--- title: "3 ぱっと見のインパクトを高めたい" book: 申請書・論文で役立つグラフィカルアブストラクト作成の基本とコツ chapter: 第7章 もう一歩上をめざす:図の魅力をさらに高める方法 section: 3 pages: 178-181 images: page_0178.png ~ page_0181.png keywords: ["視覚的重み", "配色", "レイアウト", "遠近法", "曲線"] --- ## 3 ぱっと見のインパクトを高めたい ### (1) パネルよりも自由なレイアウトにする 第3章-3では基本としてパネル式レイアウトを提案しました。パネル式にすると長方形で簡単にスペースを区切ることができ、情報と見た目が整理しやすくなります。一方で、図が区切られてしまうためパネル内のスペースが窮屈になってしまうのと、研究概要図の1枚の絵としてのまとまりは引き出しにくくなります。 よりインパクトのある構図にするには、できるだけ全体を区切らずに一枚のレイアウトにすることがおすすめです。遠近法や曲線的な配置を組み合わせることで、ダイナミックな印象を与えることも可能です。 ただし、情報のまとまりが認識しにくくなるため、余白や配置をうまく工夫しないとごちゃごちゃとわかりにくい印象になる可能性があります。視線を迷いなく誘導するためには高度なデザイン技法も必要になります。この方法は、特に絵のスキルを高めたいという方が挑戦するとよいかもしれません。 ここでは自由なレイアウトの例として、遠近法を使ったレイアウトと曲線的なレイアウトを紹介します。 ### (2) 遠近法を使ったレイアウトにする 変化のプロセスなどを説明する際には、遠近法を使い、奥から手前に向けた流れで変化を示す方法があります。遠近法を使った最もよくある表現としては、図の左上方面に奥側に位置する要素を小さく配置し、図の右下方面に手前側に位置する要素を大きく配置します(図7-4)。遠近感を表現する方法としては、大きさや配置に変化をつける方法以外にも、奥側の要素の色を薄くし手前に向かうほど濃くする方法や、奥の要素と手前の要素をあえて少しだけ重ねて、重なりの順番がわかるようにする方法などもあります。遠近法では手前に来る要素ほど大きく表現されて強調されるため、プロセスの最終段階や「現在」を強調して見せたい場合には有用です。 > **図7-4 遠近法を使ったレイアウトにする** > > 「マウス発生におけるABC遺伝子の役割」をテーマにした研究概要図。左上奥から右下手前に向けて、受精 → E4.5 → E6.5 → E9(初期器官形成)→ E11.5(器官形成へ)のプロセスが遠近法で配置されている。手前の胚ほど大きく描かれ、発生の進行が直感的に理解できる。「ABC遺伝子 ON」のラベルが左上に配置され、全体のタイトルが中央に大きく表示されている。 遠近法を使う場合の注意点は、プロセスが長いなどの理由で、途中で折れて二段になってしまわないようにすることです。流れが一段以内に収まるように調整してください。また、あまりにもプロセスのステップ数が多いと、奥側の要素が小さくて見にくくなったり、全体が捉えにくくなったりするので、2~5プロセス程度に抑えるほうが効果的です。また、要素の位置と大きさのバランスが悪いと遠近法だとわかりにくくなりますので、ラフ段階や制作段階で必ず何度か遠目から見て、図全体のバランスを調整するようにしてください。 ### (3) 曲線的なレイアウト 曲線的に要素を配置するレイアウトは、図全体が躍動的になり、インパクトを与えやすくなります。曲線は、直線のような固さがなくなりやさしい印象になるほか、流れるようなイメージや有機的なイメージを演出することができます(図7-5)。遠近法と組み合わせることも多く、奥行きや広がりを感じさせたいときにも有効なレイアウトです。 > **図7-5 曲線的なレイアウトにする** > > 曲線的な流れに沿って、A Cell → Step1 → C Cell → Step2 → B Cell → Step3 のプロセスが配置されている。各セル(A Cell、B Cell、C Cell)は丸い形状で描かれ、曲線上に要素(ABC、DEF、GHI)が配置されている。背景に緑の有機的なグラデーションが使われ、全体として流動的で躍動感のある印象を与えている。 一方、曲線的なレイアウトは直線的なレイアウトやパネル式のレイアウトに比べて要素の位置を揃えるのが難しく、うまく視覚的に整理できないと、混とんとしてわかりにくい印象を与えることがあります。また、曲線的なレイアウトの図はPowerPointなどのスライドプレゼンテーション系のアプリケーションで制作するのは大変です。Adobe Illustratorなどの曲線を描くのが得意なグラフィック用のアプリケーションを使うことをおすすめします。 曲線的なレイアウトにする際には、まずは視線の流れを意識しながら見る順番を示す曲線のラインを図全体に引き、その上に要素を配置していきます。曲線的な配置では要素がばらついて見えやすいので、関連する要素はしっかりとグループ化し、関連しない要素やグループの間にはしっかりと余白をとるようにします。要素間の距離を均等にするのも難しくなるため、図の一部が込み合って見えにくくならないよう、全体のバランスを見ながら要素の位置を調整するように注意してください。