--- title: "そこが知りたい!科研費なるほどQ&A" book: 科研費獲得の方法とコツ 第9版 chapter: 付録 pages: 271-284 images: page_0271.png ~ page_0284.png --- # そこが知りたい!科研費なるほどQ&A 科研費なるほどQ&Aでは、誰もが一度は考えたことのある身近で具体的な疑問を取り上げ、わかりやすく解説していただきました。ぜひご一読ください。また日本学術振興会の科研費ホームページの「科研費FAQ」(https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/05_faq/index.html)にも、さまざまな質問と回答がまとめられています。(羊土社 編集部) --- ### Q1. 現在所属する部門は、申請を出す区分の審査に影響を与えるか? 影響は与えない。申請する区分は、応募する研究内容を最も適切に審査してくれる区分を選ぶのが原則だ。自分の所属部門などに関連した区分に応募する必要はない(参照 2章2:審査区分の選び方)。例えば私は「分子生命科学研究所・遺伝情報研究部門」が正式な所属名だが、「遺伝」関係へ応募したことはなく、これまでに「内分泌学」「神経科学」「小児科学」「スポーツ科学」などの区分(当時は「応募分野」)に応募して採択されている。 ### Q2. 研究分担者や研究協力者に有名な研究者や権力者を入れた方が通りやすいのか? そのようなことはまずない。研究代表者と、研究分担者・研究協力者の間の力のバランスが重要で、組む相手の実力があまりに大きすぎると、その意図は審査委員にみえみえで逆効果になる。組む相手は自分と同じくらいのレベルか、特殊なテクニックをもっている研究者に限った方がよい(参照 2章5:研究パートナー(共同研究者)の選び方)。あくまでも研究計画を遂行するための共同研究の相手であることを忘れずに。 ### Q3. 業績はなるべく多く書く方がよいのか、それとも課題に関連したものに絞る方がよいのか? 申請書「2 応募者の研究遂行能力及び研究環境」の留意事項に書いてあるように、現在の申請書では「1. 研究業績(論文、著書、産業財産権、招待講演等)は、網羅的に記載するのではなく、本研究計画の実行可能性を説明する上で、その根拠となる文献等の主要なものを適宜記載すること」になっている。つまり、これまでの業績を単にリストとして記載するのではなく、研究計画との関連で申請者の研究遂行能力を示すために必要なものに絞って書くこと。 本書の3章10:応募者の研究遂行能力及び研究環境に例を書いてあるが、ただ網羅的に業績を羅列するのではなく、ぜひ申請者のオリジナルな書き方を考え出して、研究遂行能力を示すようにして欲しい。 ### Q4. 英語で書いた申請書は有利か? 最近では海外からの研究者も増えてきて、国際化をにらんで科研費申請書にも英語バージョンがある。全体からの割合では非常に少ないが、英語で書いた申請書で採択された例も増えてきている。しかし、英語で書いた申請書が通りやすいかというと、(統計データはないのだが)恐らくそうではないだろう。審査委員は英語で書かれた申請書でも、日本語のものと同様にしっかりと読むと思う。したがって英語で書いた申請書でも内容がやはり重要で、研究目的を明確にして、わかりやすい申請書にすることが大切だと思う。 ちなみに外国人教員の割合が高いと思われる「立命館アジア太平洋大学」において令和6年7月までに採択された科研費256件のうち、英語の申請書(と思われるもの。実際には課題名が英語のものをカウントした)は全部で50件であった。 ### Q5. researchmapへ情報を登録すると採択の可能性が上がるなどのメリットはあるのだろうか? 令和7年1月の時点ではresearchmap(参照 3章10:応募者の研究遂行能力及び研究環境 ◆researchmapについて)への研究者情報の登録は採択には直接関係はない。researchmapはあくまでも申請書の内容を補うもので、審査は申請書をもとに行うものだからだ。しかし、現在の申請書では「申請者の研究遂行能力」を示すための業績を記入することになっており、以前のような網羅的な業績リストではない。そこで「やはり申請者の発表論文をチェックしておきたい」と考える審査委員もいるだろうから、その際にはresearchmapは便利だ。 実際の審査においては、審査結果を入力するためのWebサイトにそれぞれの応募課題について「研究者情報参照」の部分がある。ここをクリックすると研究代表者と研究分担者の一覧に進み、そこに「researchmap・KAKEN情報参照」があり、申請者のresearchmapに簡単にアクセスできる。そして研究計画に関連した論文とのリンクや、その他の業績をチェックできるため、researchmapの役割は大きい。ときには申請者本人の写真とか基本情報などによって、審査委員の申請者に対する好感度がアップするかもしれない。 結論として、令和7年1月の時点ではresearchmapは採択の可能性をあげるメリットは少ないが、将来的にはスペースが限られた申請書の内容を補うものとして大いに有望だということだ。そのために科研費の申請時期に合わせてresearchmapを定期的に更新していくのがよいと思う。 ### Q6. 申請書の評価に占める研究業績の割合はどのくらいか? 申請書の評価に占める研究業績の割合に何%という基準はない。しかも現在の申請書においては、研究業績の「量」が重要なのではなく、申請者の研究遂行能力を証明するための、どちらかというと「質」が問われる。その「質」も、ハイインパクトなジャーナルに掲載された論文である必要はなく、今回提案している研究計画と関連したものが望ましい。つまり研究業績の質と量が抜群でも採択されないこともあるし、研究業績が少なくても採択されることもあるということだ。 3章10:応募者の研究遂行能力及び研究環境に書いたように、研究業績はその研究者が研究計画を実行可能なものかどうか判断するためにある。これまでの研究業績によって判断しないと、例えば実験はしたことがないのに、研究計画を書くのがうまいことで採択されるということも起こりうる。したがって研究業績がゼロなのはまずいが、研究計画に関連した業績の発表がいくつかあれば大丈夫だと思う。 ### Q7. 審査委員によって研究計画と研究業績の評価の重みは違うのか?フィギュアスケートのように明確な審査基準はあるのか? 審査における研究計画と研究業績の比重は、審査委員によって異なる。「最初に申請者の研究業績を見て、研究業績(特に論文発表)のないものは、その時点でよい点数を付けない」という審査委員もいる。もちろんこれは中堅より上の研究者に対してであって、若手研究者はどうしても研究業績の点で不利なので大目にみる傾向がある。 したがって、研究計画と研究業績の比重については明確な審査基準はない。 ### Q8. 重複申請の判定には、何か明確な基準があるのか?あるいは審査委員の判断で決まるのか? 重複申請には明確な基準がある(参照 2章1:応募種目の選び方)。複数の種目に申請書を提出しようとするときには、その年度の公募要領をよく読んで重複申請が可能かどうかをしっかりとチェックすること。また、研究分担者の重複制限についてもチェックすること。実際に、せっかく提出した研究計画調書が重複申請の制限によって、審査されなかったことがある(新学術領域の計画研究で、計画班員の1人が重複申請に引っかかっていた)。 ### Q9. 区分ごとの採択人数は決まっているのか? 応募区分ごとの採択人数は決まっていないが、採択率はどの区分でも種目ごとにある割合以上になっている。例えば基盤研究(C)においては25%以上の採択率になっており、一般に文系の区分の採択率が高い傾向にある(参照 2章2:審査区分の選び方)。つまりその区分に応募する人数が多ければ多いほど、採択される人数も増える。逆に応募人数が少ない区分は、採択される人数も少なくなる。この傾向は今後の応募においても続くと考えられる。 ### Q10. 応募する区分において応募件数が増えると採択数は増えるのか? 「Q9 区分ごとの採択人数は決まっているのか?」に書いたように、科研費の採択率はある一定の割合以上なので(参照 2章2:審査区分の選び方)、応募件数が増えれば、それに比例して採択数も増える。極端な話、誰も応募していない分野に仲間5人で応募すると、そのうち1人が(ほぼ)必ず採択される。つまり採択されることがまず無理なダミーの申請書で応募数を増やすと、その分野での採択数が増えて、採択される確率も高くなるということだ。もっとも落ちる目的で申請書を書いて提出する研究者などいないと思うが……?しかしある学会で、その分野の採択数を増やすために、学会員に科研費申請を奨励したと聞いたことがある。これも応募数を増やして、少しでもその分野の採択件数を上げる戦略だが、ダミーの申請とはまったく異なる。 ### Q11. 選考過程において地方枠や女性枠などの特別枠はあるのか? 科研費では地方枠はなく、また女性枠もない。しかし基盤研究、若手研究、研究活動スタート支援、挑戦的研究において、「配分額の調整」が行われる(学術振興会HP中の「科学研究費助成事業における審査及び評価に関する規程」参照)。規程には「次の事項につき、文部科学省から示される内容に基づき必要な調整を行う」とあり、 a. 人文学、社会科学の研究の振興のための調整 b. 私立学校の振興並びに技術教育振興等への貢献度に配慮し、私立大学、高等専門学校に所属する研究者に対する研究助成の充実を図るための調整 c. 国際性(将来的に世界の研究をけん引する、協同を通じて世界の研究の発展に貢献する、我が国独自の研究としての高い価値を創出する等)の評価が高い若手研究者等に対する研究助成の充実を図るための調整 d. その他必要が認められる調整 が行われる。 これによって例えば、基盤研究においてボーダーライン付近に位置する補欠研究課題もしくは不採択研究課題のうち、私立大学・高等専門学校からの研究課題が優先的に採択されることがある。また人文学や社会科学の採択率が、理系の採択率より高い理由の1つにもなっている。国際性に関する調整として、基盤研究(B)と(C)において、若手研究者支援強化のために「国際・若手支援強化枠」が創設され「国際性の高い研究に取り組む若手研究者の研究機会を拡大する」とされている。 なお「研究活動スタート支援」には育児休業等から復帰する研究者も応募でき、子育て世代の研究者に配慮されている。 ### Q12. 採択されなかったのだが、自分で思っていたよりも総合評点も低かった。どのような可能性があるか? 現在(令和7年度)の基盤研究(B, C)と若手研究における第1段審査では、4段階の総合評点の分布がおおよそ決まっていて、4点が上位10%、3点が次の20%、2点がその次の40%、1点が下位30%に近くなるように審査委員は採点している(参照 1章4:審査のしくみ)。したがって、自分の申請書に自信があったのに評価点数が低い場合は、その分野の申請書全体のレベルが高く、相対的に自分の総合評点が低かった可能性がある。 実際に基盤研究(B)の審査委員をしていたときに、どれもよいできの申請書なのに泣く泣く1や2を付けた経験がある。採点結果はWeb上で書き込んでいくのだが、点数分布がある程度定まった割合にならないと、採点結果を受け付けてくれないシステムになっている。どんなによい内容の申請書がそろっていても必ずどれかには1を付けないといけないし、逆によいものがなくてもどれかに4を付けないと、先に進めないのだ。 ### Q13. 採択されなかった場合、点数だけではなくその理由を知りたいのだが公表されないのだろうか? 採択されなかった場合、審査結果がe-Radの電子申請システムで開示される(参照 5章2:不採択のとき)。この電子システムによって、研究種目・審査区分のそれぞれの応募件数と採択件数・採択率、研究課題全体のなかでのおおよその順位(A, B, Cの3段階でしか表示されていないが)、申請者の評定要素の点数と採択課題の平均点、評定結果などが開示される。現在では第1段審査において、すべての申請課題について審査委員はコメントを書くことが求められている。現在(令和7年3月)は、基盤研究(A)だけ、(不採択のものではなく)採択された研究課題の審査結果の所見概要が公開されており、おそらく将来的にはすべての種目において審査委員のコメントも申請者に開示されるようになるのだろう。 ### Q14. 申請書の研究経費はいくらにすればいいのか? 研究費は最大限度額で申請しておいてよい(参照 3章13:研究経費とその必要性)。例えば基盤研究(C)や若手研究なら研究期間の合計で500万円となる。研究経費は申請した金額の多い少ないに関係なく、一定の割合で減額される。減額される率は大体30%くらいで、この裏返しが充足率である(参照 Q17 採択されたのになぜ研究費は満額支給ではないのか?)。 ### Q15. 何を買うのかを申請書に事前に書くが、実験していたら購入するものは変化するので無駄だと思うのだが? 備品については申請書に記載されたものを原則購入することになる。もちろん購入するものの内容は、特に消耗品など、実験の進行によって変化していくが、あくまでも計画段階での必要なものを記入しないと必要な研究費の総額を試算できない。また現在では消耗品については詳細な内訳は必要なく、「分子生物学実験用試薬」「細胞培養試薬」などの大きな分類で十分である。さらに、科研費においては総額の50%未満の範囲内ならば、研究者が使用内訳の変更を自由にできるようになっており、研究の進展に合わせて、かなり柔軟に対応できる。他にも、所定の手続きを行えば、これ以上の変更も可能など、研究者に使いやすいようになっている(参照 1章7:科研費の基金化、調整金、合算使用、バイアウト制度、3章13:研究費とその必要性)。 ### Q16. 文系の申請で、過去に「経費」で何度か不備を指摘された。経費で計上するものがパソコン、プリンタ、ソフトウェア、旅費くらいしかないのだが、よい案はあるだろうか? パソコンやプリンタは、審査委員がクレームをつける場合があるので、どうしても新たに購入する必要がある場合以外は避ける方が無難だろう。現在では研究者なら誰でもが研究に使える程度のスペックのものを保有しているからだ。 では、文系の研究者にとって、どのような経費をあげることができるだろうか。例えば、 - (当然)書籍や資料の購入。買わないかもしれないが、経費をあげておいてよいと思う。 - ソフトウェアは現在ではサブスクリプション方式のものが多いので、その契約費用。 - 消耗品を少額でも必ずあげておくべき。 - 学会参加費も支出できる。 - パートタイムで資料整理や授業準備をサポートしてくれる人の人件費。これはよい使い方だと思うのだが、周りに実際に行っている文系の研究者は少ない。 研究経費の額が少ないことで採択に影響することはないので、必要な額を計上するのがよいと思う。 ### Q17. 採択されたのになぜ研究費は満額支給ではないのか? 科研費に採択されても申請額が満額で支給されるわけではない。平均して申請額の7割くらいしか交付されない。この割合が充足率(応募額に対する配分額の割合)である。充足率は毎年平均70%くらいで、申請課題によって若干の差があるが、ほとんど変わりはない。なぜ充足率というものが設定されて申請額からその割合の金額が引かれるのかは、いろいろ調べてみたけれども結局わからなかった。しかし、もし充足率が100%であって、科研費の総額が変わらなければ、その分採択率が低下することになる。現在の科研費総額と採択率の狭間で、均衡を保った結果がこの充足率だといえる。 挑戦的研究においては、「応募額を最大限尊重した配分を行う(平均充足率を100%とする)」ことが謳われている。実際に令和6年度の挑戦的研究(萌芽)の1課題当たりの初年度配分額は226万6千円と、平成28年度の挑戦的萌芽研究の134万8千円に比べて大きく増加している(基金化分の初年度の申請額としての比較)。研究期間でのトータルの配分額でも、挑戦的研究(開拓・萌芽)では満額のものが多い。 ### Q18. 充足率はどのように決まっているのか?また人件費などの費目によって充足率は異なるのか? 「Q17 採択されたのになぜ研究費は満額支給ではないのか?」に書いたように、充足率がどのように決まっているのかは、よくわからない。基盤研究の種目などで、研究課題によって充足率は少し異なっているので、総合点で上位のものは充足率が高いのではないかと思う。 また、研究経費の費目ごとに充足率が異なっていることはなく、研究費の総額に対して充足率が計算される。 ### Q19. 間接経費がまったく研究者には入ってこないのはなぜ? 間接経費は「科研費の交付を受けた研究活動を支援するとともに、研究環境を整備するための研究機関向けの資金」(「科研費ハンドブック(研究者用)―2024年度版―」より)である。間接経費は研究者の科研費が採択されることによって所属研究機関に入ってくるので、なんとなく自分のものという感じがするが、あくまでも研究機関のものである。そのため研究者には入ってこないで、すべて研究機関が研究活動を支援するために使用する。研究機関によっては、科研費を獲得した研究者に対して報奨の意味で、研究機関の別予算から研究費として還元するところもある。 ### Q20. 間接経費の使われ方が大学によって異なるのはなぜ? 「Q19 間接経費がまったく研究者には入ってこないのはなぜ?」に書いたように、間接経費は「研究機関向けの補助金」である。採択された科研費に自動的に30%としてついてくるので、採択された研究者のものと思えるが、あくまでも研究機関に配分されるものである。そのため各研究機関で使用する対象は異なる。共用施設の整備、事務管理費、図書館費、ネット環境の整備などに使用されることによって研究者にはメリットがある。 ### Q21. 科研費で中古の研究機器は購入できるのか? 可能である。私が在籍している大学の場合は、中古の研究機器を購入するときには、事前に事務方に相談し、またしかるべき理由書が必要である。例えば「研究計画に絶対に必要なのだが、研究費の範囲内では中古のものでないと購入できない」とか、「現在は販売していないので、中古でないと機器がない」とかの理由だ。中古の研究機器を扱っている会社は何社かある。科研費申請のときには研究経費に機器購入の予定を書いておかなければならないが、中古であると書いておく必要はない。 ### Q22. 楽天市場などネット上での購入に科研費は使えるのか? 可能である。楽天市場では確かに研究機器や実験器具などを販売している。立替払いをしないときには必要証拠書類(請求書、見積書、納品書)がそろっていれば可能で、立替払いは所属機関が定めるケースに適う場合は可能だ。所属機関によく問い合わせてみてほしい。 ### Q23. iPadなど、タブレットの購入は可能か? iPadをはじめとするタブレットの購入は、科研費において可能であるが、いくつかの注意が必要だ。 まず購入にあたってはガイドラインを設けている研究機関もあり、また購入の理由書が必要な場合が多い。特に複数個を購入する場合には、なぜ研究に必要なのか、きちんとした理由を書かなければならない。 また「換金性の高い物品」については、研究機関において適切な管理を行うこととされている。「適切な管理」とは管理簿等で管理を行うことであって、必ずしも設備備品等として研究機関に寄付手続きをする必要はない。必要はないが、実際には研究機関によっては備品扱いにしているところもある。なお換金性の高い物品とは、「パソコン、タブレット型コンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、テレビ、録画機器、金券類等」であり、過去にこれらを不正に売却して利益を得た研究者がいたために、「適切な管理」が求められるようになった。 現在(令和7年5月)ではiPadなどのタブレット端末はいろいろな研究分野で使われており、科研費の採択課題として「iPad」で検索すると1,337件が、「タブレット」で検索すると4,718件がヒットする。その課題名として例えば、「理科の学習における電子資料集としてのiPadの学習効果」や「小児がん患者・家族のタブレット型情報端末によるスクリーニングとケアモデル開発」など、教育や医療分野での活用が進んでいる印象をもつ。 ### Q24. 科研費を使って機器のレンタルは可能なのか? 研究課題を遂行するのに必要であるなら、実験機器や器具のレンタルができる。しかし、なぜ購入ではなくレンタルにするのか明確な理由を説明しなければならない。研究を行うのにぜひとも必要な実験機器を高くて買えないがレンタルなら可能である、などの理由だ。 ### Q25. 科研費で買った備品以外の修理に、科研費は使えないのか? 研究計画の遂行に必要な機器であれば、科研費で購入した備品以外でも直接経費の「その他」の欄で「機器修理費用」として支出することが可能だ。 その他の意外な科研費の使い道には「シンポジウムなどを開催するときの食事費用(アルコール類を除く)」「自動車のレンタル」などがある。研究費の使い方の説明書をよく読むと、結構いろんなことに使えることがわかる。 ### Q26. 科研費を年度をまたいで繰り越すことはできるか? 基盤研究(B, C)や若手研究、挑戦的研究(萌芽)などの基金化されている種目では年度をまたいで自由に研究費を使えるが、その他の種目においても「繰越制度」と「調整金」によって年度をまたいで研究費を使える。 最近では科研費を効率的に使用するために、積極的に繰り越し制度を活用するように奨励されているし、「繰越(翌債)を必要とする理由書」の記載も非常に簡素化されている。例えば科学研究費助成事業のホームページ左側のサイドバー(あるいは右上の「MENU」)から「使用ルール・様式集」→「繰越制度」にある「別添2『繰越(翌債)申請書作成に当たっての参考資料集』」のなかの「繰越事由一覧」を見ると、7イ「研究方式の決定の困難」では、「調査、実験等の研究過程で新たな知見を得たことにより研究方式を見直す必要が生じたもの。(新たな知見)」、「調査、実験等の研究過程で当初予想したものと異なる結果がでたことにより研究対象を広げたりするなど、研究方式を見直す必要が生じたもの。(不具合・不十分な結果、予期せぬ結果)」、「専門家からの指摘や他に参考とすべき資料の発見により研究方式の見直しが必要となったもの。(外部からの指摘・資料の発見)」とあって、この場合には理由書の事由欄に「7イ」と記入するだけでいい。予定していた結果が得られないことなど、研究者ならばいつも経験することなので、本当にこのような理由で繰り越しができるのかと思ってしまう。 また平成25年度からは「調整金」が設定されて、繰り越しの要件に合わないときや、繰り越し申請期限の後に繰り越す場合には、次年度に未使用分の9割の額を使うことができたり、前倒しで翌年度分から今年度に使用が可能になった(詳しくは1章7:科研費の基金化、調整金、合算使用、バイアウト制度 ◆調整金によって基金化されていない種目も使いやすくなったを参照)。 無駄なく科研費を使うためにも、これらの制度をぜひ活用すべきだと思う。 ### Q27. 他の方の科研費申請書を添削するうえで、どのようなことを心がけていればよいのか? 私の場合は、申請書をさっと読んで研究内容が理解できるかどうかを一番大切に考えている。とくに研究目的と研究方法が、明確で具体的かどうかを中心にチェックする。また申請書の第一印象も大切なので、内容が固まったら、あとは全体のレイアウトや図などの見せ方を工夫するように指導する(参照 4章 申請書の仕上げと電子申請)。 そして何よりも、申請者自身と自分が納得できるまでとことん添削することを心がけている。申請者には何度でも修正することを要求(希望?)しています。 ### Q28. 科研費申請書の作成においてChatGPTなどの生成AIの利用について、その是非や有効な活用方法について教えてください。 これから将来において、どの分野でも生成AIを使わざるを得ないだろう。それは科研費申請でも同じことだ。生成AIは間違いなく便利なツールである。すでに使っている人も多いのでは。 学術振興会も生成AIの使用を禁止しておらず、使用は「研究者個人の責任で判断する」ことや、「リスクとして"間違い"だけではなくて"偏り"がある可能性があること」「入力した機密情報や個人情報が漏洩する可能性があること」などの注意喚起がなされている。とくに申請書内容の漏洩を防ぐために、入力内容を生成AIが学習データとして使用しないように設定しておくことが必要だろう。 ただし現時点(令和7年3月)では、「~というテーマに関して科研費の申請書を作成してください」「~に関しての研究方法を書いてください」と指示しても、応募できるレベルの申請書作成は難しい。また回答されるものは、ごく普通の内容が多い。その理由として、申請書の内容は基本的に非公開であるため、学習データとして使われる申請書の数が十分ではないからだろう。そして、申請書のテーマは申請者が考える未知のものを対象とするからだと思う。 ゼロから申請書を作成することは難しいが、文章の修正はかなり有効な活用方法である。注意点は間違いが多いことだ。しかも正しいかのようにみえる。生成AIで申請書の内容に関する情報を得ようとしたときに、例えば引用文献などは正しくないことが多い。綿密にチェックする必要がある。 現時点では、科研費申請書作成に関しては、まだ私たちの方が優れていると自信をもっていえる。しかし生成AIの進歩はものすごく速いので、そのうちAIがすべてを作成した科研費申請書が採択される時代が来るかもしれない。そのときには私たちは、AIが作成した以上のものを作り上げる必要がある。生成AIによるものが基本レベルとなり、それ以上のものを作成するのだ。 さて、どうなるだろうか? ### Q29. なぜ採択されないのか? 最後に、誰もが最も知りたい質問を。もちろんこの本をここまで読んできた人にはおわかりだと思うが、正解はない。しかし、業績を上げ、わかりやすい申請書を作り上げていくことで、必ず採択される。絶対にあきらめずに、これからも応募し続けよう。