--- title: "3 パネル式レイアウトで大まかな配置を決める" book: 申請書・論文で役立つグラフィカルアブストラクト作成の基本とコツ chapter: 第3章 戦略をかたちにする:ラフ案の原案作成法 section: 3 pages: 57-64 images: page_0057.png ~ page_0064.png keywords: ["ラフ案", "レイアウト"] --- ## 3 パネル式レイアウトで大まかな配置を決める ### 1 大まかなレイアウトから考えはじめる ラフ案を考える流れは、まずメッセージに合わせて図でどんなストーリーを展開するのか考え、図に入れるべきトピックとその大まかなレイアウトを決めます。そして、そこからトピックの細部のレイアウトを考えていきます(図3-7)。 > **図3-7の構成:** 左側に「おおまかなレイアウト」として、condition1/condition2の2つのブロックが大きな枠で示されている。右側に「細部のレイアウト」として、同じ2条件の中にrepressor、Gene、Transcription、ProteinA/B/C、inflammationなどの具体的な要素が矢印でつながれた詳細図が示されている。矢印で左から右への展開を示す。 > **ポイント:** まず大まかなトピック配置を決めてから、各パネル内の細部を詰めていく2段階の進め方。 研究概要図のほかの図とは異なる特徴に、社会課題/提案方法/ゴール、方法/結果/主張など、図のなかに複数のトピックが入ることが多いという点があります。このため、まずはメッセージに合わせてどのような流れでどのトピックについて語るのかを考え、紙面や画面のどこにどのトピックを入れるのかという大きなレイアウトを考えます。 図のなかに複数のトピックを入れる際には、トピックごとに四角いパネルを置くと、レイアウトが考えやすくなります。入れたいトピックごとにパネルの大きさを決め、パネルにトピックの名前をメモしておけば、大まかなレイアウトの完成です。 もちろんパネルで区切らずに複数のトピックを組み合わせて入れる方法もあります。パネルで区切らない方が見た目のインパクトは高まります。ただ、情報のまとまりを整理して伝える難易度は上がります。複数のトピックを入れる場合や、制作にまだ慣れていないと感じる場合は、パネル式で考えてみると取り組みやすいと思います。 パネル式のレイアウトが実際どのようなものか言葉だけではイメージしにくいと思いますので、具体例を見てみましょう。 ### 2 用途ごとの代表的なパネル式レイアウト ここではパネルの代表的なレイアウトをいくつか紹介します。 ### (1) 申請書の場合 申請書の概要図の場合、入れるべき内容は申請書に書いてあることになります。申請書には以下のトピックが含まれますので、研究概要図に入れる内容も基本は以下のトピックのうちの1つか、複数の組み合わせになります。 - 研究の背景・課題・問題提起・目的 - 研究の方法・研究計画 - 特色や独自性、学術的意義 - 得られると予想される主要な結果・成果 - 提案する理論や概念、仕組みなどの説明 - 達成されるゴール、効果、その後の展開 - 研究体制とその分担、タイムスケジュールなど トピックを組み合わせた代表的なストーリー((1)~(5))とレイアウトの例には、以下のようなものがあります。もちろんこれ以外にもありますし、分野によっても動向が異なりますので、縛られる必要はありません。あくまでよくあるタイプとして参考にしてください。 #### (1) これまでどんな課題があったのか、それに対してどんな解決策を提案し何を実現するのか > **レイアウトの構成:** 横長3分割パネル。左から「課題」「提案」「ゴール」の3パネルが均等に配置されている。 > **ポイント:** 最もスタンダードで汎用性の高いストーリー型。課題→提案→ゴールの流れで研究の意義を伝える。 #### (2) どんなステップで研究目標を達成しようとしているのか > **レイアウトの構成:** 2つのバリエーション。左:縦型で「ステップ1」→「ステップ2」「ステップ3」→「ゴール」と階段状に下降するレイアウト。右:円形サイクル型で「フェーズ1」→「フェーズ2」→「フェーズ3」→「フェーズ4」が循環矢印でつながるレイアウト。 > **ポイント:** 研究の段階的な進行を示す。直線的なステップ型と循環的なサイクル型の2種類。 #### (3) 従来の方法と提案する方法はどのような違いがあるのか > **レイアウトの構成:** 横2分割パネル。左に「従来の方法」、右に「提案する方法」を並べた対比型レイアウト。 > **ポイント:** 既存手法との比較で新規性を際立たせる構成。 #### (4) どんな研究グループがどう分担してどんな研究目標を達成するのか > **レイアウトの構成:** 上部に「A班」「B班」「C班」「D班」の4パネルが横に並び、下部に統合される「ゴール」パネルが配置されている。 > **ポイント:** 研究体制を示すレイアウト。各班の分担と共通ゴールの関係を視覚化。 #### (5) 新しく提案しようとしているのはどのような理論・概念なのか > **レイアウトの構成:** 大きな単一パネル「提案する新しい概念」。パネル内の細部レイアウト例として、「概念1」と「概念2」に分かれ、それぞれに「要因A」「要因B」「要因C」などの要素が配置されている。 > **ポイント:** 新しい理論や概念を1つの大きなパネルで丁寧に説明するレイアウト。内部構造の表現が重要。 #### 具体例:パネル式レイアウトの適用 例えば「細胞表面の動態を生きたまま立体的に観察するため、xxの原理と〇〇法を組み合わせた新たな画像解析法を開発する」というメッセージの申請書の図を考えてみます。 最もスタンダードで汎用性の高い、[(1)これまでどんな課題があったのか、それに対してどんな解決策を提案し何を実現するのか]というストーリーで考えてみると、例えば「〇〇法は細胞表面を立体的に観察する方法として優れているものの、細胞を固定しなければならないのが課題だった。そこで本研究では、〇〇法にxxの原理を利用した解析法を組み合わせることで、固定せずに細胞表面を観察する方法を開発する」となります。このストーリーのパネルレイアウトとしては、「課題の説明→提案する方法→達成される状態」のスタンダードな3分割や、「課題の説明→提案する方法」の2分割などを考えることができます(図3-8)。 > **図3-8の構成:** 横3分割パネル。左「課題」(〇〇法では観察の際に細胞を固定する必要性がある)、中央「提案」(xxを応用した解析法を組み合わせる)、右「ゴール」(固定せずに細胞表面を観察可能に)。 > **ポイント:** 課題→提案→ゴールの3パネルに具体的な内容を箇条書きで記入した実例。メッセージの核が各パネルに明確に分配されている。 ### (2) 論文やプレスリリースの場合 ジャーナルのグラフィカルアブストラクトやプレスリリース用の研究概要図の場合は論文に合わせて作成します。論文には次のトピックが含まれますので、図に入れる内容も基本はこれらのトピックの組み合わせになります。 - 研究の背景・現在の課題 - 研究の方法や、用いた材料の説明 - 主要な結果・データ - 主要な主張・議論(メカニズムのモデルや理論など) - 応用や今後の展開 トピックを組み合わせた代表的なストーリーとレイアウトは以下のようなものがあります。 #### (1) どんな実験・分析をしてどんな結果を得られたのか > **レイアウトの構成:** 2つのバリエーション。左:横長パネルで「方法」→「結果」の2分割(タイトル付き)。右:縦型で「A実験」「B実験」が並列、それぞれ「方法」→「結果」の縦方向フロー。 > **ポイント:** 実験の方法と結果を対にして示す基本型。複数実験がある場合は並列配置。 #### (2) どんな実験・分析をしてどんな結果が得られ、どんな理論・モデルを提案したのか > **レイアウトの構成:** 2つのバリエーション。左:横長3分割パネルで「方法」「結果」「理論」(タイトル付き)。右:縦型で「方法」→「結果」→「理論」と縦方向に展開。 > **ポイント:** 方法→結果→理論の3段階で研究全体のストーリーを伝える。 #### (3) どんな結果やデータが得られたのか > **レイアウトの構成:** 2つのバリエーション。左:横長2分割パネルで「結果1/データ」「結果2/データ」(タイトル付き)。右:縦型で大きな「代表的なデータ」パネルを1つ配置。 > **ポイント:** データそのものが主役となるレイアウト。代表的なデータを大きく見せる方法も有効。 #### (4) どんな理論・モデルを提案したのか > **レイアウトの構成:** 2つのバリエーション。左:横長パネルで「提案する理論」を大きく1つ配置(タイトル付き)。右:縦型で「提案する理論」を大きく1つ配置。 > **ポイント:** 理論やモデルの提案が主要なメッセージの場合、単一の大きなパネルで丁寧に示す。 #### (5) 条件ごとの結果・メカニズムの違いの比較 > **レイアウトの構成:** 2つのバリエーション。左:横長2分割パネルで「条件1」「条件2」を並列(タイトル付き)。右:縦型で「条件1」「条件2」を横に並列配置。 > **ポイント:** 条件間の対比を明確にするレイアウト。同じ構造で条件だけ変えて並べることで比較を促す。 #### (6) 研究コンセプトのイメージはどのようなものなのか(アイキャッチアート) > **レイアウトの構成:** 2つのバリエーション。左:横長パネルに上部にタイトルバー、下部に大きな「アイキャッチアート」スペース。右:縦型で大きな「アイキャッチアート」スペース。 > **ポイント:** 研究コンセプトを印象的なアートとして表現。ジャーナルのカバーアートと同様、目を引き印象付けることに特化。 なお、(6)のアイキャッチアートは、研究のコンセプトを印象的なアートとして表現するものです。ジャーナルの表紙(カバーアート)と同様、目を引き印象付けることに特化しており、プロのイラストレーターなどが作成することも多いです。ジャーナル用のグラフィカルアブストラクトでは決して多くはありませんが一定数は見かけます。また、プレスリリースなどではアイキャッチとして比較的よく採用されています。 #### 具体例:グラフィカルアブストラクトのレイアウト適用 グラフィカルアブストラクトについても例を考えてみると、例えば「〇〇物質の立体構造解析をした結果、これまでのどの類似物質とも共通していない、特殊な構造であることが示された」というメッセージの研究であれば、[(3)どんな結果やデータが得られたのか]というタイプでシンプルに「〇〇物質の立体構造はこういう形状であり、この部分の特殊性が高い」ということを3Dモデルの画像を1つだけ掲載して示す単一のレイアウトを考えることができます(図3-9)。 > **図3-9の構成:** 単一パネルに「〇〇物質の3Dモデル画像」が大きく配置されたシンプルなレイアウト。 > **ポイント:** 1つの代表的なデータや画像で十分にメッセージが伝わる場合は、単一パネルのシンプルなレイアウトが有効。 なお、グラフィカルアブストラクトの場合に掲載する情報は、研究の方法や、用いた材料の説明、主要な結果・データ、主要な主張(メカニズムのモデルや理論など)がメインになります。一方、プレスリリースで政府や企業関係者、消費者などにアピールしたい場合など研究者コミュニティ以外にもターゲットを広げる場合は、応用や今後の展開の情報として社会への影響について紹介すると、価値が伝わりやすくなります。