--- title: "1 視覚的整理がもたらす効果とは" book: 申請書・論文で役立つグラフィカルアブストラクト作成の基本とコツ chapter: 第5章 図の見た目を整理する:理解を促すビジュアルデザイン section: 1 pages: 102-104 images: page_0102.png ~ page_0104.png keywords: ["視認性", "レイアウト", "余白", "パワーポイント"] --- ## 1 視覚的整理がもたらす効果とは ### 見た目を整えるとわかりやすくなる いよいよアプリケーションで完成品を仕上げていく段階に入ります。ラフ案をつくるまでに、内容や情報量、だいたいのレイアウトを決めましたので、この段階でやるべきことは視覚的に見やすくわかりやすく図を整えていくことです。 > **図5-1の構成:** 左右に同じ内容の図を並べたBefore/After比較。左が「視覚的に整理されていない例」、右が「整理した例」。テーマは「体内のXYZ細胞の挙動」。 > **Before:** 要素(接触、分泌、XX細胞、〇〇分泌、増殖、減少、移動と選別、組織内増殖など)が不揃いに配置され、矢印の方向や文字サイズが統一されていない。タイトルの位置も不明確。 > **After:** 同じ要素が整然と配置され、タイトル「体内のXYZ細胞の挙動」が上部に明示。「本研究の着目点」が囲みで強調され、各プロセスの矢印が統一された方向で流れている。 > **ポイント:** 内容・情報量は同じでも、視覚的整理により「メタな情報」(どれがタイトルか、どれが重要か、どれが同じ階層か)が付加され、理解しやすくなる。 それは、視覚的な整理がされているかどうかです。視覚的な整理をすると、掲載している内容の情報量は同じでも、そのメタな情報、つまりどの情報がタイトルなのか、どの情報が重要なのか、どれが同じ階層なのかといった各要素の位置づけに関する情報が視覚的に付加され、理解できるようになります。もしもすべての文字や要素が同じ見た目だったとしたら、図の中にあるすべての要素を同じくらいの労力で精査する必要があり、処理すべき情報量が多く感じられます。図にメタな情報が加わると、特に精査すべき情報はどこなのか、似た情報はどこなのかなどが瞬時にわかるので、脳の負担を減らすことができます。 > **図5-2の構成:** 左右比較。テーマは「マルチスケール解析技術の確立」。 > **Before(視覚的に見にくい例):** 文字が小さく読みにくい、要素間の区別が不明確、マクロ・メソ・ミクロのスケール表現が整理されていない。 > **After(見やすくした例):** 「マルチスケール解析技術の確立」のタイトルが明確に配置。マクロ(部品)→メソ(高分子〇〇)→ミクロ(原子・分子)のスケールが横軸「長さ」に沿って整理され、各スケールに対応する解析手法(〇〇解析、シミュレーション、XX解析、動態シミュレーション)が視覚的に整然と配置。 > **ポイント:** フォントや色、線の太さ、大きさの調整により情報が円滑に入手でき、美しさや心地よさも感じられる。 視覚的に整えた図は、情報を認識しやすく意味を読み取りやすくなります。フォントや色、線の太さ、大きさなどによって見にくかったところが見やすくなれば、負担なく円滑に情報が入手できるようになります。見た目が整うので、美しさや心地よさも感じられるようになります。 視覚的な整理は部屋の整理と似ています。整理された部屋は、散らかっている部屋と比べてきれいで居心地がよいと感じると思います。さらには、掃除道具はこのクローゼット、趣味はこの棚など、物がルールをもってしまわれているので欲しいものが探しやすく、使い勝手もよくなります。図も視覚的に整理されれば、美しく心地よくなり、関心を引きやすくなります。さらに情報を円滑に読み取りやすくなり、重要箇所や情報の位置づけもわかるため、全体的に理解しやすくなります。 本章ではこのような見た目の整理の方法をお伝えします。情報を視覚的に整理するには、前提として図内の情報の位置づけが制作者の頭のなかで整理されている必要があります。作業を進めながら、図の中でどの情報が重要で、どの情報が補足的なのか、どの情報が同じあるいは異なる階層・グループなのかを考えるようにしてください。 ### PCで見た目を整理し、図を仕上げる流れ 見た目を整理するにあたっては、まずはPCで制作アプリケーションを開き、完成サイズのスライドやアートボードを新規で作成してください。完成サイズで作成することは第3章-2でも説明しましたが、情報量の管理だけでなく、見やすい要素のサイズを調整するうえでも重要です。 PowerPointで研究概要図をつくる研究者の多くは、PowerPointのデフォルトのサイズで研究概要図をつくった後、図を縮小して申請書などに挿入しようとします。しかしながら、完成サイズより大きなサイズで図をつくってしまうと、完成サイズに縮小したときに小さくて見にくいという事態に気づきにくくなります。 例えばPowerPointの16:9のデフォルトのサイズは、印刷サイズに直すと約338.7 mm x 190.5 mmです。このサイズで図を制作したあと、文書に挿入する際にA4の半分程度(210 mm x 148 mm)に縮小したとすると、図の中のフォントサイズも小さくなってしまいます。制作時は12 ptで問題なく読めたフォントも、縮小した図で6 ptになってしまったら、かなり読みにくくなります。 そうならないようにするためには、スライドやアートボード、キャンバスを図の完成サイズと同じサイズにします。そうすれば11 ptのフォントで作成した図は文章ファイルに挿入した後も11 ptになるので、フォントサイズのコントロールがしやすくなります。スライドの中に完成サイズの図形を置き、その図形の中に図をつくるという方法でも構いません。 アプリケーションでスライドやアートボードができたら、いよいよ作業をスタートします。本章ではレイアウト、文字、色、表現の順で見た目を整理する際のポイントを解説していきます。