--- title: "2 再利用の落とし穴:注意すべきポイント" book: 申請書・論文で役立つグラフィカルアブストラクト作成の基本とコツ chapter: 第6章 一度きりではもったいない:別メディアへの展開 section: 2 pages: 159-162 images: page_0159.png ~ page_0162.png keywords: ["メディア展開", "著作権", "再利用", "ターゲット"] --- ## 2 再利用の落とし穴:注意すべきポイント ### 別用途で使うために生じやすい問題とは 研究概要図を再利用する際には、作成時に想定していたのとは別の用途で使うことになるため問題が生じることもあります。以下に注意点をまとめました。 ### (1) ターゲットの違いに注意する 掲載する先が変われば研究概要図を見る人も変わります。本書では研究の価値を伝えることを重視してきましたが、ターゲットが変われば共感できる価値も変わる可能性があります。また、そのテーマに対する知識量の変化にも配慮する必要があります。専門家向けの研究概要図では説明を省略できた前提条件や専門用語でも、非専門家には理解できない可能性があります。あるいはジャーナル向けに英語でグラフィカルアブストラクトを作成した場合、SNS上では言語の問題で予想よりも見てもらえないという場合もあります。さらに、ターゲットの関心度などによって受け取ることができる情報量も異なります。 掲載先の新たな媒体ではどのようなターゲットに見てもらいたいのかを考え、あまりにももとのターゲットと専門性や関心度などが異なる場合は、研究概要図を修正や翻訳することも考える必要があります。 ### (2) 媒体の違いに注意する 第4章-3で述べた通り、媒体や作成サイズなどが異なれば、掲載できる情報量が変わります。例えば印刷用やウェブサイト用に情報を盛り込んでつくった研究概要図をプレゼン用のスライドに張り付けると、発表会場で、スクリーンに投影した際に席によっては文字が小さくて見にくくなる可能性があります。サイズは同じなのか、見る距離は同じなのか。見られる時間は同じなのか確認し、もとの用途と大きく異なる場合は、情報量を一部省略したり、文字やイラストなどの要素のサイズを変更したりするなどの調整が必要です。 また、小さいサイズの図をポスター用に大きく拡大したり、インターネット用の低い解像度の図を印刷用に再利用したりすると、解像度が低くてぼやけて見える場合があります。再利用先でどのように掲載されるのか事前に確認し、テスト表示や試し刷りを行ったうえで見え方に問題がないか確認するようにしましょう。 また、グラフィカルアブストラクトの場合はジャーナルのページに掲載されるので元の論文がどこにあるのか迷うことはありませんが、SNSやジャーナルとは関係ないウェブサイトなどに掲載される場合、参照元の論文が何かわからなくなることがあります。概要図の近傍に論文へのリンクを掲載するか、研究概要図の下部に少しスペースを足して、参照された論文の書誌情報を追加してもいいかもしれません(図6-2)。 > **図6-2 書誌情報を下部に追加する** > > 左側に「元の研究概要図」、右側に「書誌情報を加えた研究概要図」を並べた比較図。右側の図では、研究概要図の下部にスペースを追加し、論文の書誌情報(著者名・論文タイトル・ジャーナル名など)が記載されている。 ### (3) 著作権に注意する 再利用の際には図の著作権にも注意が必要です。研究概要図をプロのイラストレーターやデザイナーに依頼して作成した場合には、著作権の譲渡契約を結ばない限りイラストレーターやデザイナーに著作権があります。このような場合は、再利用をする際に依頼時と異なる用途に使用していいか、条件を確認するようにしてください。 ジャーナル用のグラフィカルアブストラクトの場合は、著作権規定を確認するようにしてください。著作権がジャーナルに帰属する場合は、ジャーナルの規定にある範囲内で利用するか、著作権法上の引用の条件を守って活用します。もしも規定の範囲外で使いたいという場合は、ジャーナルに再利用の許諾申請を出します。再利用の許諾を受ける際には、条件によっては転載料が発生する場合がありますのでご注意ください。 グラフィカルアブストラクトの著作権が筆者や図の制作者に帰属するという場合、あなたが筆者かつグラフィカルアブストラクトの制作主であるならば、基本的には自由に利用が可能です。 ### (4) 共同研究者に配慮する 作成した研究概要図の研究に共同研究者がいる場合は、あらかじめ利用の用途について、簡単でもいいので同意をとっておくと安心です。複数人で一緒に議論してできた研究概要図にもかかわらず、まるで自分ひとりの成果物のように紹介したり、共同研究者が参加していない別の研究に再利用したりするのはよくありません。トラブルを避けるためにも配慮は必要です。 ### (5) 情報のアップデートに注意する 研究概要図の内容は、制作時には最新情報でも、その後更新される可能性があります。特に、申請書の研究概要図の場合は、研究が進行するにつれて研究内容が変わっていく場合があるため、図の内容と実際の研究にズレが生じる可能性があります。新たに利用する際には現状とズレがないか確認し、必要に応じて修正するようにしてください。 ### (6) フォーマットに注意する 研究概要図を再利用先のテーマカラーやフォントに合わせると、統一感が出て見やすくなります。わずかな手間でも「いかにも使いまわしている」(手抜きをした)という印象を少なくすることができますので、フォーマットを合わせることも意識してほしい点です。