--- title: "実際に採択された申請書② 挑戦的研究(萌芽)の例" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 付録 pages: 299-310 images: page_0299.png ~ page_0310.png --- # 実際に採択された申請書② 挑戦的研究(萌芽)の例 この見本は令和5(2023)年度に採択された挑戦的研究(萌芽)の申請書を令和7(2025)年度公募のフォーマットに変更したものである。といっても、申請書上の注意書きの更新や、「研究費の応募・受入等の状況」がPDF化されなくなったことに合わせて電子申請システム上の入力イメージを見本にしただけで、内容についてはいっさい変更していない。これは私にとって異分野の「中区分53:器官システム内科学およびその関連分野」への応募だった。以前採択された研究テーマでまだ未解決だったものを、最新の手法を用いてチャレンジするものに書き換え、また最新の研究業績を大いにアピールした。挑戦的研究は採択率が低いが、きちんと評価してもらえれば、なんとかなるのではないかと思っていたところ、無事に採択された。 なお、各種目の申請書に対して、どのようなことをどのような割合で書いていくとよいのか、その目安を羊土社ホームページ(https://www.yodosha.co.jp/kakenhi/)のなかの「研究種目別『申請書の構成案』」で紹介している。 ## 実際に採択された申請書② 項目一覧 | 項目 | ページ | |------|------| | 1)Web入力項目(前半)※電子申請時に入力 | | | ・申請者と研究課題の情報 | p.300 | | ・研究組織 | p.301 | | 2)申請書(研究計画調書) | | | ・研究計画調書の概要 | p.302 | | ・研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力 | p.304 | | ・挑戦的研究としての意義(本研究種目に応募する理由) | p.306 | | ・人権の保護及び法令等の遵守への対応 | p.307 | | 3)Web入力項目(後半)※電子申請時に入力 | | | ・研究経費とその必要性 | p.308 | | ・「研究費の応募・受入等の状況」のWeb入力イメージ | p.310 | --- ## 1)Web入力項目(前半)※電子申請時に入力 ### 申請者と研究課題の情報 > 令和5(2023)年度 挑戦的研究(萌芽)研究計画調書 | 項目 | 内容 | |------|------| | 研究種目 | 挑戦的研究(萌芽) | | 中区分 | 器官システム内科学およびその関連分野 | | 研究代表者 氏名 | 児島 将康(コジマ マサヤス) | | 所属研究機関 | 久留米大学 | | 部局 | 付置研究所 | | 職 | 教授 | | 研究課題名 | 腸管上皮幹細胞マーカーLGR5の内因性リガンドの探索 | | 開示希望の有無 | 審査結果の開示を希望する | **研究の要約:** LGR5は消化管上皮の幹細胞マーカーとして知られており、内因性リガンドが不明なオーファンGPCRである。LGR5は(および、その内因性リガンドは)幹細胞の維持や増殖分化に関与すると考えられている。本研究の目的は、LGR5の内因性リガンドのペプチドホルモンを発見し、腸管上皮幹細胞の維持や増殖分化における作用を明らかにして、消化管粘膜の再生医療への応用を展開することである。今回、LGR5に類似したショウジョウバエの受容体とその内因性リガンドの情報や、タンパク質データベースの検索方法の工夫、また申請者がこれまでに使ってきたオーファンGPCRのアッセイ方法などを組み合わせて、LGR5の内因性リガンドの新しい探索方法を着想した。LGR5の内因性リガンドが発見されれば、構造が類似し、やはり幹細胞マーカーであるLGR4とLGR6の内因性リガンドについても大きな情報が得られ、結合するペプチドホルモンの正体が明らかになると思われる。そして、LGR4~6の内因性リガンドが発見されれば、発生・再生の研究分野へ大きな貢献ができると期待される。 **研究経費(千円)** | 年度 | 研究経費 | 設備備品費 | 消耗品費 | 旅費 | 人件費・謝金 | その他 | |------|---------|---------|---------|------|-----------|------| | 令和5年度 | 3,000 | 0 | 2,650 | 50 | 300 | 0 | | 令和6年度 | 1,000 | 0 | 850 | 50 | 100 | 0 | | 令和7年度 | 1,000 | 0 | 700 | 100 | 100 | 100 | | **総計** | **5,000** | **0** | **4,200** | **200** | **500** | **100** | > ※この申請書の例は、令和5年度の挑戦的研究(萌芽)に採択されたものを令和7年度の様式に変更したものだが、申請書中の年度や西暦は基本的に当時のままとしてある。 ### 研究組織 **研究組織(研究代表者及び研究分担者)** | 氏名(年齢) | 所属研究機関・部局・職 | 学位 | 役割 | 研究経費(千円) | エフォート(%) | |-------------|-------------------|------|------|--------------|-------------| | 児島 将康(コジマ マサヤス) | 久留米大学・付置研究所・教授 | 医学(博士) | 研究全般 | 3,000 | 20 | 合計1名 研究経費合計 3,000 --- ## 2)申請書(研究計画調書) ### 研究計画調書の概要 > 挑戦的研究(萌芽)概要1~2 > > **研究計画調書の概要** > > 研究計画調書に記載した「1 研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力」「2 挑戦的研究としての意義(本研究種目に応募する理由)」について、その概要を2頁以内で簡潔にまとめて記述すること。 > > ※本研究種目では本欄に研究計画調書(Web入力項目)の前半部分を加えた「研究計画調書(概要版)」のみによる事前の選考を行う(応募件数が少ない審査区分では、事前の選考は行わない)。本様式は面審査では参照できないため注意すること。 #### 【本研究の目的】 LGR5(Leucine-rich repeat-containing G-protein-coupled receptor 5)は消化管上皮の幹細胞マーカーとして知られており、内因性リガンドが不明なオーファンGPCRである。本研究の目的は、LGR5の内因性リガンドのペプチドホルモンを発見し、腸管上皮幹細胞の維持や増殖分化における作用を明らかにして、消化管粘膜の再生医療への応用を展開することである。 #### 【研究の背景】 **(LGR5は内因性リガンドが不明のGPCRである)** LGR5は消化管において陰窩底部のPaneth細胞の間に散在するcrypt base columnar(CBC)細胞に特異的に発現しており、このCBC細胞は腸管上皮の様々な細胞に分化増殖していくことから、腸管上皮幹細胞であることが明らかになっている。LGR5は腸管上皮の幹細胞マーカーであるが、分子としての実態は内因性リガンドが不明な(つまりオーファン=孤児)GPCRである。LGR5のノックアウトマウスは発生段階で致死性となることから、LGR5は(および、その内因性リガンドは)幹細胞の維持や増殖分化に関与すると考えられている。 LGR5は構造の似通ったLGR4およびLGR6と3つの受容体でファミリーを形成している。その構造はLH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)やTSH(甲状腺刺激ホルモン)の受容体であるLGR1~3や、リラキシンの受容体であるLGR7~8に類似していることから、LGR5の未同定の内因性リガンドもペプチドホルモンと考えられている。 **(LGR5はショウジョウバエのdLGR2に類似)** ヒトとショウジョウバエでは生存に必須なタンパク質は共通であることが多く、ショウジョウバエの研究から、ヒトの研究に結びつく例も多い。申請者の経験からも、ヒトとショウジョウバエの間で、リガンドの構造的特徴や機能が保持されている例が多い。 そして、ヒトとショウジョウバエのLGRファミリーは相同性が高く、そのリガンドも相同性が高い。例えばヒトLGR1~3とそのリガンド(LH/CG, FSH, TSH)との関係は、ショウジョウバエのdLGR1とGPA2/GPB5の関係に等しく、LGR7~8とそのリガンドのリラキシンとの関係は、dLGR3とインスリン様ペプチド8との関係に等しい。ヒトのLGR4~6だけは内因性リガンドが不明であるが、LGR5(LGR4とLGR6も含めて)に対応するショウジョウバエのdLGR2のリガンドは、バーシコン(bursicon)というヘテロダイマー(bursとpbursのヘテロダイマー)のペプチドホルモンである。バーシコンはショウジョウバエ表皮の硬化や色素沈着を起こすホルモンである。 | ヒト受容体 | ヒトリガンド | ショウジョウバエ受容体 | ショウジョウバエリガンド | |-----------|-----------|-------------------|-------------------| | LGR1 | LH/CG | dLGR1 | GPA2/GPB5 | | LGR2 | FSH | | | | LGR3 | TSH | | | | LGR4 | ? | dLGR2 | バーシコン | | LGR5 | ? | | | | LGR6 | ? | | | | LGR7 | リラキシン | dLGR3 | Ilp8 | | LGR8 | リラキシン | | | このようにLGR5にアミノ酸配列が似たショウジョウバエdLGR2の内因性リガンドがbursとpbursのヘテロダイマーのバーシコンであることから、LGR5の内因性リガンドも、burs/pbursに類似したペプチドのヘテロダイマーである可能性が考えられた。 そこでアミノ酸配列や構造的特徴がバーシコンに類似したヒトのペプチドを、タンパク質データベースから選び出し、2種類の組み合わせで培養細胞にヘテロダイマーとして発現させる。そして発現させたヘテロダイマーのペプチドをLGR5に作用させるアッセイ系を使って、目的とするLGR5の内因性リガンドを見つけ出す計画を着想した。 **(タンパク質データベースにはbursiconに類似したヒトのペプチドが14種類存在する)** バーシコンを形成するbursおよびpbursに類似したヒトのペプチドには、gremlin、PRDC(Cerberus)、Coco、DAN、USAG1、SOST、およびvon Willebrand factor(VWF)と分泌型ムチン(4種)のC末端部分や、norrin、nogginの合計14種類のペプチドがあった。 **(培養細胞を使ってヘテロダイマーとしてタンパク質を発現させ、アッセイに用いる)** 14種類の候補ペプチドの発現ベクターを作成する。そこから2種類ずつの組み合わせを選び、それぞれ同量の発現ベクターをHEK293細胞にトランスフェクションして、ヘテロダイマーとして発現させる。予備的な検討では、発現量は14μg/4mL培養液程度あり、アッセイを行うのに十分な量であった。現在、合成したリガンド候補ヘテロダイマーは、LGR5安定発現株へ作用させてcAMP活性を確認し、内因性リガンドの候補を絞り込みつつある。 申請者らの現時点の予備実験の結果から、LGR5の内因性リガンドは、哺乳類のバーシコン類似ペプチドのヘテロダイマーよりも、さらに複雑なコンプレックスを形成したタンパク質分子ではないかと考え、現在、さらに検討を進めている。 #### 【応募者の研究遂行能力】 申請者は、リガンド不明のオーファンGPCRをターゲットにして未知のペプチドホルモンの探索を行い、これまでにグレリンをはじめとして、いくつかの新しいペプチドホルモンを発見してきた。グレリンは胃から分泌される成長ホルモン分泌刺激活性および摂食亢進作用を示すペプチドホルモンである。申請者らによるグレリン発見論文は被引用回数が7,128件、グレリンに関する発表論文は12,003編と(2022年9月現在)活発な研究が行われている。 #### 【挑戦的研究としての意義】 **(申請者はこれまでLGR5の内因性リガンド探索に取り組んできた)** 申請者はこれまでLGR5の内因性リガンド探索に取り組んできており、消化管組織の抽出物から探索を行ってきたが(2011~2012年度の挑戦的萌芽研究:消化管幹細胞に作用する新しいペプチド・ホルモンの探索と腸管粘膜再生への応用)、その同定までには至らなかった。その理由として、従来の方法ではリガンドが変性して効率よく抽出されていないこと、内因性リガンドが幹細胞のある一定の時期にしか発現されないこと、幹細胞自体の数が少ないためリガンドの存在量が極めて少ないこと、などが推測されている。 そこで申請者らは、哺乳類のLGR5がショウジョウバエのdLGR2にホモロジーが高いのならば、その内因性リガンドもショウジョウバエのバーシコンにホモロジーが高いと考え、本研究計画を構想した。 **(未知のリガンドを発見する意義)** 生体内には内因性リガンドが不明な(オーファン)GPCR(Gタンパク質共役型受容体)が数多く存在し、そのリガンドの同定は未知の生理作用の解明や、治療薬の開発などにつながる。実際に申請者が発見したグレリンについては、グレリン様作用を持つ低分子アゴニスト(アナモレリン)が「がん悪液質」の治療薬として2021年より臨床応用されている。このようにオーファンGPCRの研究から発見された内因性リガンドは、その生理作用の解明から治療薬への応用につながることが多く、未知の内因性リガンドを発見する意義は非常に大きい。 LGR5は消化管上皮や毛包の幹細胞マーカーとして知られていることから、その内因性リガンドは幹細胞の維持や増殖分化に対する作用が想定されている。本研究によってLGR5の内因性リガンドが発見されれば、再生医学分野へ大きな貢献ができると期待される。 > ※上記の項目は「概要版」という別ファイルにまとめることになっており、応募数が多いときだけ、事前選考(プレスクリーニング)に使用される。 --- ### 研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力 > 挑戦的研究(萌芽)1~2 > > **1 研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力** > > 本研究種目は審査区分表の「中区分」で審査される。記述に当たっては広い分野構成で多角的視点から審査が行われることに注意すること。 > ① 本研究の目的 > ② その研究目的を達成するための研究方法(研究体制を含む) > ③ 応募者の研究遂行能力 > について、2頁以内で焦点を絞って具体的かつ明確に記述すること。 #### ① 本研究の目的 LGR5(Leucine-rich repeat-containing G-protein-coupled receptor 5)は消化管上皮の幹細胞マーカーとして知られており、内因性リガンドが不明なオーファンGPCRである。本研究の目的は、LGR5の内因性リガンドのペプチドホルモンを発見し、腸管上皮幹細胞の維持や増殖分化における作用を明らかにして、消化管粘膜の再生医療への応用を展開することである。 **(腸管上皮幹細胞マーカーLGR5は内因性リガンドが見つかっていないGタンパク質共役型受容体である)** LGR5は消化管において陰窩底部のPaneth細胞の間に散在するcrypt base columnar(CBC)細胞に特異的に発現しており、このCBC細胞は腸管上皮の様々な細胞に分化増殖していくことから、腸管上皮幹細胞であることが明らかになっている。この結果から、LGR5は腸管上皮の幹細胞マーカーとして研究に使われているが、LGR5の分子としての実態は内因性リガンドが不明な(つまりオーファン=孤児)GPCRである。LGR5のノックアウトマウスは発生段階で致死性となることから、LGR5は(および、その内因性リガンドは)幹細胞の維持や増殖分化に関与すると考えられている。 このLGR5はロイシンリッチな繰り返し配列を細胞外ドメインに有するGPCRで(Barker et al. Nature 2007)、構造の似通ったLGR4およびLGR6と3つの受容体でファミリーを形成している。その構造はLH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)やTSH(甲状腺刺激ホルモン)の受容体であるLGR1~3や、リラキシンの受容体であるLGR7~8に類似していることから、LGR5の未同定の内因性リガンドもペプチドホルモンと考えられている。 2011年にR-spondinがLGR5の内因性リガンドとして報告された。しかし、R-spondinはセカンドメッセンジャーのcAMP上昇を刺激しないこと、またR-spondinの結合部位から、R-spondinは受容体を活性型に変換することはできないため、現在ではR-spondinがLGR5の内因性リガンドであることに対しては否定的な意見が多い。 申請者は食欲を刺激するホルモンのグレリンを発見した後から、このLGR5の内因性リガンドを発見したいと考えてきた。そして腸管の組織抽出物からの探索を継続して行ってきたが、残念ながら内因性リガンドの発見には至っていない。 そこで今回、LGR5に類似したショウジョウバエの受容体とその内因性リガンドの情報や、タンパク質データベースの検索方法の進歩、また申請者がこれまでに使ってきたオーファンGPCRのアッセイ方法などを組み合わせて、LGR5の内因性リガンドの新しい探索方法を着想した。 #### ② その研究目的を達成するための研究方法 **(LGR5はショウジョウバエのdLGR2に類似している)** ヒトとショウジョウバエでは生存に必須なタンパク質は共通であることが多く、ショウジョウバエの研究から、ヒトの研究に結びつく例も多い。申請者はこれまで哺乳類だけでなく、ショウジョウバエからも新しいペプチドホルモンを発見してきた。その経験から、ヒトとショウジョウバエで、リガンドの構造的特徴や機能が保持されている例が多いことに気づいた。 ヒトとショウジョウバエのLGRファミリーは相同性が高く、そのリガンドも相同性が高い。例えばヒトLGR1~3とそのリガンド(LH/CG, FSH, TSH)との関係は、ショウジョウバエのdLGR1とGPA2/GPB5の関係に等しく、LGR7~8とそのリガンドのリラキシンとの関係は、dLGR3とインスリン様ペプチド8との関係に等しい。ヒトのLGR4~6だけは内因性リガンドが不明であるが、LGR5(LGR4とLGR6も含めて)に対応するショウジョウバエのdLGR2のリガンドは、バーシコン(bursicon)というヘテロダイマー(bursとpbursのヘテロダイマー)のペプチドホルモンである。バーシコンはショウジョウバエ表皮の硬化や色素沈着を起こすホルモンである。 このようにLGR5にアミノ酸配列が似たショウジョウバエdLGR2の内因性リガンドがbursとpbursのヘテロダイマーのバーシコンであることから、LGR5の内因性リガンドも、burs/pbursに類似したペプチドのヘテロダイマーである可能性が考えられた。 そこでバーシコンにアミノ酸配列のホモロジーの高いヒトのペプチドを、タンパク質データベースから選び出し、2種類の組み合わせで培養細胞にヘテロダイマーとして発現させる。そして発現させたヘテロダイマーのペプチドをLGR5に作用させるアッセイ系を使って、目的とするLGR5の内因性リガンドを見つけ出す計画を着想した。 **(タンパク質データベースにはbursiconに類似したヒトのペプチドが14種類存在する)** ヘテロダイマーのバーシコンを形成するbursおよびpbursは、ヒトのbone morphogenic protein(BMP)アンタゴニストである7種のペプチドホルモン(gremlin、PRDC、Cerberus、Coco、DAN、USAG1、SOST)と系統発生的に近似している。これら7種のBMPアンタゴニストとbursおよびpbursはアミノ酸配列上のシステイン結合の位置が類似しており、AIによる立体構造予測プログラムのAlphaFoldで予測された立体構造も類似している。さらにこれら7つのペプチドホルモンに加えて、von Willebrand factor(VWF)と分泌型ムチン(4種)のC末端部分や、norrinおよびnogginと呼ばれるペプチドホルモンのシステイン結合の位置もbursやpbursに類似している。現時点ではこれら14種類のペプチドがburs/pburs類似の哺乳類ペプチドである。 **(培養細胞を使ってヘテロダイマーとしてタンパク質を発現させ、アッセイに用いる)** 目的のペプチドの全長をコードするcDNAをPCRによって増幅し、14種類の発現ベクターを作成する。そこから2種類ずつの組み合わせを選び、それぞれ同量の発現ベクターをHEK293細胞にトランスフェクションして、ヘテロダイマーとして発現させる。予備的な検討では、発現量は14μg/4mL培養液程度あり、アッセイを行うのに十分な量であった。現在、合成したリガンド候補タンパク質は、LGR5安定発現株へ作用させてcAMP活性を確認し、内因性リガンドの候補を絞り込みつつある。現時点の予備実験の結果から、LGR5の内因性リガンドは、哺乳類のバーシコン類似ペプチドのヘテロダイマーよりもさらに複雑なコンプレックスを形成したタンパク質分子ではないかと考えている。確証には至っていないが、現在、さらに検討を進めている。 #### ③ 応募者の研究遂行能力 申請者は、リガンド不明のオーファンGPCRをターゲットにして未知のペプチドホルモンの探索を行い、これまでにグレリンをはじめとして、いくつかの新しいペプチドホルモンを発見し、その機能を解明してきた。グレリンは胃から分泌される成長ホルモン分泌刺激活性および摂食亢進作用を示すペプチドホルモンである。申請者らによるグレリン発見論文は被引用回数が7,128件、グレリンに関する発表論文は12,003編と(2022年9月現在)活発な研究が行われている。このように申請者は未知のペプチドホルモンを発見し、その機能解析を行ってきた十分な経験を有している。 --- ### 挑戦的研究としての意義(本研究種目に応募する理由) > 挑戦的研究(萌芽)3 > > **2 挑戦的研究としての意義(本研究種目に応募する理由)** > > 本研究種目は、これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させる潜在性を有する挑戦的研究を募集するものである。 > ① これまでの研究活動を踏まえ、この研究構想に至った背景と経緯 > ② 学術の現状を踏まえ、本研究構想が挑戦的研究としてどのような意義を有するか > について1頁以内で記述すること。 #### ① これまでの研究活動を踏まえ、この研究構想に至った背景と経緯 申請者はこれまでに、当時オーファンGPCRであったGHSRの内因性リガンドとして、食欲を刺激するペプチドホルモンのグレリンを発見した。申請者はその後、久留米大学で研究室を主催し、次のリガンド探索のターゲットとするオーファンGPCRを探していたときに、消化管幹細胞マーカーのLGR5の論文を読んだ(Barker et al. Nature 2007)。そして、そのマーカーであるのに、その分子の実態はリガンド不明なオーファンGPCRであることを知って、LGR5にとても興味を持ち、その内因性リガンドを発見したいと考えた。そして消化管組織の抽出物から内因性リガンドの探索を行ってきたが(2011~2012年度の挑戦的萌芽研究:消化管幹細胞に作用する新しいペプチド・ホルモンの探索と腸管粘膜再生への応用)、その同定までには至らなかった。その理由として、従来の方法ではリガンドが変性して効率よく抽出されていないこと、内因性リガンドが幹細胞のある一定の時期にしか発現されないこと、幹細胞自体の数が少ないためリガンドの存在量が極めて少ないこと、などが推測されている。 ヒトとショウジョウバエではリガンドの構造的特徴や機能が保持されている例が多い。このことから申請者は、哺乳類のLGR5がショウジョウバエのdLGR2にホモロジーが高いのならば、その内因性リガンドはショウジョウバエのバーシコンに構造的特徴が類似している可能性が高いと考え、本研究計画を構想した。 #### ② 本研究構想が挑戦的研究としてどのような意義を有するか、探索的性質の強い、あるいは芽生え期の研究計画である場合には挑戦的研究としての可能性を有するか **(未知のリガンドを発見する意義)** 生体内には内因性リガンドが不明なオーファンGPCRが数多く存在し、そのリガンドの同定は未知の生理作用の解明や、治療薬の開発などにつながる。これまでにオーファンGPCRをターゲットとして発見された内因性リガンドのうち、治療薬として臨床応用されている代表的なものにペプチドホルモンのグレリン(申請者が発見)やオレキシンなどがある。グレリンについては、グレリン様作用を持つ低分子アゴニスト(アナモレリン)が「がん悪液質」の治療薬として2021年より臨床応用されており、オレキシンのアンタゴニストは不眠症の治療薬となっている。このようにオーファンGPCRの研究から発見された内因性リガンドは、その生理作用の解明から治療薬へと応用されることが多く、未知の内因性リガンドを発見する意義は非常に大きい。 **(LGR5の内因性リガンド同定によって、LGR4とLGR6のリガンドも明らかになる)** LGR5は、LGR4およびLGR6とアミノ酸配列のホモロジーが高く、受容体ファミリーを形成している。この3つの受容体はいずれも幹細胞のマーカーとして知られているが、全て内因性リガンドが不明なオーファンGPCRである。 これらの欠損マウスの解析から、LGR4~6は発生や分化に関連していることが示唆されているが、その機能の詳細はまだまだ不十分である。それはリガンドが未同定であるために、リガンドがどのような刺激で、どこの組織・細胞から分泌されるのか、リガンドが受容体に結合してシグナル伝達を行ったときに幹細胞にどのような変化があるのか、などが不明なことによる。 LGR5の内因性リガンドが発見されれば、LGR4とLGR6の内因性リガンドについても大きな情報が得られ、結合するペプチドホルモンの正体が明らかになると思われる。そして、LGR4~6の内因性リガンドが発見されれば、発生・再生の研究分野へ大きな貢献ができると期待される。 本研究は探索的性質の強い挑戦的な研究である。そのため研究期間内に目的のリガンドを発見できない可能性も大いにある。これまでのペプチドホルモン探索の経験を活かして、ぜひとも新しいペプチドホルモンを発見したいと考えている。 --- ### 人権の保護及び法令等の遵守への対応 > 挑戦的研究(萌芽)4 > > **3 人権の保護及び法令等の遵守への対応**(公募要領参照) 本研究には遺伝子組換え実験が含まれるため、遺伝子組換え生物の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律、研究開発等に係わる遺伝子組換え生物等の第二種使用等にあたって執るべき拡散防止措置等を定める省令、またその他の関連法令に基づき、十分な安全性を確保した上で実施する。実施を予定している研究内容については、すでに久留米大学遺伝子組換え実験安全委員会の承認を得ている。 動物実験については、動物福祉の観点から適切な配慮をおこなうため、動物の愛護および管理に関する法律(昭和48年法律第105号)、実験動物の飼育および保管ならびに苦痛の軽減に関する基準(平成18年環境省告示88号)、動物の殺処分方法に関する指針(平成19年環境省告示105号)、研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年度文部科学省告示第71号)等に基づいて実施する。実施する研究内容については久留米大学動物実験委員会による承認を受け、「久留米大学動物実験規定」を遵守したうえで実施する。 ヒト試料を対象とする実験は含まれないため、個人情報や人権の保護等を必要とする研究には該当しない。 --- ## 3)Web入力項目(後半)※電子申請時に入力 ### 研究経費とその必要性 > 挑戦的研究(萌芽)5~6 #### 設備備品費の明細 計上なし。 #### 消耗品費の明細(金額単位:千円) | 年度 | 事項 | 金額 | |------|------|------| | R5 | 生化学・分子生物学実験用の試薬 | 600 | | R5 | 生化学・分子生物学実験用の器具 | 600 | | R5 | 細胞培養の器具 | 580 | | R5 | 細胞培養の培地・試薬 | 570 | | R5 | cAMP測定用キット | 300 | | | **R5 計** | **2,650** | | R6 | 生化学・分子生物学実験用の試薬 | 200 | | R6 | 生化学・分子生物学実験用の器具 | 150 | | R6 | 細胞培養の器具 | 200 | | R6 | 細胞培養の培地・試薬 | 200 | | R6 | cAMP測定用キット | 100 | | | **R6 計** | **850** | | R7 | 生化学・分子生物学実験用の試薬 | 100 | | R7 | 生化学・分子生物学実験用の器具 | 100 | | R7 | 細胞培養の器具 | 100 | | R7 | 細胞培養の培地・試薬 | 100 | | R7 | cAMP測定用キット | 100 | | R7 | 動物実験関連 | 200 | | | **R7 計** | **700** | **設備備品費、消耗品費の必要性:** 1. 生化学・分子生物学の実験のために一般試薬や器具が必要である。また発現したタンパク質を濃縮するスピンカラムや、トランスフェクショングレードのプラスミド精製のためのキットが必要である。 2. タンパク質発現のために細胞培養は必須であり、器具や培地・試薬などを多めに計上した。 3. cAMP測定キットはアッセイのために必要であり、ELISAキットとαスクリーンcAMP測定試薬を計上した。最終年度には動物実験を行う必要があるので、動物実験関連の費用を計上した。 #### 国内旅費の明細(金額単位:千円) | 年度 | 事項 | 金額 | |------|------|------| | R5 | 研究打ち合わせのための旅費(1回分) | 50 | | | **R5 計** | **50** | | R6 | 研究打ち合わせのための旅費(1回分) | 50 | | | **R6 計** | **50** | | R7 | 研究打ち合わせのための旅費(1回分) | 50 | | R7 | 研究成果発表のための学会参加費用(1回分) | 50 | | | **R7 計** | **100** | #### 外国旅費の明細 計上なし。 #### 人件費・謝金の明細(金額単位:千円) | 年度 | 事項 | 金額 | |------|------|------| | R5 | 実験補助者への謝金 | 300 | | R6 | 実験補助者への謝金 | 100 | | R7 | 実験補助者への謝金 | 100 | #### その他の明細(金額単位:千円) | 年度 | 事項 | 金額 | |------|------|------| | R7 | 成果発表のための論文投稿料 | 100 | **旅費、人件費・謝金、その他の必要性:** 1. 共同研究者との打ち合わせのための旅費を各年度に計上した。 2. また最終年度には成果発表のための学会参加費用と論文投稿料を計上した。 3. 研究遂行のために実験補助者への謝金を計上した。 --- ### 「研究費の応募・受入等の状況」のWeb入力イメージ **研究者氏名:** 児島 将康 #### (1)応募中の研究費 | 役割 | 資金制度・研究費名 | 研究期間 | 研究課題名 | 研究経費(千円) | エフォート | |------|----------------|--------|---------|-------------|---------| | 代表 | 【本応募研究課題】挑戦的研究(萌芽) | 2023年度~2025年度 | 腸管上皮幹細胞マーカーLGR5の内因性リガンドの探索 | 3,000(総額5,000) | 20% | | 代表 | 基盤研究(B)(一般)(日本学術振興会) | 2023年度~2025年度 | 表皮幹細胞に作用するペプチドホルモンの探索 | 5,000(総額13,000) | 60% | | 分担 | 基盤研究(C)(一般)(日本学術振興会) | 2023年度~2025年度 | 皮膚におけるCD44バリアントのタイプと役割、および治療ターゲットとしての意義 | 100(総額20,000) | 5% | **研究内容の相違点:** - 基盤研究(B):本研究は表皮および毛包の幹細胞に作用するペプチドホルモンを探索し、皮膚や毛髪の再生に応用する計画で、本研究課題とはターゲットが異なる。 - 基盤研究(C):本研究は皮膚におけるCD44バリアントの役割を解明する研究で、申請者は生化学・分子生物学実験の一部を担当する予定である。本研究課題とは内容もまったく異なる。 #### (2)受入予定の研究費 該当なし。 #### (3)e-Rad外の研究費 該当なし。 #### (4)エフォート - (1)(2)(3)のエフォートの合計:85% - (4)(5)その他の活動のエフォートの合計:15% > ※現在の申請では、この項目はPDFファイルとして出力されないため、例として電子申請時の画面イメージを作成したもの。電子申請時の画面は4章の図4-19を参照。なお、この申請書の例は、令和5年度の挑戦的研究(萌芽)に採択されたものを令和7年度の様式に変更したものだが、申請書中の年度や西暦は、基本的に当時のままとしている。