# #科研費のコツ15 申請書にはストーリーが必要だ [なぜ申請書はストーリーを必要としているのか](../story.md)にもあるように、申請書は一つの物語ですので、背景、展開、オチが必要です。 > #科研費のコツ15申請書はひとつの「お話(物語)」です。「まず〇〇する。そして〇〇する。最後に〇〇する。」のような申請書では「お話」になりません。いくつかのパターンがありますが、基本は今ある問題を申請者が解決するという「英雄の物語」です。https://t.co/aZPZYBbAJmpic.twitter.com/pvkUB3PT5s > > [Tweet原文](https://twitter.com/kakenhi_com/status/1746864810783113236?ref_src=twsrc%5Etfw) ## 申請書は「物語」である 申請書はひとつの「物語」です。特に冒険小説のようにハラハラ・ドキドキを提供できる申請書なら最高です。 物語には様々な型がありますが、冒険小説は大抵このようなストーリーになっています。 1. ここは剣と魔法の世界(これから何の話をするのか) 2. 主人公は普通に暮らしていたが(現状の説明) 3. 魔物の大量発生により苦しんでいた(何かの問題を抱えており、いろいろと困っている) 4. 魔物は火口から湧いてくるので、そこに行き凍らせれば解決できると考えた(解決のアイデアと根拠) 5. しかし、道中には強い魔物がいる(実現するためには困難が待ち受けている) 6. 3匹の強い魔物をやっつけて、火口を凍らせる(具体的な目的) 7. … みたいな構成になっています。これは申請書の展開と類似しており、 1. 人生の大半を占める睡眠は大切である(これから何の話をするのか) 2. 睡眠は記憶の定着に関わっていることが明らかになっている(現状の説明) 3. しかし、その分子メカニズムは不明であり、記憶が定着するメカニズムの全容は不明である(何かの問題を抱えており、いろいろと困っている) 4. 認知症研究では神経ネットワーク構造と記憶率を対応付けにより研究が進んでいるので、同様の方法を用いることで記憶の定着メカニズムについても理解できると考えた(解決のアイデアと根拠) 5. しかし、従来方法では時空間解像度は不十分であった(実現するためには困難が待ち受けている) 6. 新しいイメージング手法を確立し、神経ネットワークをこれまでより高解像度で解析する(具体的な目的) のように、ある程度の対応がつきます。もう少しミクロな視点でも申請書が物語であるというのを見てみましょう。 ## AAA法とDHY法 コーヒーを飲んだ。**そして**、寒い朝だ。**そして**、公園には人が歩いている。**そして**、あちらでは体操をしている人がいる。**そして**、今日は大切な日だ。… 「そして(And)」が延々とつづく形で文が構成されています(AAA法)。これは事実をありのまま列挙するという意味では全く問題ありません。しかし、そこには「ストーリー」がなく退屈です。 この分野では少なからぬ研究がなされてきました。**それにもかかわらず**、多くのことは未だ、**それでも**、こうした努力は無駄では無かったと言えます。**しかしながら**、その過程は必ずしも正しかったとは言い切れず、驚くべきほどの犠牲が払われてきました。 「それにもかかわらず(Despite)、しかしながら(However)、それでも(Yet)」と話題の急転換を繰り返して読者を振り落とす形で文が構成されています(DHY法)。しかし、大仰な表現など過剰なまでにドラマティックな「ストーリー」は情報量が多すぎで混乱を招きます。 申請書に必要なものは、物語性を全て排除した記述でもなく、過度に物語的な記述でもありません。適度に物語があり、話題の自然な展開です。そこで活躍するのがABTです。 ## ABT(… And … But … Then …)法とドブジャンスキー・テンプレート 「そして(And)、しかし(But)、だから(Then)」の順で文章を展開すると極めて自然な流れになります。 お金は人類の歴史を語る上で欠かせない存在です。**そして**、お金の移動を記録するための道具として簿記が発明されました。**しかし**、簿記の発明は文字よりも先であり、文字発明以前の簿記法についてはよくわかっていません。**だから**、本研究では文字発明以前の簿記法について調べようと思います。 内容はともかく、ストーリーがはっきりとしているのがわかるかと思います。このABTテンプレートは極めて有用であり、多くの物語で採用されています。 あるところに桃太郎がおりました。**そして**、桃太郎は立派な青年に成長しました。**しかし**、鬼が村を荒らしまわるようになりました。**だから**、家来をつれて鬼退治にでかけました。 冴えない少年のび太がいました。**そして**、今日も遊びほうけています。**しかし**、宿題の期限は明日までということに気づきました。**だから**、ドラえもんに秘密道具を出してもらい、助けてもらいました。 では、申請書においてこうした物語(申請書の核となるもの)はどのように見つけたらよいのでしょう。簡単なテンプレートとして、この本ではドブジャンスキー・テンプレートを紹介しています。 **私は(  )について研究します。なぜなら、(  )においては、何事も、(   )の観点から見なければ意味をなさないからです。** あなたが扱っているテーマについて考えてみればすぐに例文を思いつくことでしょう。