--- title: "16. 日本学術振興会特別研究員の申請書について" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 第3章 申請書の書き方 pages: 200-213 images: page_0200.png ~ page_0213.png --- # 16. 日本学術振興会特別研究員の申請書について 日本学術振興会特別研究員(通称:学振、以下では特別研究員)は「優れた若手研究者に、その研究生活の初期において、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与える」ための制度で、「我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者」の育成が目的である。 大学院博士課程(博士後期課程)在学者が対象のDC(Doctoral CourseまたはDoctor's Course。Doctor Courseは和製英語)と、博士の学位を取得時に取得見込みの者のPD(Postdoctoralからきているのだろう)の2つのコースがある。DCはDC1とDC2に分かれ、それぞれ約650~700名と約1,050~1,100名の採用予定数、PDは約350名の採用予定数である。 例年2月上旬に募集要項が公表される。令和8(2026)年度採用分の申請期間は令和7(2025)年4月上旬から6月3日(火曜日)17時(厳守)までであった。 申請書は特別研究員等審査会の審査委員(5名)による2段階書面審査を経て、10月上旬ごろまでに第一次採用内定者の開示が、次年の1月上旬ごろまでに第二次採用内定者の開示が、さらに2月中旬ごろまでに補欠者のなかから採用内定者が開示される。 令和5年の全国の大学院博士課程在籍者数75,841人(文部科学省学校基本調査より)からすると、採択者は「選ばれた者」である。実際に採択率は15.1%(DC1)、17.1%(DC2)、23.4%(PD)(令和6年度のデータによる)と、約4~5倍の高い競争率である。 DCおよびPDの審査方針は、 1. 自身の研究課題設定に至る背景が示されており、かつその着想が優れていること、また、研究の方法にオリジナリティがあり、自身の研究課題の今後の展望が示されていること。 2. 学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること。 3. (PDのみ)博士課程での研究の単なる継続ではなく、新たな研究環境に身を置いて自らの研究者としての能力を一層伸ばす意欲が見られること。 4. (PDのみ)やむを得ない事由がある場合を除き、博士の学位を取得する予定又は博士の学位を取得した研究機関(出身研究機関)を受入研究機関に選定する者、及び大学院博士課程在学当時の学籍上の研究指導者を受入研究者に選定する者は採用しない。 となっている〔令和8(2026)年度採用募集要項より〕。このようにDCとPDでは評価指針が異なる。 **学振特別研究員の募集の概要:** - 学振特別研究員にはDC、PDなどの種目がある。 - 2段階書面審査を経て、第一次、第二次、および補欠の採用内定者が決まる。 - 審査方針はDCとPDでは異なる。 > --- > **Column:ある研究室秘書の「ひとりごと」** > > 毎年、科研費申請とその採択時期になると秘書として「ルンルン気分」になります。また新しい研究課題の申請のお手伝いができますし、私がかかわった申請書が採択されたりすると、研究機関で仕事をしている秘書として自信がもてて、1年更新の非常勤職員ではありますが、やる気も出てきます。自慢ではありませんが、私が今まで携わった申請書の採択率は90%を超えると思います。 > > ある年、10年以上応募資格がなかった先生が、10月16日に着任され、11月はじめに締切りの科研費に3件申請し、見事2件採択されました。その方は研究内容や業績は素晴らしいのですが、10年も大学を離れていたために、e-Radとは? エフォート率とは??の状態でした。締め切りまでの時間がないし、その方にとってはほとんど初めての科研費応募でしたので、私のもつ能力の最大限の力を出し、また巧みな技を使い、3件応募したなかの2件が採択されました! 私が今まで携わって採択された40本近い科研費のなかでも、今までの秘書人生のなかでも、一番嬉しかったできごとです。 > > ここで、この本を熟読されてらっしゃる先生方は多分、「巧みな技」とはどのようなものなか、ぜひ知りたいと思ってらっしゃいますよね? それではお教えしちゃいますね。 > > かなり個人的な考え方ですが、まず、**秘書が読んでもわかるような書き方でないとダメ** だと思います。細目化されている分野に応募するのですが、審査委員の方々は、世の中のすべての研究に目を通しているのではありません。もちろん、自分の分野でもわからないことだらけなのです(多分)。大学院生に頼むのも手ですが、自分の部下になる大学院生に「申請書を読んで」とお願いしても、上司の機嫌を損ねることなんてできませんから、相当仲のよい上下関係じゃないと無理です。ですので、ここは詳しい研究内容を知らない秘書さんにお願いするのが一番なんです! 特に毒舌な秘書さんがおすすめですね。 > > 次に、科研費の申請書は目立つことをした方が勝ちだと思います。現在、いくつかの種目ではカラーを使うことも可能になっていますが、本書の読者が申請する種目の大半が白黒ですよね。だから、ココが重要というところには、**この新規の物質をわれわれが発見した。** なんて、裏技をつかっちゃうんです。もちろん、フォントをボールドにするのは当たり前ですが、明朝体を使っていて、ここだけゴシックというのもありです。 > > また、業績欄が少し寂しい方は、自分の論文を発表している雑誌の号の表紙をこの欄にもってきたりするのも1つの手だと思います。もちろんインパクトファクターの高い雑誌が好印象です。 > > ともかく、先生方にぜひともお伝えしたいのは、もう少し秘書を利用してほしいということです。それも上手にほめながら仕事を頼んでもらえると、とってもテンション上がります。例えば、「僕、文章下手でさぁー、科研費の申請書って、秘書さんとかが読んでもわかるような内容の書き方をした方が採択されやすいんだって、ぜひ〇〇さんに読んでもらって、内容でわかりにくいところとか、チェックしてもらえると、助かるんだけど」とか、「業績部分、タブとか設定がわかんないんだぁ、〇〇さんいつもきれいに整えてくれるからぜひ、今回もお願い!」とか、たくさんほめながら仕事を頼んでみてください。きっと心をこめて丁寧に仕上げてくれると思います。それに採択されたときは予算の使い方など、秘書さんに調べてもらわないといけませんからね。なにはともあれ、秘書さんを大事にしてくださいね。 > --- ## 申請書の書き方 さてその特別研究員の応募書類だが、いくつかの項目で科研費申請書と似た部分がある。特別研究員の審査方針にも、「自身の研究課題設定に至る背景が示されており、かつその着想が優れていること。また、研究の方法にオリジナリティがあり、自身の研究課題の今後の展望が示されていること」とあり、これらは科研費申請書の評価基準と一致する。また申請書中の「【2】研究計画」のなかの「(1)研究の概要及び研究の位置づけ」の「研究課題名」「研究の概要」「当該分野の状況や課題等の背景」「本研究計画の着想に至った経緯」、「(2)研究目的・内容等」の「研究目的、研究方法、研究内容」「何を、どこまで明らかにしようとするのか」「研究の特色・独創的な点」などの項目は科研費申請書とほぼ同じだが、その一方で、個々の項目の記載順は科研費とは少し異なる。また「【4】研究遂行力の自己分析」のなかの「これまで携わった研究活動における経験などを踏まえ、研究遂行力について分析」は、科研費申請書の「応募者の研究遂行能力」の「これまでの研究活動」とほぼ同じだが、枠外の注意書きにある「今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」は特別研究員ならではの項目である。さらにPDにおいては「(3)受入研究室の選定理由」の項目がある。 科研費の申請書と同じく、特別研究員の申請書の様式も変更されることがあるので、申請書を作成するときには必ず応募年度の申請書をチェックすること〔実際に、本書を書いているときに発表された令和8(2026)年度の募集要項で申請書の様式に変更があった〕。特に科研費申請書の様式が変更されたときに、それに沿って変更されることがある。 おそらく特別研究員に応募する者は、このような申請書を書くのが初めてではないだろうか? そのため、何を書いていけばいいのか、またどのようにページを埋めていったらいいのか、わからないことが多いことだろう。このようなときには、大きな部分を小さく分けて書いていくとよい。 また「適宜概念図を用いるなどして」とあるように、図表を使って説明するのは非常に効果的なので、図表の活用をお勧めする。 私の研究室からはこれまでに2名が特別研究員に採用された。彼らとのこれまでの応募経験と、特別研究員について個人的に勉強してきたことをもとにして、申請書の各項目を書いていくうえでの要点をまとめた。 特別研究員の申請書のフォーマットに沿って見ていこう。なお、実際のフォーマットは「申請書情報」「申請者情報等」からはじまるが、ここでは省略する。 ### 「【2】研究計画」の「(1)研究の概要及び研究の位置づけ」 この項目は科研費申請書では、「研究目的、研究方法など」の「概要」「(1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」」および「(3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ」に相当する。 DC/PDとも500字の「研究の概要」とともに、「研究の位置づけ」として「当該分野の状況や課題等の背景」「本研究計画の着想に至った経緯」を1ページにまとめる(図3-85)。 まず最初に500字程度で概要を書くようになっている。しかし基盤研究や若手研究の申請書の書き方と同じく〔参照3章3:研究目的、研究方法など -- この欄の全体像〕、他の部分ができあがってから概要をまとめるのがよい。それは「概要」は全体のサマリーだからである。 そして概要は「研究の背景と問い」「研究目的」「研究の展開・応用」で構成するのがよい。そのなかで「この研究では何をしようとするのか」と「それがなぜ重要なのか」をしっかりと示すことだ。 「当該分野の状況や課題等の背景」では、提案する研究テーマに関してのこれまでの研究の流れや、問題点(=学術的「問い」)、そしてこの計画がなぜ重要なのかを示す。そして「本研究計画の着想に至った経緯」では、申請者がどのようにこの研究計画を思いついたのかを書いていく。 > **図3-85の説明:** 平成27年度の特別研究員(DC)の申請書の実例をもとに、令和8年度の申請フォーマットに移し替えて改変したもの。最初に500字程度の概要を書く。概要は全体のサマリーなので、全体ができあがってから最後に書くこと。項目を分けて書き、図を入れる。研究計画に関連した重要な文献をあげる。 ### 「【2】研究計画(続き)」の「(2)研究目的・内容等」 科研費申請書の「研究目的、研究方法など」の「(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性」「(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」などに相当する。 「(2)研究目的・内容等」では記載すべき内容が多く、読みやすいように(それが理解しやすさにつながる)工夫して書いていかなければならない。ここにあげた例では全体をいくつかの部分に分けて小見出しを付け、それぞれの項目に何が書かれているのかがわかるように意図した(図3-86)。 「研究目的」では、一番重要な「研究目的」を太字にしてアピールした。 「研究方法」と「研究内容」の違いを書き分けるのは難しい。ここでは両方を1つの項目にして、どのような戦略で研究を進めていくのか、その一般的なことを書いていった。そして具体的な研究の進め方を次の「どのような計画で、何を、どこまで明らかにしようとするのか」にまとめた。 「研究の特色・独創的な点」を示すために、「先行研究等との比較」では、この研究テーマの研究がなぜうまくいっていないのかを説明した。「本研究の完成時に予想されるインパクト」では、なぜこの研究が重要なのか、何が新しい点なのかをアピールした。「将来の見通し等」では、この研究を行うことで、どのような展開・応用が期待されるのかを書いた。 > **図3-86の説明:** 平成27年度の特別研究員(DC)の申請書の実例をもとに、令和8年度の申請書フォーマットに移し替えて改変したもの。記載項目が多いので工夫して書く。研究目的を太字にしてはっきり引き立てる。図を入れる。項目を分けて書く。研究方法と内容は次ページへ続く構成。 ### 「(3)受入研究室の選定理由」(PDのフォーマットのみ) 受入先の研究室をなぜ選定したのか、その理由をきちんと書いておく必要がある。その研究室でないと研究が進まない理由、そこに行くことで研究が画期的に進展する可能性が大きいことなど、しっかりと説明すること。これまで同じ研究機関内での別の研究室への移動でも可能だったのが、「博士の学位を取得する予定又は博士の学位を取得した研究機関(出身研究機関)以外の研究機関を選定すること」と、原則必ず別の研究機関に移動しなければならなくなった。また、「実質的な研究機関移動」と認められるかどうかは採択の重要な判断基準になるので募集要項をよく読んで注意する。 ### 「【3】人権の保護及び法令等の遵守への対応」 科研費申請書の「人権の保護及び法令等の遵守への対応」に相当する。 個人情報に関する研究、遺伝子組換え実験、動物実験など、研究機関で倫理委員会やその他の委員会の承認があらかじめ必要なものは、きちんと対応しておけば問題はない(図3-87)。 > **図3-87の説明:** 平成27年度の特別研究員(DC)の申請書の実例を令和8年度のフォーマットに移し替えたもの。研究機関での手続き等を忘れずに。 ### 「【4】研究遂行力の自己分析」 #### (1)これまで携わった研究活動における経験などを踏まえた研究遂行力の分析 科研費申請書の「応募者の研究遂行能力」に相当する。 申請書の注意書きには「これまでの研究活動の成果物(論文等)がある場合には、まず成果物の一覧表を掲載し、見出し番号を付してください」とある。そして「文章では、適宜成果物に言及しながら(言及の際には見出し番号で示すこと)記入してください」と書かれている。この項目は、この指示にしたがって書いていけばよい。 科研費と同じように、この部分は単に業績リストを書くためにあるのではなく、申請者の「研究遂行能力」を示すためのものだ。これまでの論文発表や学会発表の内容が、今回の研究計画にどのように活かされているのかをしっかりと示そう。また論文発表などの研究業績は特別研究員採択のために必須といわれているが、大学院生の場合には研究業績がほとんどない場合も多い。私の研究室の例では、大学院生の場合は筆頭著者の英文論文がなくても採択されているが、業績はあるに越したことはない。この欄では、論文(第二著者以下のものでもよい)、総説、学会発表など、小さなものでもよいので記入しておこう(図3-88)。その他には、大学などで表彰を受けたことや民間財団の研究助成獲得の実績などを書いて「研究遂行能力」をアピールしよう。 > **図3-88の説明:** 本項目は科研費と同じく、単に「研究業績」を書くのではなく「研究遂行能力」を示すためのものに変更された。そのため、見本は平成27年度の特別研究員(DC)の実例をもとにして、令和8年度の申請書に合わせて修正したもの。成果物(論文等)を一覧にまとめておく。成果物を見出し番号で示す。最初に要約を書いておく。論文や総説の情報だけでなく、中身について簡単に触れておく。 #### (2)今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素 ここには申請書の説明文(「申請書を作成する際には消去してください」と書かれているところ)にあげられている例から、いくつか当てはまるものを書いていけばよい(図3-88の2ページ目)。例としてあげられているのは、研究における主体性、発想力、問題解決力、知識の幅・深さ、技量、コミュニケーション力、プレゼンテーション力などである。これらについて「具体的に記入」「観点を項目立てするなど、適宜工夫して記入」していけばよい。 **「具体的に記入」するには、自分の欠点や足りないものを正直に隠さずに書くことだ。** 若手研究者なのだから、欠点や足りないものがあって当然。むしろそれらを自覚していると評価されるかもしれない。恥ずかしがらず堂々と書いていこう。 ### 「申請者に関する評価書」(指導教官が作成する) ここには評価書作成者からみた申請者の「(1)研究者としての強み」と「(2)今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」について記載する。これらの項目は「【4】研究遂行力の自己分析」の記載項目とほぼ同じである。つまり申請者自身と評価書作成者(おそらく指導教官だろう)が、主観的客観的に別々にこれらの項目について書くということだ。 申請者を悪く書く指導教官はいない。あるいは申請者の立場からは、自分を悪く書くような指導教官には評価書を頼まない。評価書の内容がいくらよくても、研究内容があまりよくないものは採択されないだろうが、やはりよい評価書があるに越したことはない。評価書を書く者の腕のみせどころである。 記載内容に求められているのは、申請者の研究における主体性、研究の進捗状況、発想力、問題解決能力、専門知識・技量、コミュニケーション能力、将来性、研究の独創性または特色などである。評価書作成者には申請者の未来を予見する能力が求められているようだ。 多くの評価書は当たり障りのない、申請者が誰であってもそのまま使えるような内容になりがちだ。例えば、以下のように、 - 毎日コツコツ実験を積み重ねる努力家で、忍耐強く実験を行い、優れた研究成果をあげた - 自分の研究分野だけでなく、他の関連分野の知識も豊富で、よく勉強している - 着想力や想像力が豊かで、研究チームとのコミュニケーションも良好である - 学業成績優秀で、将来性豊かである このように書かれた評価書では、申請者の人物像は審査委員にはあまり印象に残らない。では、どのような評価書が印象に残るだろうか? 私はできるだけ **その申請者にまつわる具体的なエピソードを入れて書く** ようにしている。研究室(あるいは日常生活)でのできごとについて、その人物がどのように対応したのか、どのような行動をしたのか、などを書く。他の誰でもない、その申請者ならではのエピソードから、申請者の研究姿勢や能力などが浮かび上がるようにする。もちろんこのような書き方は難しいだろうが、当たり障りのない評価書よりも、はるかに印象に残ると思う。例えば、以下のように。 > 現在行っている研究を進めるために、どうしても他施設に人を派遣して、そこで実験を進めなければならなくなりました。数カ月とはいえ、遠方への移動は大変です。このような頼みにくいことに対して〇〇くんは「先生、ぼく行きます」と二つ返事で引き受けてくれたのです。〇〇くんのこの決断のおかげで研究は大いに進展しました。このようなエピソードからも〇〇くんの研究に対する、積極的な取り組みや、決断力、実行力などがうかがえると思います。 また実際に苦労した研究内容などを、例えば何回くらい実験を繰り返したかとか、論文投稿でのリバイスの回数など、具体的な数字を使って書くのも印象に残る。 - この論文審査には4回ものリバイスと追加実験があったが、〇〇くんはすべての休日を返上し、忍耐強くレフリーの要求に答えた。 - 申請者は根気強く42種類もの変異体を作製し、細胞内情報伝達系の解析を網羅的に行うことで、受容体との選択的共役部位を特定した。 日本学術振興会特別研究員は研究者として成長していくのに重要なステップである。将来の科研費応募への練習の意味もあるので、応募できる方はぜひトライしてほしい。 なお、Dr. クラゲさん(本名は貴人さん)という方が、YouTubeで「学振必勝講座」を公開している。2020年3月当時、東京大学大学院理学系研究科生物学専攻・国立科学博物館に在籍しておりDC2に採用されていた(2025年3月現在、福山大学の講師をされている)。この動画も参考にしてみるとよいかもしれない。 ## 学振の申請書の書き方のまとめ - これまでに行ってきた研究が、申請した研究計画にどのようにつながるのかを示す。 - なぜ自分の研究が重要なのかをしっかりと書く。 - 図表を活用して、わかりやすくする。 - 受入先の研究室を選定した理由をはっきりと示す。 - 自己評価や評価書は具体的なエピソードを入れて印象に残るようにする。 > --- > **Column:審査委員経験者からの申請書に対するアドバイス** > > 科研費の審査委員がどのように申請書を評価しているのか、ほとんどの人にはわからないだろう。私自身も、知り合いから立ち話程度に聞くくらいしか他の審査委員の評価方法がわからない。以下は匿名の審査委員経験者から寄せられた申請書に対してのアドバイスである。 > > **審査委員Aさんのアドバイス** > > 審査委員といえども、申請者と全く同じ専門領域である可能性は少ないため(ある意味申請者よりもその分野の素人の可能性あり!)、丁寧に研究の重要性をアピールしよう。税金を投入する意味のある研究であることをアピールしよう。それには国語力が必要になる。具体的には、 > > 1)目的を明確に書こう > > 2)研究目的や研究計画の学術的背景を引用論文をあげてきちんと書こう。書かれている背景が学術的根拠の薄いものであったり、申請者の思い込みである場合がかなりある。また、「〇〇〇のニューロンでの作用はよく知られているが、グリア細胞での作用は調べられていない」という研究背景では、研究計画の重要性が審査委員には伝わってこないので、当然評価は低くなる。 > > 3)応募者の研究遂行能力欄。以前の研究テーマと異なるテーマで申請する際には、応募課題に関連するものに限らず、以前の研究テーマでの研究業績を書くこと。そうでないと、申請者に研究計画遂行能力があるのかどうか、審査委員が判断できない。何も書いていないと、研究計画遂行能力がないと判断されてしまう。 > > 4)申請書の形式に沿って書こう。審査委員が申請者と研究分野がかなり異なる場合には、審査委員が申請書(きちんと書かれていても)を理解できないことがある。その場合、審査委員によっては、形式的な審査をする可能性がある。例えば、申請書には、箇条書きで記載する項目を説明しているところがあるが、箇条書きの1つを無視しただけで、非採択判定する審査委員もいる。それゆえ、申請書の形式に沿って書いた方が無難である。 > > 5)申請書は平易な文章で書こう。本書で散々述べられている通りである。 > > **審査委員Bさんのアドバイス** > > もちろん、私とは違った観点から審査する方もいるはずです。なぜなら私が総合評点で2を付けた申請者が採択されている場合も少なからずあるからです(4を付けた申請者が不採択のこともあり)。 > > もう面倒になって業績だけで決めてしまう審査委員、いそうですよねー、ということを考えれば、研究遂行能力欄の充実は必須です。審査した申請書で気づいた点は、 > > 1)自立性の欠如。(1)テーマが明らかに元ボスの焼き直しで発展性に欠ける。(2)計画通り行かない場合は「元ボスに助言を仰ぐ」と堂々と書く、恥ずかしいぞ! (3)共同研究者が多すぎ(何でも他人に頼む申請者。で、あなたならではの得意領域は何?)。 > > 2)実験方法と計画に具体性がない。(1)実験方法が平凡で独自の工夫に欠ける。(2)計画内容と人員が明らかに対応しない。1人でそれをすべてできるのだろうか? 実験補助を雇用するとか学生人数を具体的に記述するべき。(3)うまくいかない場合の対処法がない。 > > 3)何でも外注。院生がこんなにもいるのに、こんな程度のことさえ外注? > > 4)国民の税金を使っていることを意識していない。国民に還元する方法の箇所が空白、もしくは特許のことだけとか、学会や論文発表のことしか書いていない。 > > 5)そのテーマに関する世界の情勢を自分の都合のよいように書いてしまっている。真面目な審査委員は、PubMedで調べながら審査しているので、わかってしまうのだ。 > > 6)1の自立性とも関連するが、申請者の核となる成果が非常に少ない。つまり、共同研究ばかりで申請者はいわば部品のような役割しかしていない。 > ---