--- title: "1 申請書の研究概要図の Before After 例" book: 申請書・論文で役立つグラフィカルアブストラクト作成の基本とコツ chapter: 番外編 学んだスキルの実践例:実例 Before After section: 1 pages: 190-191 images: page_0190.png ~ page_0191.png keywords: ["Before/After", "レイアウト", "配色"] --- # 1 申請書の研究概要図の Before After 例 建築を専門とする研究者が作成した申請書用の研究概要図を添削した事例のBeforeとAfterをご紹介します。 ## Before の状態 > **Before:** 「材料貯蔵庫としての建築」というコンセプトで、建築材料の循環とそれに対応する研究の3領域(EoL、DfD、OSM)がビジュアライズされた図。アイソメトリック風の建築図面をベースにした構成で、中央に循環の流れが描かれ、周囲に3つの研究領域が配置されている。タイトルとして「BaMB | Building as Material Bank」が左上に配置されている。全体的に線の太さが均一で、フォントも統一感に欠け、情報の強弱がつけられていない。循環の方向(時計回り)が矢印なしのため視覚的に読み取りにくく、3領域がどこからどこまでに対応しているかも不明確。 Beforeでは、「材料貯蔵庫としての建築」というコンセプトで建築材料の循環とそれに対応する研究の3領域がきれいにビジュアライズされています。申請書で提案する概念の全体像を視覚的に表現しており、研究概念図にふさわしい内容です。 しかし第三者から見ると循環する材料の流れが視覚的に読み取りにくい状態です。内容を見て考えれば時計回りに見ればよいことがわかるのですが、ぱっと見では視線の流れとしてどちら向きに回転したらいいのかわかりにくい印象です。このためAfterでは矢印を入れて視線を誘導しました。 また、Beforeでは「EoL」「DfD」「OSM」という3領域が循環の円のどこからどこまでに対応しているのか、説明不足の状態です。このため、Afterでは循環の線の外側に3つの領域範囲を示す太い矢印を入れました。この矢印によって3領域の範囲を明確にし、方向が時計回りであることも強調しています。 さらに循環の図全体を指す左上の位置に「BaMB」(材料貯蔵庫としての建築)という文字が入っていましたが、図全体を指すタイトルとしては「3つの研究領域の見取り図」の方が適切です。このため、Afterではタイトルを「〜見取り図」の方に変更し、「BaMB」をその下の補足的位置づけに変更しました。タイトルの配置も、上部を圧迫しないよう、下部に移動しています。また、3領域と「BaMB」は図のなかの位置づけが異なるため、3領域には色枠をつけて見た目を変え、意味の違いを表しました。 このほか、タイトル・見出しのメリハリをつける、フォントを太字が使える游ゴシックに変更する、線の太さをみやすく調整するといった視覚的な整理も行っています。 ## After の状態 > **After:** 循環の流れに矢印が追加され、時計回りの方向が明確に示されている。3領域(EoL、DfD、OSM)の範囲を示す太い矢印が循環の外側に配置され、それぞれの対応範囲が一目でわかる。3領域には色枠がつけられ、「BaMB」との位置づけの違いが視覚的に区別されている。タイトルは下部に移動し「〈材料貯蔵庫としての建築〉をめぐる3つの研究領域の見取り図」に変更。フォントは游ゴシックに統一され、太字によるメリハリがつけられている。線の太さも調整され、全体的に視覚的な整理が行き届いている。 > **改善ポイント:** > 1. 循環の矢印を追加して視線の流れ(時計回り)を誘導 > 2. 3領域の範囲を示す太い矢印を外側に配置し、対応範囲を明確化 > 3. タイトルを「見取り図」に変更し、下部に移動して上部の圧迫を解消 > 4. 3領域に色枠をつけて「BaMB」との位置づけの違いを視覚化 > 5. フォントを游ゴシックに統一し、太字でメリハリをつけた > 6. 線の太さを調整して見やすく整理 ## Before の図の構成 - **タイトル:** BaMB | Building as Material Bank - **サブタイトル:** 循環する材料が一番固定されたものとして建築をとらえる視点(=材料貯蔵庫としての建築)をめぐる3つの研究領域の見取り図 - **EoL | End of Life Scenarios:** 廃棄後のことも考えてつくる - **DfD | Design for Deconstruction:** 解体・分解しやすくつくる - **OSM | Offsite Manufactured:** 工場で精度高くつくる - 制作:小見山陽介 ## After の図の構成 - **EoL | End of Life Scenarios:** 廃棄後のことも考えてつくる - **DfD | Design for Deconstruction:** 解体・分解しやすくつくる - **OSM | Offsite Manufactured:** 工場で精度高くつくる - **タイトル(下部):** 〈材料貯蔵庫としての建築〉をめぐる3つの研究領域の見取り図 - **補足:** 〈材料貯蔵庫としての建築〉=BaMB | Building as Material Bank 循環する材料が一番固定されたものとして建築をとらえる視点 - 制作:小見山陽介 ## 依頼者のコメント **小見山陽介**(京都大学大学院工学研究科) 原案は私が設計した建築の「図面」に基づくもので、CADで扱える線種や色に縛られていました。すべての情報が等しく重要に思え、文字も線幅もニュートラルに描くことに執心していましたが、修正された図は、余計なこだわりが取り払われわかりやすくなったと自分でも感じました。また、私が研究する建築物の「最小構成単位」は、建築部材の物質的な最小構成だけでなく建築工程における役割分担の最小構成でもあったという気づきもいただきました。