- title: "2. 研究課題名" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 第3章 申請書の書き方 pages: 121-124 images: page_0121.png ~ page_0124.png --- # 2. 研究課題名 > **この欄では何を書くのか?** > 申請する研究計画を的確に表現した課題名をつける。 > **この欄では何を評価する?** > 研究内容がイメージできる課題名なのかどうか。ただし研究課題名の良し悪しだけで採択の可否が決まるわけではない。 研究課題名はその申請書の「顔」のようなものだが、研究課題名を最初に考える必要はない。申請書を書いていくうちに、研究計画に最適な課題名が浮かんでくるだろう。私の場合は、申請書を作成しながら課題名が浮かんだらノートに記録しておく。そうやって5〜10の課題名候補をストックして、そのなかから最適なものを最終的に課題名として決定する。申請書を提出する直前まで、どれがよいかと悩み、課題名の決定が最後になることも珍しいことではない。 もちろん研究課題名をまず考えて、それから申請書の内容を作っていってもよい。課題名が研究計画全体の象徴になって、課題に関連した研究内容を思い浮かべやすくなる。なお、多くの場合、課題名は電子申請の際の応募情報入力で初めて入力することになる(「Web入力項目(前半)」で記入する)。また、ダウンロードした申請書のなかにも研究課題名を書くところがある。「研究計画最終年度前年度応募を行う場合の記述事項」がそれだが、これは該当するときだけ書く。 研究課題名だけで採択が決まることはないが、よい課題名をつけるに越したことはない。よい課題名の申請書なら、審査委員は課題名を読むだけでその内容に共感するかもしれない。40字以内という制限のなかで、研究内容を簡潔に示した課題名を考えよう。 ## 課題名を読むだけで、研究計画がわかるようなものにする 課題名は申請書全体を代表するものだから、必ず研究計画を表現するものであること。逆に課題名をすぐにはわからないものにして、審査委員に「なんだろう?」と思わせて興味を引く高度なテクニックもあるが、失敗する可能性も大きい。 ## 課題名は簡潔で短いものでも、逆に長いものでもよい **簡潔な課題名の例:** - 「新規小胞体チャネルに関する研究」 - 「カルシウムストアの分子構築に関する研究」 - 「新規受容体蛋白ファミリーの機能解析」 このような簡潔な課題名で採択されるのは、その分野で十分な業績をあげていることが必要である。 **長い課題名の例:** - 「モデル生物の行動を制御する未知の神経ペプチドの同定と機能解析」 - 「内因性の成長ホルモン分泌促進因子グレリンはドーピングの禁止薬物の対象となるか?」 - 「セントロメアタンパク質は細胞の老化を制御する新たな因子となりうるか?」 長い課題名の利点は、課題名自体が研究内容を表す1行のサマリーになっていること。そのため課題名を最初に読むだけで、研究計画の目的を知ることができ、申請書の内容を理解してもらいやすくなる。 ## 専門的・マニアックな語句は避けて、一般的なキーワードを使う 課題名もわかりやすいものにするのがよい。そのためには専門用語はごく一般的なものだけにして、あまり知られていない語句は避けるべきだ。例えば、神経ペプチドの「ニューロメジンU」は一般に知られておらずマイナーなペプチドなので、「ニューロメジンU」という名前をタイトルでは使わず「主観的昼に作用する生物時計同調因子の研究」という課題名で応募したことがある。 ## その他、課題名を考えるときのアイデア 1. **サブタイトルをつける**:コロン「:」、あるいはダッシュ「−」で区切ってサブタイトルを書く。 2. **「新規な〇〇遺伝子」のように新規性を強調する** 3. **そのときの流行りのキーワードを入れる**:例えば最近ならば、ゲノム編集、がん免疫療法、iPS細胞、シングルセル解析、AI、新型コロナウイルス、ビッグデータ、データサイエンスなど。ただし効き目があるかどうかわからないし、逆に「流行を追っているだけ」と判断されてマイナスになることもある。 4. **臨床分野では「〇〇の治療応用」など、治療のことを入れる** 5. **採択された課題名を見る**:課題名はKAKEN(科学研究費助成事業データベース)やそれぞれの大学内の資料などで見ることができ、勉強になる。 > --- > **研究課題名検討のポイント** > > - 研究内容を簡潔に表す課題名にする。 > - いくつか課題名を考えて最適なものを選ぶ。 > - 専門的すぎる語句は避け、一般的なキーワードを使う。 > --- > --- > **Column:どんな申請書が印象に残るか?** > > 科研費の審査委員をやってみると、どんな申請書が印象に残るかがよくわかる。思いつくままに書いていく。 > > **①オリジナルなものをもっている人の申請書** > オリジナルなものとはその人が発見したタンパク質、ホルモン、転写因子、開発したメソッドなど。これは内容に説得力があるし、一貫した研究の流れがあるので、印象に残る。 > > **②よい業績をあげている人の申請書** > 私の専門分野の場合、CNS三大誌に最近掲載されたとなると、いやでも注目してしまう。 > > **③読みやすい申請書、一回読んだだけで理解しやすい申請書** > 申請書の見かけは非常に大切で、きれいな申請書は好印象をもたれる。 > > **④大家や大御所の申請書** > ある分野で大家や大御所といわれる研究者は申請書の書き方がうまい人が多い。研究費もたくさんあって研究もさらに展開するし、それがまた次の申請に生きてくるのだろう。できるなら一度実物の申請書を見せてもらうのがよい。非常に勉強になる。 > > **⑤意外性のある申請書** > 未発表のデータで、自分が今までに知らなかったことを教えてくれるものにはよい印象をもつ。 > ---