--- title: "4 ターゲットに響く研究の価値を考える" book: 申請書・論文で役立つグラフィカルアブストラクト作成の基本とコツ chapter: 第2章 図の質は準備で決まる:コミュニケーション戦略の設計 section: 4 pages: 39-40 images: page_0039.png ~ page_0040.png keywords: ["ターゲット", "メッセージ", "情報整理"] --- ## 4 ターゲットに響く研究の価値を考える ターゲットの価値観や自分が考える研究の価値が明確になったら、2つの価値観を突き合わせ、ターゲットが共感してくれそうな研究の強みとなる価値を考えます(図2-4)。 > **図2-4の構成:** 左に「ターゲットの価値観」、右に「研究の価値」の2つの円があり、中央の重なり部分に「共感できる価値」が示されるベン図。ターゲット側にはビジネスパーソン風のアイコン、研究側には研究者風のアイコンが配置されている。 > **ポイント:** ターゲットの価値観と研究の価値の重複領域こそが、共感を得られるアピールポイントとなる。 ### 申請書の場合 申請書の場合は、特にその研究費の評価項目と合致する価値が何なのかは必ず意識します。例えば国際性を評価するグラントに対しては「世界の5大学との連携」という部分が、応用性を評価するグラントであれば「実際にモデル機を開発する」という部分が高い評価をもらえる価値になるかもしれません。ターゲットの価値観と合致する部分の情報を研究概要図のなかに入れていくことによって、研究の価値に共感してもらいやすくなります。 ### グラフィカルアブストラクトの場合 グラフィカルアブストラクトの場合であれば学術的価値、例えば「ある分子の特殊なカスケードに関する仮説を提案したこと」、あるいは「これまでにない方法である現象を観察したこと」などが、あなたの研究の価値になる可能性があります。グラフィカルアブストラクトの図案のなかには、このような価値を感じる根拠となる情報を入れていく必要があります。 ### 複数の価値がある場合の優先順位付け もしも提示したい価値や共感してもらえそうな価値が複数ある場合は、すべてを図で伝えるのは難しい場合もありますので、アピールしたい順に優先順位付けをしておきます。例えば申請書の研究概要図を考える際に、「一番いいたいのは研究目標の社会的インパクトで、次は計画の緻密さだけど、可能なら研究メンバーの強みも入れたい」といった頭の整理をしておき、ラフ案を考える際に実際に入れるかどうかを検討するようにします(ラフ案については第3章で解説します)。 ### 自分がアピールしたい価値も大切にする また、ここまでで筆者はターゲットが共感してくれる価値を考えることを強調してお話ししてきましたが、共感してもらえるかどうかにかかわらず、あるいはターゲットがもともともっていた価値観を越えて認めてもらいたい研究の価値もあると思います。例えば、グラントの審査員は経済的価値に関心がある企業関係者が多いけれど自分としてはこの研究の知的な面白さもわかってもらいたい、学生はこの研究対象すら知らないけれど自分としては知ってもらって価値を新たに感じてもらいたい、と思うこともあると思います。自分がアピールしたいと思う価値は、あなたの研究への熱意の源泉になっている重要な価値ですのでぜひ提示してください。ただし、グラントの審査基準に合致しない価値だけをアピールしても、採択に至るのは難しいかもしれません。ターゲットの価値観を変えることも不可能ではありませんが、簡単にできることではありません。コミュニケーションの基本として、ターゲットの関心や要求に応えつつ、同時に自分が伝えたい価値も伝えていくというかたちがよいのではないかと思います。