--- title: "4 印象に残る図にしたい" book: 申請書・論文で役立つグラフィカルアブストラクト作成の基本とコツ chapter: 第7章 もう一歩上をめざす:図の魅力をさらに高める方法 section: 4 pages: 182-186 images: page_0182.png ~ page_0186.png keywords: ["イラスト", "アイコン", "画風", "アイソメトリック", "キャラクター"] --- ## 4 印象に残る図にしたい ### (1) 特徴的な画風を活用する 図全体の画風は図を魅力的にする重要な要素です。研究概要図では使い勝手のよいシンプルなアイコンやピクトグラムがよく使われますが、世の中の絵の表現はそれだけではありません。例えば、アイソメトリック(等角投影図法)、キャラクター系、アニメ系、漫画風、リアル系、水彩、鉛筆、ピクセルアートなど多様な画風があります。画風はそれ自体が絵としての魅力を高め、関心を引く力をもっていますので、特に多くの人の目に触れるプレスリリースの研究概要図などでは、画風を工夫するのも有用な手段です。 画風に特徴をもたせる際の注意点としては、掲載媒体からみてあまりにも奇抜な画風で表現すると、不自然に浮いてしまうリスクやふざけていると思われてしまうリスクがあることです。最終的にはターゲットの関心を引くことに加え、理解を促し研究に価値を感じてもらうことが目標ですので、ターゲットに不快感を与えたり、画風に気を取られて中身が頭に入ってこなかったりということがないように配慮を忘れないようにしてください。 また、画風によって情報の伝え方が変わることがあります。例えば、漫画風にすると登場人物やセリフが必要になります。アイソメトリックにするとアングルが斜め上からになるため、俯瞰的な構図になります。このように、画風によって表現方法が異なるために、研究内容によって向き不向きが生じることがあります。特徴的な画風を選ぶ場合は、自分の研究をどのように伝えると最もわかりやすくなるかをよく考えてから選ぶか、プロのデザイナーやイラストレーターに相談するのがよいと思います。 このような注意点を踏まえたうえで特徴的な画風を用いれば、より印象に残る魅力的な研究概要図をつくれる可能性があります。画風をコントロールするには高い描画スキルが必要になるので、難しいと思う場合はプロに依頼するのがよいかもしれません。 ここでは特徴的な画風の例として、アイソメトリックとキャラクター利用の2つのタイプの考え方を紹介します。 ### (2) アイソメトリックにする アイソメトリックとは斜め上から俯瞰した視点で立体物を描く手法のことで、等角投影図法やアイソメ図ともいいます。建築や技術系の分野では以前から使われてきた手法ですが、近年はそれ以外のイラスト制作でもよく利用されるようになりました。立体のX軸、Y軸、Z軸をすべて120度等間隔で示すのが特徴です。一般的なイラストは遠近感を出すために奥側を小さく、手前側を大きく描きますが、アイソメトリックの場合は遠近感がなく奥と手前で全く同じ大きさになります(図7-6)。 > **図7-6 アイソメトリックを利用する** > > 斜め上からの俯瞰視点で描かれたアイソメトリック図。左から右に向けて「患者の医療情報の収集」→「ゲノム解析センター」(ATGC、AGGC、ATGGなどのゲノムデータと「患者ゲノムと治療リスクの解析」)→「患者ゲノムに合わせた最適な治療の提供」のプロセスが描かれている。建物、人物、機器などがすべてアイソメトリック様式で統一的に表現され、ミニチュア模型のような親しみやすい雰囲気を演出している。 アイソメトリックを利用すると、俯瞰的な視点になるため、図の全体像が把握しやすくなり、立体感も捉えやすくなります。このため、建築物や街、人々の暮らしの様子などを俯瞰した視点で見せたい場合や、人やモノなどの立体物が含まれる作業工程や位置関係を示す場合などに利用できます。アイソメトリック図ではミニチュアのような親しみやすい雰囲気を出すことができ、見ていて楽しい図にすることができます。 このタイプの図はPowerPointなどのスライドプレゼンテーション系のアプリケーションで描画するのは大変なので、Adobe Illustratorなどを利用して制作します。詳しい描き方はここでは述べませんが、多くのウェブサイトで描き方を解説してくれていますので、気になる人は調べてみてください。また、アイソメトリック上に配置する、木や建物、人間などのパーツは、素材サイトでも入手できるものがありますので、活用してみてください。 ### (3) キャラクターを利用する 研究概要図に漫画やキャラクターを利用すると、幅広い非専門家層の関心を引きやすい、魅力的な図になります。図が親しみやすくなると同時に、例えば目つきが悪いのが悪役、くすんだ茶色のキャラは不健康など、キャラクターの見た目によってもさまざまな情報を伝えることができるため、研究上のストーリーが比喩的に理解しやすくなります。非専門家向けの図に適した表現ですが、専門家向けの場合でも、比喩の程度を抑えるなどして表現を調整すれば、利用することは可能です(図7-7)。 > **図7-7 キャラクターを利用する** > > 「アリガ酵素が病気予防や老化防止につながる可能性」をテーマにした研究概要図。遺伝子改変マウス(かわいらしい擬人化されたマウスのキャラクター)が中心に配置され、小腸の表面にXX菌(悪役風の紫色キャラクター)が描かれている。アリガ遺伝子からアリガ酵素が生成され、XX菌と「結合・除去」するプロセスが、キャラクターの表情や動きで直感的に伝わるように表現されている。 キャラクターを利用した図をつくる際には、研究上のどの要素をキャラクターにするのかということと、そのキャラクターを使ってどのような図全体のストーリーを展開するのかをよく考えるようにします。図のなかでは無生物やモノをキャラクター化する場合や、人間以外の生物をキャラクター化する場合、解説者などの人物を登場させてその人をキャラクターとして表現する場合などがあります。キャラクターではないものよりもキャラクターの方が目立ちますので、特に強調したい要素をキャラクター化するようにします。 また、そのキャラクターの性格や特徴はどのようなものにするかも重要です。ヒーローなのか悪役なのか、博士タイプなのか力持ちタイプなのかなど、いわゆる「キャラ設定」をしっかりすることで表現したい比喩が明確になります。逆に図のなかでそのキャラクターがどんな性格・役割なのかがよくわからないと、キャラクターを利用するメリットが減ってしまうので、設定はしっかりと考える必要があります。 キャラクターの設定を考えたら、伝えたい研究上のストーリーのなかで、それぞれがどんな役割を担うのかを意識しながら、全体のストーリーを考えてラフをつくり、それぞれのキャラクターの見た目をデザインします。 キャラクターは、人間のような見た目にする場合もありますが、対象となるモノに顔(目や口)や手足をつけるだけでも擬人化することが可能です。また、顔をつけず、吹き出しでセリフを入れるだけでも、キャラクターのように感じさせることがある程度は可能です。キャラクター化したい対象の見た目に合わせて、工夫をしてみてください。 なお、無生物を擬人化する場合は、「分子が意思を持っている」など思わぬ誤解が生じるリスクもあります。誤解する余地を完全に排除することは難しいですが、ターゲットのレベルに合わせて擬人化の程度を調整したり、補足をつけるなど、誤解の可能性にも気を配りながら表現するようにしてください。