--- title: "実際に採択された申請書① 基盤研究(C)の例" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 付録 pages: 285-298 images: page_0285.png ~ page_0298.png --- # 実際に採択された申請書① 基盤研究(C)の例 この申請書は令和2年度基盤研究(C)に採択されたものを、令和6年に行われた「令和7(2025)年度の公募」からの新フォーマットに変更したものである。内容に関しては新フォーマットに合わせて「(6)国際性」のパートを書き加えたのと、もともと(3)で書くことになっていた「着想に至った経緯」を、新フォーマットに合わせて少しだけ削って(1)へ移動させた。その他の部分は変更なしで、応募したときのまま掲載してある。ただし分担者の名前は伏せてある。掲載にあたって読み返してみて、もう少しこうすればよかったと思う部分もあるが、提出した時点では最良のものである。採択された申請書の見本としてご活用いただきたい。 付け加えると、この申請書に書かれた研究計画は、令和6年になってようやく完成して論文となった。研究とは時間のかかるものである。 なお、各種目の申請書に対して、どのようなことをどのような割合で書いていくとよいのか、その目安を羊土社ホームページ(https://www.yodosha.co.jp/kakenhi/)のなかの「研究種目別『申請書の構成案』」で紹介している。 ## 実際に採択された申請書① 項目一覧 | 項目 | ページ | |------|------| | 1)Web入力項目(前半)※電子申請時に入力 | | | ・申請者と研究課題の情報 | p.286 | | ・研究組織 | p.287 | | 2)申請書(研究計画調書) | | | ・研究目的、研究方法など | p.288 | | ・応募者の研究遂行能力及び研究環境 | p.292 | | ・人権の保護及び法令等の遵守への対応 | p.294 | | ・研究計画最終年度前年度応募を行う場合の記述事項 | p.295 | | 3)Web入力項目(後半)※電子申請時に入力 | | | ・研究経費とその必要性 | p.296 | | ・「研究費の応募・受入等の状況」のWeb入力イメージ | p.298 | --- ## 1)Web入力項目(前半)※電子申請時に入力 ### 申請者と研究課題の情報 > 令和7(2025)年度 基盤研究(C)(一般)研究計画調書 | 項目 | 内容 | |------|------| | 研究種目 | 基盤研究(C) | | 応募区分 | 一般 | | 小区分 | 構造生物化学関連 | | 研究代表者 氏名 | 児島 将康(コジマ マサヤス) | | 所属研究機関 | 久留米大学 | | 部局 | 付置研究所 | | 職 | 教授 | | 研究課題名 | グレリンの脂肪酸修飾基は、なぜグレリン受容体の活性化に必要なのか? | | 開示希望の有無 | 審査結果の開示を希望する | **研究経費(千円)** | 年度 | 研究経費 | 設備備品費 | 消耗品費 | 旅費 | 人件費・謝金 | その他 | |------|---------|---------|---------|------|-----------|------| | 令和7年度 | 1,800 | 0 | 1,600 | 100 | 100 | 0 | | 令和8年度 | 1,850 | 0 | 1,600 | 100 | 100 | 50 | | 令和9年度 | 1,350 | 0 | 1,100 | 100 | 100 | 50 | | 令和10年度 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | | 令和11年度 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | | **総計** | **5,000** | **0** | **4,300** | **300** | **300** | **100** | ### 研究組織 **研究組織(研究代表者及び研究分担者)** | 氏名(年齢) | 所属研究機関・部局・職 | 学位 | 役割 | 研究経費(千円) | エフォート(%) | |-------------|-------------------|------|------|--------------|-------------| | 児島 将康(コジマ マサヤス) | 久留米大学・付置研究所・教授 | 医学博士 | 研究代表者として研究全般 | 1,600 | 30 | | 〇〇 〇〇 | 久留米大学・付置研究所・助教 | 博士(医学) | クライオ電子顕微鏡での解析のための複合体調製 | 200 | 5 | 合計2名 研究経費合計 1,800 --- ## 2)申請書(研究計画調書) ### 研究目的、研究方法など > 基盤研究(C)(一般)1~4 > > **1 研究目的、研究方法など** > > 本研究計画調書は「小区分」の審査区分で審査される。記述に当たっては、「科学研究費助成事業における審査及び評価に関する規程」(公募要領参照)を参考にすること。 > 本研究の目的と方法などについて、4頁以内で記述すること。 > 冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述し、本文には、(1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ、(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、(5)本研究の目的を達成するための準備状況、(6)本研究がどのような国際性を有するかについて具体的かつ明確に記述すること。 > 本研究を研究分担者とともに行う場合は、研究代表者、研究分担者の具体的な役割を記述すること。 #### 【概要】 グレリンは申請者らが発見した摂食亢進作用を示すペプチドホルモンで、N末端から3番目のセリン残基が脂肪酸のオクタン酸によって修飾されている。しかもこの脂肪酸修飾がグレリンの活性に必要であるという特徴を持つ。なぜグレリンは脂肪酸の修飾がないと活性を示さないのか、それを明らかにするためにはグレリンが結合したグレリン受容体の立体構造の解明が必要である。最近になって申請者らは不活性型のグレリン受容体の構造解明に成功した。グレリン受容体は典型的なGPCRの構造であるが、第6と第7の膜貫通領域の間に疎水性に富んだギャップ構造があり、この部分とグレリンの脂肪酸修飾基が相互作用してグレリン受容体を活性型に変換するのではないかと考えられた。しかし、それはまだ証明されたわけではない。 本研究では高活性型の変異グレリン受容体のX線結晶構造解析や、クライオ電子顕微鏡によるGタンパク質との複合体を解析することによって、グレリンが結合した活性型グレリン受容体の立体構造を明らかにする。この研究によってグレリンの脂肪酸修飾基が受容体を活性型に変換するメカニズムが明らかになり、GPCRの活性化機構に新たな知見をもたらすと期待される。 #### (1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」 **(グレリンについて)** グレリンは申請者らが1999年に発見したペプチドホルモンで、胃から分泌されて食欲刺激、摂食亢進、成長ホルモン分泌促進、海馬での神経発生などの作用を示す。申請者らのグレリンの発見論文(Nature, 1999)は被引用回数が6,300件、グレリンに関する発表論文は1万編以上と(2019年10月末現在)現在もグレリンに関して活発な研究が行われている。 **(グレリンの活性には脂肪酸修飾が必要である)** グレリンは、N末端から3番目のセリン残基が脂肪酸のオクタン酸によって修飾されているという特徴的な構造をしており、しかもこの修飾がないと活性を示さない。このような脂肪酸で修飾されたペプチドホルモンは現在のところグレリンだけしか知られていない。なぜグレリンでは脂肪酸の修飾が活性発現に必要なのか、それを明らかにするためにはグレリン受容体とグレリンとの結合を三次元立体構造(3D構造)で解明する必要がある。しかしそれは現在でも成功していない。 **(不活性型のグレリン受容体構造から明らかになったこと)** 申請者はグレリン受容体の活性化機構を明らかにするために、数年前からグレリン受容体の結晶構造解析を始めた。そして〇〇大学〇〇先生のグループとの共同研究によって、グレリン受容体にアンタゴニストが結合した不活性型の構造解明に成功した(未発表)。その結果、グレリン受容体は典型的なGPCRの3D構造を示すが、グレリンの脂肪酸修飾基の役割を示唆する特徴的な構造があることがわかった。それは第6膜貫通領域(TM6)と第7膜貫通領域(TM7)の間のギャップ構造である。このギャップ構造を形成するアミノ酸には疎水性の高いフェニルアラニン残基が多く、ギャップ構造と脂質との相互作用が推測された。実際にいくつかの脂質性リガンドのGPCRにおいてはTM7とTM1の間(S1P1やEP4など)や、TM3とTM4の間(GPR40)、TM4とTM5の間(PAFR)にギャップ構造があり、このギャップ構造を通してリガンドが側面からリガンド結合ポケットにアクセスすると推定されている。グレリン受容体の場合はこのギャップ構造が、グレリンの脂肪酸修飾基と相互作用していると考えられる。またGPCR受容体の活性化に重要なTM6とTM7という膜貫通領域が関与しているために、グレリン受容体の活性化メカニズムへの関与も考えられた。 **(本研究の着想に至った経緯)** 申請者は1999年に摂食亢進ホルモンのグレリンを発見し、その構造を明らかにした。グレリンはN末端から3番目のセリン残基の側鎖がオクタン酸によって修飾されており、しかもこの脂肪酸修飾基が活性発現に必須であることを見いだした。この活性発現の仕組みを解明するには、グレリンが結合したグレリン受容体の3D構造解析が必要であったが、当時は解析技術が未確立だった。 2007年になってスタンフォード大学のコビルカたちによってGPCRの3D構造解析技術が確立されたが、個々の受容体にはそれぞれ特性があり、受容体ごとにアミノ酸の置換による安定化や、T4リゾチームなどの共結晶タンパク質との融合、受容体抗体の使用など、さまざまな検討が必要であった。申請者はグレリン受容体の基底状態(不活性型)と活性型の両方の3D構造解析を目指して、それぞれ次のような戦略で進めた。 1. **不活性型グレリン受容体の構造解明**:グレリン受容体に融合タンパク質としてbRIL(熱安定化したアポ型チトクロムb562変異体)を用い、アンタゴニストとグレリン受容体抗体との複合体によって結晶化に成功し不活性型のグレリン受容体の3D構造を解明した(論文準備中)。 2. **活性型グレリン受容体の構造解明**:不活性型の結晶構造解明に成功したアミノ酸変異グレリン受容体と、グレリンを結合させて結晶化を試みたがうまくいかなかった。またグレリン受容体を活性型に固定するモノクローナル抗体やナノボディ(アルパカの一本鎖重鎖抗体)の作成を試みたが、グレリン受容体の抗原性が低く、これもうまくいかなかった。 そこで活性型グレリン受容体の3D構造を明らかにするために、アミノ酸変異によって高活性型のグレリン受容体を用いて結晶化しX線構造解析を試みることと、クライオ電子顕微鏡によって受容体・リガンド・Gタンパク質の複合体で3D構造を解明する、今回の研究計画を立てた。 **(解決すべき学術的「問い」)** 上記のように、グレリンの脂肪酸修飾基とグレリン受容体との相互作用を解明するには、グレリンとグレリン受容体が結合した状態の3D構造を解明する必要がある。しかし、どのGPCRについても内因性リガンドが結合した活性型受容体の3D構造を明らかにすることは現在でも困難な研究であり、グレリン受容体においてもまだ成功していない。 #### (2)本研究の目的および学術的独自性と創造性 **(本研究の目的)** 本研究の最終目標は、グレリンが結合した状態でのグレリン受容体の3D構造を解明することによって、グレリンの脂肪酸修飾の部分が、どのようにして受容体の構造を不活性型から活性型に変換するのか、そのメカニズムを解明することである。 **(本研究の学術的独自性と創造性)** グレリンはペプチド部分だけでなく、脂肪酸の修飾基がないと活性を示さないという特徴的な構造をしており、なぜ脂肪酸部分がグレリン受容体の活性化に必要なのかは不明であった。申請者らはこの疑問に答えるためにグレリン受容体の結晶構造解析を進め、まず不活性型の構造を解明した。その結果、TM6とTM7間のギャップ構造部分の疎水性アミノ酸と、グレリンの脂肪酸部分の相互作用によって、TM6が活性型の位置に動き、それによって受容体が活性型に転換することが示唆された。このような膜貫通領域間のギャップ構造は脂質GPCRにもみられることから、グレリン受容体はペプチド性GPCRと脂質GPCRの両方の特徴をもったハイブリッド型GPCRである。ただしこのギャップ構造は、脂質GPCRの場合はリガンドが受容体の側面からリガンド結合ポケットに侵入する経路であることが、グレリン受容体(リガンドは細胞膜表面から侵入)とは異なっており、活性化機構の違いが示唆される。 グレリンとグレリン受容体が結合した3D構造が解明されれば、グレリンの脂肪酸修飾基による受容体の活性化機構が明らかになり、GPCRの活性化機構に新しい知見をもたらすと期待される。 #### (3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ GPCRの立体構造解明の研究は、これまでは不活性型の3D構造解明が主だったが、現在では活性型の構造を解明して、受容体の活性化機構を明らかにする研究が中心になっている。また不活性型の構造解明には主にX線結晶構造解析が使われてきたが、活性型GPCRの3D構造解明ではGタンパク質との複合体をクライオ電子顕微鏡で解析することが主流になりつつある。Gタンパク質については、GiとGsについては培養細胞で効率よく発現されるが、グレリン受容体がカップリングするGqについては発現効率が悪く、Gqとの複合体で解明されたGPCRの3D構造はまだない。 今回の研究計画によってグレリンの脂肪酸修飾がどのようにグレリン受容体を活性型に変換するのかが明らかになるとともに、Gqとカップリングする他のGPCRの3D構造解明にも大いに貢献できると考える。 #### (4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか グレリンが結合したグレリン受容体の3D構造の解明を、X線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡による解析の二つで並行して進めていく。 **1. X線結晶構造解析によるグレリンが結合したグレリン受容体の3D構造解明(児島)** X線結晶構造解析によって活性型の3D構造が解かれたGPCRには、エンドセリン、ニューロテンシン、アンジオテンシンなどがある。これらはリガンド結合能が極めて高いもの(エンドセリン受容体、ETBR)や、アミノ酸置換などで受容体の熱安定性を高めたもの(ニューロテンシン受容体、アンジオテンシンII受容体)で3D構造が解かれている。 そこでアミノ酸のランダム変異ライブラリーによって、リガンド結合能が高い高活性型のグレリン受容体や、熱安定性の高い受容体を探索し、グレリンと結合したグレリン受容体の結晶を形成する。クロンテック社のDiversify PCR Random Mutagenesis Kitを使用して、366残基のグレリン受容体に1~2個の変異アミノ酸が入るようにする。これをプラスミドベクターに組み込み、培養細胞に発現させる。この発現細胞においてIP3基礎活性の測定や、グレリン添加による細胞内カルシウム濃度の変化を指標にして、高活性型のグレリン受容体を見出す。変異型グレリン受容体の熱安定性は蛍光ゲル濾過(FSEC)によってチェックする。 予備的なスクリーニングの検討では、250種類の変異型グレリン受容体クローンにおいて、高活性な3つの変異体を見出している。これらはAspとGluのアミノ酸ペア、ArgとLysのアミノ酸ペアなど、同族のアミノ酸の置換によって受容体の活性が変化していた。 さらにスクリーニング数を増やすことと、DNAシークエンスによって見出した変異体クローンのアミノ酸置換部位を同定し、これらのアミノ酸変異を複数組み合わせることで、より高活性で熱安定性のよいグレリン受容体を見出していく。見出した高活性で熱安定性のよいグレリン受容体とグレリンとの結晶化を試み、結晶形成ができればX線による結晶構造解析を行っていく。 **2. クライオ電子顕微鏡によるグレリンが結合したグレリン受容体の3D構造解明(児島、〇〇)** 最近の膜タンパク質の3D構造解明には、クライオ電子顕微鏡を用いることが主流となってきている。しかしクライオ電子顕微鏡では、解析対象のタンパク質にはある程度の分子量が必要(60~70kDa以上)であり、とくに膜タンパク質は界面活性剤ミセルに包まれていることもあって110kDa以上の分子量が必要である。そのためGPCR(平均の分子量は40kDa程度)の解析においてはGタンパク質(分子量は80kDa程度)との複合体を形成して解析されていることが多い。したがってグレリン受容体の活性型の構造解析においても、Gタンパク質(グレリン受容体の場合は主にGqとカップリングしている)との複合体形成が必要である。 しかしGタンパク質の中でもグレリン受容体とカップリングするGqタンパク質だけは、他のGタンパク質に比べて発現が非常に困難であり、これまでにGqとカップリングしたGPCR受容体で3D構造が解かれた報告はまだない。 そこでクライオ電子顕微鏡による3D構造解析を目指して、グレリン・グレリン受容体・Gタンパク質の複合体を形成するために、申請者らは次のような方法を考えている。 **① Gi/qの変異体を使って発現効率を高める** GqのN末端部分をGiに置き換えた変異体(以下、Gi/q)では発現効率が上がることが知られている。Gi/qを昆虫細胞で発現させて精製し、別の昆虫細胞で発現し精製したGβとGγとGタンパク質複合体を形成させる。このGタンパク質複合体に、さらにグレリンとグレリン受容体との複合体を形成させる。複合体の形成においては、グレリン受容体、グレリン、Gタンパク質とともにATPジホスフォヒドロラーゼであるアピラーゼ(apyrase)を加えることで、Gタンパク質から放出されたGDPをGMPへと加水分解し、GDPがグレリン受容体・Gタンパク質複合体と再結合して解離させるのを防止する。さらにGαとGβγの接合面を認識するモノクローナル抗体(共同研究先より入手済み)によってGTPγSによるGタンパク質のヘテロトリマー解離を阻害する。これによってグレリン受容体とGタンパク質複合体がより安定になることが期待される。 **② Gqのαβγタンパク質とグレリン受容体を昆虫細胞に同時に発現し複合体として精製する** 予備的な検討では、昆虫細胞においてグレリン受容体・Gタンパク質を同時に発現させることができ、細胞の抽出物から複合体の精製が可能であることを確かめており、複合体の発現効率と精製効率を上げるために、ベクターの混合比率や、精製方法の検討を行う予定である。 **③ 分子シャペロンRic8Aを使ってGqαの発現を高める** Ric8Aという分子シャペロンを共発現させるとGqαタンパク質の発現量が劇的に増加することが知られている(Chan et al. JBC 286, 2011)。そこで昆虫細胞を使ってRic8Aを共発現することでGqαの発現量を増加させ、単一のものに精製する。 **④ Giとのカップリングで解析する** グレリン受容体はGqカップリングが主であるが、Giともカップリングする。実際に申請者は褐色脂肪細胞の培養系において、グレリン添加によるcAMP産生抑制が百日咳毒素によってキャンセルされることから、グレリン受容体がGiとカップリングすることを確認している。これまでの研究ではGiは培養細胞系において発現が良好であり、μオピオイド受容体やニューロテンシン受容体などではGiとの複合体を形成してクライオ電子顕微鏡による活性型の構造解明に成功している。そこでグレリン受容体の場合もGiとのカップリングを行い、活性型の構造を明らかにする。 **(試料調製ができたあとの構造解析について)** グレリンと活性型受容体との結晶化がうまくいった場合は、SPring-8においてX線回折を行う。グレリン・グレリン受容体・Gタンパク質の複合体の形成に成功したときには、BINDS(創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム)を通じてクライオ電子顕微鏡での解析に進めていく。 #### (5)本研究の目的を達成するための準備状況 不活性型のグレリン受容体の3D構造解明には成功しており、現在論文投稿の準備中である。この研究によって、グレリン受容体タンパク質の大量発現と精製はできており、活性型の結晶化や、クライオ電子顕微鏡のための複合体形成用の受容体は調達可能である。またグレリンは化学合成したペプチドを十分量保有している。 Gタンパク質(とくに発現が難しいGq)については、Gタンパク質の専門家である〇〇先生(現・〇〇薬科大学)の指導を受け、発現効率をあげるためにGiのN末端部分をGqに融合したもの(Gi/q)の発現を試みている。 #### (6)本研究がどのような国際性を有するか GPCRは創薬のターゲットとして国際的にも注目されており、特に本研究では、がん悪液質への応用が進んでいるグレリン受容体に焦点を当てている。このテーマは米国〇〇〇〇研究所のC〇博士との国際共同研究に基づいており、特に〇〇博士の研究グループが持つ最新のGPCRの構造解析技術を活用することで、従来不可能だったグレリン受容体の活性化メカニズムを解明できる可能性が高い。この成果はGPCR研究全体に新しい視点を提供し、創薬分野においても国際的に重要な貢献となる。 以上の研究によって、摂食亢進ホルモン「グレリン」の脂肪酸修飾基はなぜ受容体活性化に必要なのかを明らかにする計画である。 > ※この申請書の例は、令和2年度の基盤研究(C)に採択されたものを令和7年度の様式に変更したものだが、申請書中の年度や西暦は、一部を当時のままとしてある。 --- ### 応募者の研究遂行能力及び研究環境 > 基盤研究(C)(一般)5~6 > > **2 応募者の研究遂行能力及び研究環境** > > 応募者(研究代表者、研究分担者)の研究計画の実行可能性を示すため、(1)これまでの研究活動(主要な研究業績を含む)、(2)研究環境(研究遂行に必要な研究施設・設備・研究資料等を含む)について2頁以内で記述すること。 > 「(1)これまでの研究活動」の記述には、研究計画に関連した国際的な取組(国際共同研究の実施歴や海外機関での研究歴等)がある場合には必要に応じてその内容を含めること。また、研究活動を中断していた期間がある場合にはその説明などを含めること。 #### (1)これまでの研究活動 **グレリンに関するこれまでの研究成果:** 研究代表者は、グレリンの発見以来、様々な生物種におけるグレリンの構造決定と機能の解明、グレリンの測定系の開発、グレリンの生理作用の解明、グレリンの活性化に必須な脂肪酸修飾のメカニズムの解明などを行ってきた。 1. Kojima, M., Hosoda, H., Date, Y., Nakazato, M., Matsuo, H. & Kangawa, K. Ghrelin is a growth-hormone-releasing acylated peptide from stomach. Nature 402, 656-60 (1999). 2. Hosoda, H., Kojima, M., Matsuo, H. & Kangawa, K. Ghrelin and des-acyl ghrelin: two major forms of rat ghrelin peptide in gastrointestinal tissue. Biochem Biophys Res Commun 279, 909-13 (2000). 3. Kaiya, H., Kojima, M., Hosoda, H., Koda, A., Yamamoto, K., Kitajima, Y., Matsumoto, M., Minamitake, Y., Kikuyama, S. & Kangawa, K. Bullfrog ghrelin is modified by n-octanoic acid at its third threonine residue. J Biol Chem 276, 40441-8 (2001). 4. Nakazato, M., Murakami, N., Date, Y., Kojima, M., Matsuo, H., Kangawa, K. A role for ghrelin in the central regulation of feeding. Nature 409, 194-8 (2001). 5. Kojima, M., Kangawa K. Ghrelin: structure and function. Physiol Rev. 85:495-522 (2005). 6. Nishi Y, Hiejima H, Hosoda H, Kaiya H, Mori K, Fukue Y, Yanase T, Nawata H, Kangawa K, Kojima, M. Ingested medium-chain fatty acids are directly utilized for the acyl modification of ghrelin. Endocrinology. 146:2255-2264 (2005). 7. Sato T, Fukue Y, Teranishi H, Yoshida Y, Kojima, M. Molecular forms of hypothalamic ghrelin and its regulation by fasting and 2-deoxy-d-glucose administration. Endocrinology. 146:2510-2516 (2005). 8. Sato T, Kurokawa M, Nakashima Y, Ida T, Takahashi T, Fukue Y, Ikawa M, Okabe M, Kangawa K, Kojima, M. Ghrelin deficiency does not influence feeding performance. Regul Pept. 145:7-11 (2008). 9. Ohgusu H, Shirouzu K, Nakamura Y, Nakashima Y, Ida T, Sato T, Kojima, M. Ghrelin O-acyltransferase (GOAT) has a preference for n-hexanoyl-CoA over n-octanoyl-CoA as an acyl donor. Biochem Biophys Res Commun. 386(1):153-8 (2009). 研究代表者が責任編集を務めた Methods in Enzymology 514 "Ghrelin" が2012年10月に発刊されている。 また最近のグレリンに関する研究では、グレリン遺伝子の発現調節機構の研究、グレリンによる海馬の神経回路形成の研究、膵臓のグレリンと時計遺伝子の関連、グレリンによる自発運動の制御などの研究を行ってきた。 10. Shimura Y, Ohgusu H, Sato T, Kojima, M. Regulation of the Human Ghrelin Promoter Activity by Transcription Factors, NF-κB and Nkx2.2. Int J Endocrinol. 2015;2015:580908 (2015). 11. Kim Y, Kim S, Kim C, Sato T, Kojima, M., Park S. Ghrelin is required for dietary restriction-induced enhancement of hippocampal neurogenesis: lessons from ghrelin knockout mice. Endocr J. 62(3):269-75 (2015). 12. Li E, Kim Y, Kim S, Sato T, Kojima, M., Park S. Ghrelin stimulates proliferation, migration and differentiation of neural progenitors from the subventricular zone in the adult mice. Exp Neurol. 252:75-84 (2014). 13. Sato T, Oishi K, Ida T, Kojima M. Suppressive effect of somatostatin on ghrelin expression in the mouse pancreas. Endocr J. 2019 Oct 11. 14. Mifune H, Tajiri Y, Sakai Y, Kawahara Y, Hara K, Sato T, Nishi Y, Nishi H, Hosoda H, Kangawa K, Kojima M. Voluntary exercise is motivated by ghrelin, possibly related to the central reward circuit. J Endocrinol. 2019 Oct 1. > ※研究代表者と研究分担者の名前の下に一重下線を引くとよい。 グレリン受容体の結晶構造解明については、7年前から研究をスタートし、まずアンタゴニストが結合した不活性型の構造解明に成功した。この成果に関する論文は投稿準備中であるが、すでにいくつかの学会でその内容を発表している。 - GPCRであるグレリン受容体の結晶構造解析による受容体活性化機構の解明 児島将康、2019年6月25日 第19回日本蛋白質科学会年会・第71回日本細胞生物学会大会 合同年次大会(神戸国際会議場) - グレリン研究のこれから 児島将康、2018年8月3日 第36回内分泌代謝学サマーセミナー(宮城県蔵王) また高活性型のグレリン受容体作成には、アミノ酸を変異させたグレリン受容体の活性測定などの実験手法が必要だが、この点に関してこれまで様々な動物種においてGPCRを使ったリガンド探索の経験を有しており、グレリン受容体の変異体作成や活性測定のメソッドをマスターしている。 **ニューロメジンU:** 機能未知だった神経ペプチドをオーファンGPCRのリガンドとして再発見し、摂食抑制作用を持つことを明らかにした。 15. Kojima M, Haruno R, Nakazato M, Date Y, Murakami N, Hanada R, Matsuo H, Kangawa K. Purification and identification of neuromedin U as an endogenous ligand for an orphan receptor GPR66 (FM3). Biochem Biophys Res Commun. 2000 Sep 24;276(2):435-8. **CCHアミド1&2:** ショウジョウバエで発見したインスリン分泌促進活性を示すホルモン。 16. Ida T, Takahashi T, Tominaga H, Sato T, Sano H, Kume K, Ozaki M, Hiraguchi T, Shiotani H, Terajima S, Nakamura Y, Mori K, Yoshida M, Kato J, Murakami N, Miyazato M, Kangawa K, Kojima M. Isolation of the bioactive peptides CCHamide-1 and CCHamide-2 from Drosophila and their putative role in appetite regulation as ligands for G protein-coupled receptors. Front Endocrinol (Lausanne). 2012 Dec 31;3:177. **Trissin:** ショウジョウバエから発見した機能未知の神経ペプチド。 17. Ida T, Takahashi T, Tominaga H, Sato T, Kume K, Yoshizawa-Kumagaye K, Nishio H, Kato J, Murakami N, Miyazato M, Kangawa K, Kojima M. Identification of the novel bioactive peptide trissin, a ligand for an orphan G protein-coupled receptor in Drosophila. Biochem Biophys Res Commun. 2011 Oct 14;414(1):44-8. このように研究代表者はグレリンに関する研究を継続して行っており、不活性型のグレリン受容体についてはすでに結晶構造解明に成功した。その研究成果を活かすことで、グレリンが結合した活性型のグレリン受容体構造の解明も可能になると考える。 #### (2)研究環境 グレリンに関するこれまでの研究によって、グレリンやグレリン受容体のサンプル、グレリン受容体の複数のアゴニストとアンタゴニストなどの実験試料は整っている。 申請者が所属する研究所は、遺伝子組み換え実験を行うP1レベルの設備が完備されている。また生化学実験や分子生物学実験を行う基本的な実験機器等も保有している。これらは、PCR装置、電気泳動装置、微量分光光度計、インキュベーターなどである。細胞培養の設備に関しても、クリーンベンチやCO2インキュベーターなど、現存のもので対応できる。 以上、応募者の研究遂行能力及び研究環境によって、今回の研究計画は十分に実行可能である。 --- ### 人権の保護及び法令等の遵守への対応 > 基盤研究(C)(一般)7 > > **3 人権の保護及び法令等の遵守への対応**(公募要領参照) > > 本研究を遂行するに当たって、相手方の同意・協力を必要とする研究、個人情報の取扱いの配慮を必要とする研究、生命倫理・安全対策に対する取組を必要とする研究など指針・法令等(国際共同研究を行う国・地域の指針・法令等を含む)に基づく手続が必要な研究が含まれている場合、講じる対策と措置を、1頁以内で記述すること。 本研究計画で行う遺伝子組換えDNA実験は久留米大学遺伝子組み換え実験安全委員会の承認を得たものであり、大腸菌やほ乳類培養細胞や昆虫培養細胞などを扱うのに支障はない。 その他、個人情報の扱いやヒト遺伝子解析研究などには当てはまらない。 --- ### 研究計画最終年度前年度応募を行う場合の記述事項 > 基盤研究(C)(一般)8 > > **4 研究計画最終年度前年度応募を行う場合の記述事項**(該当者は必ず記述すること(公募要領参照)) > > 該当しない場合は記述欄を削除することなく、空欄のまま提出すること。 (空欄) --- ## 3)Web入力項目(後半)※電子申請時に入力 ### 研究経費とその必要性 > 基盤研究(C)(一般)9~10 #### 設備備品費の明細 現有のもの、あるいは久留米大学の学内施設のもので行うため、設備備品費は計上していない。 #### 消耗品費の明細(金額単位:千円) | 年度 | 事項 | 金額 | |------|------|------| | R2 | 生化学・分子生物学実験用試薬 | 400 | | R2 | 生化学・分子生物学実験用器具 | 400 | | R2 | 細胞培養試薬 | 400 | | R2 | 細胞培養器具 | 400 | | | **R2 計** | **1,600** | | R3 | 生化学・分子生物学実験用試薬 | 400 | | R3 | 生化学・分子生物学実験用器具 | 400 | | R3 | 細胞培養試薬 | 400 | | R3 | 細胞培養器具 | 400 | | | **R3 計** | **1,600** | | R4 | 生化学・分子生物学実験用試薬 | 250 | | R4 | 生化学・分子生物学実験用器具 | 250 | | R4 | 細胞培養試薬 | 300 | | R4 | 細胞培養器具 | 300 | | | **R4 計** | **1,100** | **設備備品費、消耗品費の必要性:** 設備備品については現有のもの、あるいは久留米大学の学内施設のもので行う。生化学実験、分子生物学実験、培養細胞を使った実験を行うので、消耗品を多く計上した。 #### 国内旅費の明細(金額単位:千円) | 年度 | 事項 | 金額 | |------|------|------| | R2 | 研究打ち合わせ | 50 | | R2 | 関連学会への出席 | 50 | | | **R2 計** | **100** | | R3 | 研究打ち合わせ | 50 | | R3 | 関連学会への出席 | 50 | | | **R3 計** | **100** | | R4 | 研究打ち合わせ | 50 | | R4 | 関連学会への出席 | 50 | | | **R4 計** | **100** | #### 外国旅費の明細 計上なし。 #### 人件費・謝金の明細(金額単位:千円) | 年度 | 事項 | 金額 | |------|------|------| | R2 | 実験補助者への謝金 | 100 | | R3 | 実験補助者への謝金 | 100 | | R4 | 実験補助者への謝金 | 100 | #### その他の明細(金額単位:千円) | 年度 | 事項 | 金額 | |------|------|------| | R3 | 通信・運搬費 | 50 | | R4 | 通信・運搬費 | 50 | **旅費、人件費・謝金、その他の必要性:** 共同研究先との打ち合わせのための旅費と、関連学会への参加のための旅費を計上した。実験補助者への謝金を各年度10万円を計上した。その他ではデータや試料などを共同研究先に送るために通信・運搬費を計上した。 --- ### 「研究費の応募・受入等の状況」のWeb入力イメージ **研究者氏名:** 児島 将康 #### (1)応募中の研究費 | 役割 | 資金制度・研究費名 | 研究期間 | 研究課題名 | 研究経費(千円) | エフォート | |------|----------------|--------|---------|-------------|---------| | 代表 | 【本応募研究課題】基盤研究(C)(一般) | 2020年度~2022年度 | グレリンの脂肪酸修飾基は、なぜグレリン受容体の活性化に必要なのか? | 1,600(総額5,000) | 30% | | 代表 | 新学術領域研究(A)(公募研究)(文部科学省) | 2020年度~2021年度 | 消化管細胞社会ダイバーシティーと1細胞解析の融合による未知のペプチドホルモン探索 | 3,000(総額6,000) | 30% | **研究内容の相違点:** 左記の研究は消化管幹細胞に作用する未知のペプチドホルモンを探索する研究であり、科研費の本応募研究課題とは内容が異なる。 #### (2)受入予定の研究費 該当なし。 #### (3)e-Rad外の研究費 該当なし。 #### (4)エフォート - (1)(2)(3)のエフォートの合計:40% - (4)(5)その他の活動のエフォートの合計:60% > ※現在の申請では、この項目はPDFファイルとして出力されないため、例として電子申請時の画面イメージを作成したもの。電子申請時の画面は4章の図4-19を参照。なお、この申請書の例は、令和2年度の基盤研究(C)に採択されたものを令和7年度の様式に変更したものだが、申請書中の年度や西暦は、一部を当時のままとしている。