# 準備状況欄の「自爆」を防ぐ6つの禁句:審査員に「準備不足」と断定されるNGリスト > 準備状況欄で「採択されたら着手します」と書くのは、審査員に「計画性なし」と自白する行為です。準備状況欄は「願望」ではなく「完了報告」を書く場所。無意識に書いてしまう6つの自爆記述と、それを「発射寸前のロケット」に見せるための修正リストを公開します。 ![申請書のNGワードと準備状況の重要性を示す図](../../../html/images/08-20-1024x558.jpg) ## 導入:正直さは美徳ではない 研究計画調書の「研究の準備状況」欄において、多くの申請者が陥る罠があります。それは、現在の状況を正直に伝えようとするあまり、「まだできていないこと」まで丁寧に報告してしまうことです。 しかし、審査員にとってこの欄は、採択後ただちに研究をスタートできるかを確認するためのチェック項目です。ここで「これからやります」「まだ決まっていません」と書くことは、誠実さの証明ではなく、計画の解像度が低い、実行能力が欠如しているというマイナス評価の根拠を自ら提出する行為に他なりません。 本記事では、書いた瞬間に評価が地に落ちる6つのNG記述を網羅しました。これらが含まれていないか、提出前に必ず確認してください。 ## 完全リスト:準備状況のNG記述集 以下の記述は、いずれもリスク管理ができていないと判断される致命的な表現です。これらは「これからの予定(ToDo)」ではなく「すでに終えたこと(Done)」として記述されなければなりません。 ### **1. 研究材料・方法の「検討先送り」** - **NG記述** 詳細な条件は、採択後に検討する予定である。 - **解説** 具体的なプランがないとみなされます。「予備検討により条件Aが最適であると絞り込んでいる」と、選択の根拠を示す段階まで進めておくべきです。 ### **2. 協力者の「空想」** - **NG記述** 「適任の協力者を探す予定である」 「これから依頼するつもりである。」 - **解説** チームが未完成であることは、遂行不能リスクそのものです。「〇〇氏に依頼し、内諾を得ている」という記述が必要です。もし決まっていないなら、この欄には書かず、自分が遂行できる範囲の記述に留めるのが戦略です。 ### **3. サンプル・フィールドの「未確保」** - **NG記述** 「採択され次第、調査地を選定する」 「サンプル収集を開始する。」 - **解説** 研究の根幹となるリソースが手元にないことを露呈しています。「調査地の許可は取得済み」「サンプル収集ルートは確立済み」であるべきです。 ### **4. コンプライアンスの「後回し」** - **NG記述** 倫理委員会の承認申請は、研究開始後に行う。 - **解説** 手続きによる遅延や、承認が下りないリスクを示唆します。「承認済み」あるいは「申請準備を完了し、審査を待つ段階」である必要があります。 なお、別枠の「人権の保護及び法令等の遵守」欄がある場合、準備状況欄で重ねて書く必要はありません。 ### **5. 予備データの「不在証明」** - **NG記述** 予備データはまだないが、今後取得する。 - **解説** 仮説を支える土台がないことを自白しています。データがないなら、この欄でわざわざ「ない」と言及してはいけません。黙って計画の論理性で勝負するか、類似の文献的根拠を示すに留めます。 ### **6. 資金不足の「嘆願」** - **NG記述** 資金がないため、本助成がなければ研究が遂行できない。 - **解説** 審査員は同情で採択することはありません。「資金がないと止まる脆弱な体制」と見なされます。科研費はゼロをイチにする資金ではなく、走っている研究を加速させる資金です。「現状でも進めているが、資金があればさらに加速する」という書きぶりが求められます。 ## 深掘り解説:「条件付きアクション」の排除 リストの中で最も意識すべき、かつ修正が難しいのが、「採択されたら(お金が入ったら)〜する」というマインドセットです。 **なぜ「〜次第」がダメなのか** 審査員は、「科研費がなくても、遅かろうと規模が小さかろうと、この研究を遂行する執念のある研究者」を好みます。「金がないとできない」と書く研究者は、金が尽きれば研究を辞めると判断されます。 **どう書き換えるべきか** 事実は変えられなくても、表現を変えることは可能です。これを「依存型」から「自律型」へ変換します。 - **Before(依存型)** 「高価な試薬Xが必要なため、採択後に購入し実験を開始する。」 - **After(自律型)** 「試薬Xを用いた実験プロトコルは確立済みであり、導入後直ちにデータ取得が可能である。」 前者は「金待ち」ですが、後者は「準備完了」です。購入資金がないことは暗黙の了解ですので、わざわざ書く必要はありません。「モノさえあれば、明日からでも動ける」という体制のアピールに徹してください。 ## 優先順位と修正タイムライン 提出締切までの残り時間に応じて、修正すべき項目の優先順位が変わります。 **レベル1:即時修正可能(表現の変更)** 項目1(方法)、項目5(予備データ)、項目6(資金)に関する記述は、文章の書き換えだけで「準備不足」の印象を払拭できます。「予定である」を「計画している(策定済み)」に変えるだけでも印象は変わります。これらは締切直前でも修正可能です。 **レベル2:事実の構築が必要(調整・交渉)** 項目2(協力者)、項目3(フィールド)、項目4(倫理審査)は、事実としての裏付けが必要です。もし締切直前でこれらが未定の場合、無理に「予定」と書くよりも、その要素を計画から一時的に外し、単独または現状のリソースで完結する計画に見直す方が、採択確率は上がります。「不確実な協力者」を書くことは、プラスではなくマイナスだからです。 ## まとめ:最終確認のアクションプラン 申請書を書き終えたら、以下の手順で準備状況欄のクリーニングを行ってください。 1. **キーワード検索** 「予定」「検討」「探す」「次第」で検索をかけてください。これらがヒットした箇所は要注意です。 2. **時制の変換** ヒットした箇所の未来形を、過去形(完了・確立・取得済み・目処がついている)に書き換えられないか検討してください。 3. **ネガティブの削除** 「ない」「不足している」「未定である」という記述を、単に削除してください。書かないことで隠すのも技術です。 準備状況欄は、「これからやることリスト」を書く場所ではありません。「ここまでやりました報告書」を書く場所です。審査員に「これなら安心して任せられる」と思わせるために、不確実な要素を徹底的に排除してください。