--- title: "まえがき" book: 申請書・論文で役立つグラフィカルアブストラクト作成の基本とコツ chapter: 前付け pages: 3-4 images: page_0003.png ~ page_0004.png keywords: [] --- # まえがき 近年、論文や研究費の申請書に、研究の全体像を一枚で説明するグラフィカルアブストラクトや研究概要図を掲載する機会が増えてきています。しかし、いざ自分で図をつくろうとすると、「この図で本当に伝わるのだろうか」「もっとよい見せ方があるのではないか」と悩む方も多いのではないでしょうか。 本書は、論文や研究計画書の概要を伝えるための一枚絵、つまりグラフィカルアブストラクト・研究概要図の制作方法についての解説書です。本書が想定している読者は以下のような方々です。 - グラフィカルアブストラクト・研究概要図を制作する機会のあるさまざまな分野の研究者、学生 - グラフィカルアブストラクト・研究概要図に触れる機会のある、研究支援を行う方々(URAや広報担当者など) - 研究の図の制作にかかわるクリエーター(イラストレーター・デザイナーなど) 本書の筆者は、科学のビジュアルコミュニケーションを専門とする研究者であると同時に、実際に研究を説明する図を制作してきたプロの科学専門デザイナーでもあります。本書の執筆にあたっては、大学や研究所、企業の研究者の依頼で制作や指導をしてきた経験を活かし、研究者のニーズに合わせて執筆することを心がけました。 これまで、グラフィカルアブストラクト・研究概要図をテーマにした書籍はほとんどありませんでした。研究者向けの近いテーマとしては、ビジュアル・デザインに関する書籍があり、その多くはフォントや配色などの見た目の整理を中心に扱っています。これらの書籍は完成した図を整える際には役立つ一方で、「どのように研究を説明する図をつくるか」という問いには答えてくれません。ビジネスやデザイン分野では図解に関する書籍が出版されています。思考を整理して図解化する際には役立ちますが、内容や表現方法が研究者の視覚文化と異なっており、活用しにくいと感じる方もいると思います。これに対して本書は、申請書や論文のなかのどのような情報を図にすればいいのか、どうやって多すぎる図の情報量を削ればいいのかといった研究に即した疑問にも答えます。 ### 本書の構成 本書の構成として、第1章では、グラフィカルアブストラクト・研究概要図の定義や背景、効果などの基本的な知識と、筆者が考えるゴールについて解説します。第2章から第5章では制作プロセスに沿って、準備段階からラフ案の創出、ラフ案の整理、図のビジュアル・デザインまで、実際に何に注意してどう進めていけばよいのかを説明しています。第6章では別メディアでの図の活用方法、第7章ではさらにスキルを磨きたい方に向けたポイントを紹介します。インタビューではグラフィカルアブストラクト・研究概要図の制作を支援する人々の活動を紹介し、さらに本文では伝えきれなかった役立つ情報や具体例をコラムや番外編で紹介しています。 なお、各章の図はすべて筆者が作成しています。具体的なイメージがつかめるよう、架空の研究例の図も掲載しています。架空の研究内容に違和感を感じる人もいるかもしれませんが、あくまで図の制作法を理解するための参考としてご理解ください。 本書の目標は、皆さんが見る人の興味を引きつけ、論点をすばやく伝え、研究の価値を感じてもらえるグラフィカルアブストラクト・研究概要図をつくれるようになることです。ぜひ本書をガイドに、グラフィカルアブストラクト・研究概要図を上達させていってください。 2025年 11月 有賀 雅奈